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第145話:孤独な光、そして芽吹く「熱」


荒野に響く魔力の残響と、土埃が舞い上がる激闘の跡。


ディエスとアレクシスの決戦が繰り広げられたクレーターの縁には、リナの氷結魔法に縫い止められたジョエル、エルザに叩きのめされたノーマン、そしてハンスの論理の前に為す術もなく敗れ去った王都の魔法兵団が、力なく横たわっていました。


「あらやだ、ジョエルちゃんまで負けちゃうとは思わなかったわ。あのぼうやたち、凄いじゃない」


遠く離れた高台の岩に、優雅に腰掛けていたミスティが、青髭の口元を隠してクスクスと笑いました。


彼の瞳には、すべてを見通すような深い輝きが宿っています。


混沌たる戦場を、まるで劇場の舞台を観るかのように楽しんでいるミスティ。


彼の予見をもってしても、ディエスたちがここまでアレクシスを追い詰めるとは思わなかったようです。


「ふふ、やっぱり『不条理』って最高に面白いわね。アレクシス、あなたの完璧な計算も、そろそろ終わりかしら?」


ミスティの視線の先。 ディエスに放たれた「バルカス流・正義説教拳」の直撃を受け、クレーターの底に叩きつけられていたアレクシスは、ぴくりとも動きませんでした。


その純白の法衣は泥と血で汚れ、周囲には激戦の痕跡だけが残されています。


「……おい、アレクシス。もう終わりか? お前が世界を白く染め上げるってんなら、俺は何度でもお前の前に立って、この泥と汗で汚してやるぞ」


ディエスが、ゆっくりとアレクシスに歩み寄ります。 彼の拳は、友を打ちのめした痛みで熱く焼けていました。


「……まさか、こんな泥臭い場所で、俺が本気になっちまうとはな。お前も、たまには美味いプロテインでも飲んで、落ち着けってんだ」


ディエスは、アレクシスのすぐそばで立ち止まりました。


その時、沈黙していたはずのクレーターの底から、ゆっくりと、しかし確かな「気配」が立ち上り始めました。


ゴゴゴゴ……。


泥と瓦礫の下から、アレクシスが、何ごともなかったかのように立ち上がりました。


彼の体は満身創痍。しかし、その瞳には、かつてのような冷たい光ではなく、激しい炎のような「熱」が宿っていました。


「……ディエス」


アレクシスは、低く、しかし確かな声で名を呼びました。


その声は、これまで彼が纏っていた「完璧な正義」という名の凍りついた鎧が、今、ひび割れていくような、そんな前触れでした。

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