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第139話:再戦の咆哮、理論の先の不条理

「ディエス、貴様……。あの日、私の前でなすすべもなく地に伏した屈辱を、もう忘れたのか?」


アレクシスは空中で光の翼を羽ばたかせ、冷徹な視線で見下ろしました。


かつて、アレクシスの「聖域・極光刑」によって心臓ごと焼き切られ、死の淵を彷徨ったディエス。アレクシスにとって、あの日ディエスを始末し損ねたのは唯一の「計算ミス」に過ぎず、その力関係が変わったなどとは微塵も考えていません。


「一度は繋ぎ止めた命だ。大人しく隠れていれば、家畜として生きる権利ぐらいは与えてやったものを」


アレクシスの指先が空中に複雑な紋章を描きます。放たれる魔力は以前よりも密度を増し、周囲の空間そのものが高熱で歪み始めました。


「ガハハハ! 忘れられるわけねぇだろ! お前のおかげで、俺の筋肉は『死からの復活』っていう最高級の超回復を経験できたんだからな!」


ディエスは隆起した筋肉を震わせ、大地を踏みしめました。


以前の彼なら光の速さに反応すらできなかった。しかし、今の彼には「死」を乗り越え、開拓地の不条理な環境で磨き上げた、本能的な危機察知能力がありました。


「……これ以上の戯言は不要だ。塵は塵らしく、法則ルールに従って消えるがいい」


アレクシスの瞳に、底冷えするような光が宿りました。 「聖域サンクチュアリ・極光刑」


放たれたのは、眩いばかりの純白の奔流。それは以前ディエスを沈めた時よりも遥かに速く、太く、確実な死を運ぶ光の槍。


だが。


「――ぬんッ!!」


ディエスは避けるどころか、あろうことかその光の直撃コースへ、自らの胸を突き出しました。


「な……っ!?」


アレクシスの驚愕。 ディエスの肉体は、光に触れた瞬間に焼き切られるはずでした。しかし、激突の直前、ディエスの全身の筋肉が異様な脈動を見せ、どす黒いまでの魔力障壁を纏いました。


「魔防コンバート(マジック・レジスト・変換)!!」


カァァァンッ! という、魔法同士の衝突ではありえない「硬質な音」が戦場に響き渡りました。 ディエスは、本来物理ダメージを無効化するための強靭な筋密度を、瞬間的に「魔法エネルギーへの抵抗力」へと全変換したのです。


アレクシスの必殺の光が、ディエスの黒光りする胸板によって文字通り「弾き飛ばされ」、明後日の方向へと逸れて背後の山を消し飛ばしました。


「……馬鹿な。魔法を……法則を、肉体で捻じ曲げただと……?」


「アレクシス! 法則だのルールだの、そんなもんを知らねぇから俺はここにいるんだ! お前の『正しい光』は、この『立派な筋肉』には通じねぇぞ!」


ディエスは大地を蹴り、弾丸のような速さでアレクシスの懐へと飛び込みました。


かつて自分を焼き切った男の、驚愕に染まった美しい顔。


そこへ、開拓地の泥と汗、そして不条理なまでの生命力が詰まった巨大な拳が迫ります。


「お前の正しさに、俺の野性を一発ぶち込んでやる!!」


アレクシスの光の壁を、物理的な質量が限界まで加速して粉砕しようとしていました。

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