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第135話:摘発、そして討伐の決意


王都の地下室に漂っていた「生の匂い」は、一瞬にして凍りつきました。


「……不浄だな。吐き気がする」


冷徹な声と共に、地下室の厚い木扉が「光」の圧力によって内側へひしゃげ、粉砕されました。


舞い散る木片と埃を割って現れたのは、純白の法衣に身を包んだアレクシスでした。


彼の背後に浮かぶ数多の光球は、影に隠れて「生」を謳歌していた者たちを容赦なく照らし出します。


「ア、アレクシス様……! これは、その、違うんです……!」


肉を頬張っていた男が、脂の滴る手を震わせながら膝をつきました。 テーブルの上に散らばっているのは、法で禁じられた魔獣の肉。


そして、アレクシスが「堕落の象徴」として忌み嫌う、強い香草の匂い。


「何が違うというのだ。君たちは法を破り、私欲を満たし、この都をあの日の泥沼……欲望に溺れた腐敗した村と同じ場所に引きずり落とそうとしている」


アレクシスは、テーブルに残された肉の残骸を指先一つ触れずに凝視しました。


彼の研ぎ澄まされた魔力感知が、その肉に宿る異様な「生命力の波動」を捉えます。


それは、王都の去勢された家畜からは決して感じられない、地を揺るがすような荒々しいエネルギー。


「……この波動。そして、整備された街道を通じて密かに流れ込むこの『熱』。……そうか。ディエス、貴様だったのか」


アレクシスの瞳に、かつてないほど激しい、しかし氷のように冷たい「殺意」が宿ります。


自分はかつて、あの日、汚職と不条理によって故郷を失いました。


だからこそ、完璧な法を敷き、人々を正しく管理しようとしてきた。それなのに、自分が「無能」として辺境へ追いやった男が、自分の作った檻(秩序)を、外側から「活力」という名の毒で侵食している。


アレクシスにとって、ディエスはもはや単なるライバルではありませんでした。


自分の「正義」という名の美学を、その存在そのもので否定する、絶対的な**「不条理カオス」**となったのです。


王宮の回廊。アレクシスは立ち止まることなく、背後に控えるジョエルとノーマンに命じました。


「全部隊に告げろ。これより、辺境の不浄なる根源――バルカス領を『浄化』する」


「な……っ!? お待ちくださいアレクシス様!」 ジョエルが顔を蒼白にして食い下がります。


「バルカス領は今や、ドワーフたちの協力で街道が整備され、王国の食糧不足を救う唯一の希望です! 討伐などすれば、王都の経済は……!」


「黙れ。不浄なパンで生き長らえるなら、清廉なまま飢える方がマシだ。ジョエル、君もあの肉を口にしたのか? だからそんな、濁った言葉を吐くのか?」


アレクシスの氷の視線がジョエルを射抜きました。


その瞳には、もはや「対等な人間」への敬意など微塵もありません。


あるのは、自らを神の代理人と信じて疑わない狂信者の光だけでした。


「王の許可は不要だ。私が『法』であり、私が『正義』だ。……準備を急げ。あの男の笑い声が届かぬ場所まで、この国を白く塗り潰す」


アレクシスの宣言により、王都最高の魔法軍が、皮肉にも「ディエスたちが整備した完璧な街道」を通って、開拓地へと牙を剥き始めました。

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