表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/159

第140話:凍土と大地のワルツ


ディエスとアレクシスが天地を揺らす死闘を繰り広げる裏で、街道脇の荒野でも、もう一つの激突が始まっていました。


「……君が、あのディエスの従者か。魔導学園の式典で見かけた覚えがあるが、当時はもっと慎ましい娘だと思っていた」


魔法軍の調整役、ジョエルが静かに杖を構えます。


彼の足元から地響きが鳴り、ドワーフたちが整備したばかりの街道が、生き物のようにうねり始めました。


王都最高の「大地魔法」の使い手である彼は、戦場の「地場」を支配することで相手の自由を奪う戦いを得意としています。


「慎ましい? あら、買い被りね。私はいつだって、やりたいようにやってきただけよ」


対峙するリナは、不敵な笑みを浮かべて指先を鳴らしました。


瞬間、周囲の湿気が一気に凝固し、鋭利な氷の礫が彼女の背後に幾千と浮遊します。


「悪いけど、アレクシスの『白夜の牢獄』に付き合うつもりはないの。邪魔するなら、その立派な杖ごと凍らせてあげるわよ!」


「……やむを得ん。不浄な活力を撒き散らす拠点は、この手で封じる。『大地よ、秩序の壁となれ』!」


ジョエルが杖を地面に突き立てると、リナの足元から巨大な岩の棘が突き出しました。


同時に、周囲の空間に高重力の負荷がかかり、リナの動きを強引に押さえ込もうとします。


「重いわね……! でも、開拓地の『魔獣肉』で鍛えた私の魔力、舐めないで!」


リナは重力に抗い、氷の礫を一斉に射出しました。 しかし、ジョエルは動じません。彼は瞬時に土の壁を何層にも厚く築き、氷を物理的に受け止めます。


「無駄だ。氷は大地の表面を撫でるに過ぎない。君の魔力は洗練されているが、質量が足りないんだ。王都の理論に従えば、土は水を吸い、氷を止める。相性が悪いのは君の方だ」


「質量……? ふふ、ハンスさんに教わらなかった? 氷っていうのはね、ただ冷たいだけじゃないのよ!」


リナの瞳が青く輝きます。 彼女が放ったのは、鋭い礫ではなく、ジョエルの土壁の「隙間」に潜り込む霧状の冷気でした。


「……!? 壁が、脆く……!?」


「そう! 岩の隙間に水を流し込んで凍らせれば、どんなに硬い大地だって内側から粉々よ! 題して、『凍結膨張アイス・バースト』!」


メキメキと音を立て、ジョエルが誇る絶対防御の土壁が、内側から膨れ上がった氷の圧力によって無残に弾け飛びました。


「なっ……物理現象を逆手に取った魔法構成だと……!? 学園の教科書には、そんな使い方は載っていない……!」


ジョエルは破片を避けながら、驚愕を隠せません。 王都の魔法理論は「純度」と「出力」を求めますが、リナの戦い方には、開拓地で培われた「生きるための工夫」と、ハンス直伝の「不条理な物理法則」が混ざり合っていました。


「言ったでしょ? ここはバルカスよ。あんたたちの教科書なんて、焚き火の燃料にもならないわ!」


リナの周囲で、さらに巨大な氷の嵐が渦巻き始めます。


ジョエルは冷汗を流しながら、自らの魔力をさらに大地へと流し込みました。秩序を重んじる王都の重鎮と、自由を謳歌する開拓地の魔女。


二人の魔法戦は、常識を塗り替える一進一退の攻防へと加速していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ