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第136話:英雄の進軍、筋肉の迎撃


王都を後にしたアレクシスの軍勢は、かつてない速度でバルカス領へと迫っていました。


彼らが駆けるのは、ディエスとドワーフたちが血と汗で整備した、堅牢な石畳の街道。  


皮肉にも、その道が、アレクシスの「不浄を滅する」という狂気に拍車をかけていました。


「……もうすぐだ。あの男の、醜悪な笑い声が届かぬ場所へ、この世界を連れて行く」


アレクシスの瞳は、一切の迷いなく開拓地の方向を見据えています。


その頃、バルカス領・開拓地。


いつもと変わらぬ活気の中、しかしその熱気は、明らかに「戦闘」に向けられたものでした。


「ハンス! 迎撃準備の進捗はどうだ! アレクシスの『光の進軍』は、もうすぐそこまで来ている!」


ディエスが広大な開拓地を一望できる高台から、野太い声で指示を飛ばします。


その表情は、臨戦態勢でありながらも、どこか楽しげでした。


「問題ありません、ディエス様! 『対アレクシス最終防衛ライン』は既に完成しております!」


ハンスが眼鏡を光らせ、緻密な図面を広げます。 街道の終点、開拓地の入り口には、王都のそれとは全く異なる「壁」が築かれていました。


それは、石や土ではなく、巨大な魔獣の骨と、伐採した古木がまるで生命体のように組み上げられた、不格好だが威圧感のある要塞でした。


「『ドワーフ式・対光魔法反射シールド』、展開完了だぜ!」


バルバドスが叫ぶと、要塞の至る所に埋め込まれたドワーフ製の魔導器が起動。


王都の光魔法を拡散、吸収、そして「不浄な光(闇属性)」に変換して打ち返すという、奇妙な防御陣が展開されます。


「リナ! 『誘引餌』の設置状況は!?」


「バッチリよ、ディエス! 街道沿いには、王都の憲兵隊が嫌がりそうな『生の魔獣の内臓』と『強烈な体臭のする開拓民の古着』を撒き散らしてやったわ! きっと吐き気を催して進軍が遅れるはずよ!」


リナは不敵な笑みを浮かべ、土煙を上げながら魔獣肉の切れ端を投げつけていました。


これは、アレクシスが「不浄」と断じるものを物理的に投げつけ、精神的に揺さぶるという、ディエスならではの悪趣味な作戦でした。


「クラリス! 負傷者の受け入れと、兵士たちの『活力補給』を頼むぞ!」


「はい、ディエス様! 神は常に鍛え抜かれた肉体に宿ります! 開拓民には『聖なる筋肉増強ポタージュ(魔獣のエキス入り)』を、兵士には『闘志を燃やす聖油(超高純度魔獣油)』を配布済みです!」


エルザが、笑顔で巨大な寸胴鍋をかき混ぜています。その鍋からは、アレクシスの浄化魔法など跳ね返してしまうかのような、生命力溢れる匂いが立ち込めていました。


開拓地の住民たちは、武器を手に、あるいは巨大な工具を肩に担ぎ、それぞれの持ち場で迎撃の準備を整えていました。彼らの顔には恐怖の色はなく、むしろディエスと同じく、どこか挑戦的な笑顔が浮かんでいます。


「ガハハハ! よし、全員準備万端だな! アレクシスは『王国の英雄』だか知らねぇが、ここは『バルカス』だ! 王都の道理なんて、ここでは通用しねぇぞ!」


ディエスが拳を突き上げると、開拓地全体から地を揺るがすような雄叫びが上がりました。


アレクシスの「白く冷たい正義」に対し、ディエスの「自由な生き様」がまさに衝突しようとしています。

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