表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/159

第131話:蠢く影、静かなる再編


王都は、アレクシスという名の「光」に支配されていました。


魔王軍四天王を討った彼の権威は、いまや国王さえも凌駕せんとする勢いです。しかし、その眩しすぎる光は、同時に濃い「影」をも生み出していました。


「アレクシス様こそが法であり、秩序である。……異論はあるか?」


王宮の会議室。ノーマンが冷徹な声で問いかけると、居並ぶ貴族たちは一様に首を振りました。


かつて魔法軍を私物化し、賄賂に手を染めていた汚職貴族たちは、アレクシスの清廉潔白な「恐怖」によって徹底的に粛清され、静まり返っています。


「結構。……ジョエル、防衛設備の再編を。ミスティは市民の監視、もとい『心のケア』を。アレクシス様の理想とする完璧な都を築くのだ」


ジョエルは震える手で書類をまとめ、ミスティはあごひげの口元を隠しながら「はいはい、仰せの通りに」と、薄く笑みを浮かべました。


アレクシスという絶対的な太陽を中心とした、鋼のような秩序。しかし、その内実には、過剰な統制が生む「息苦しさ」が蔓延し始めていたのです。


一方、その頃。王都の喧騒から遠く離れたバルカス領・開拓地。 こちらでは、王都のそれとは全く異質の「熱気」が渦巻いていました。


「ハァッ……ハァッ……。お、おい……。この領地、本当におかしいぞ……。さっきの『スクワット千回』が、まだ準備運動だなんて……」


開拓地の広場で膝をつき、肩で息を荒くしているのは、王都の騎士団から「視察」の名目で左遷されてきた一人の若い騎士でした。


彼は、アレクシスの完璧な秩序に馴染めず、かといって不真面目でもなかったために、事実上の厄介払いとしてこの辺境へ送られてきたのです。


「ガハハハ! 根性が足りんぞ、新入り! 見ろ、リナなんかもう千五百回を超えてるのに、まだツッコミを入れられる余裕があるんだぞ!」


ディエスが豪快に笑いながら、丸太のような腕で騎士の背中を叩きます。


「ディエス! 新入りをいじめないでよ! 誰だって普通の神経してたら、この村のメニューにはついていけないわよ!」


「リナさん。彼は『アレクシスの管理社会』から漏れ出した、貴重な人材です。あまり無茶をさせて、筋肉を壊してはいけません。……まずは、我が領自慢の特製プロテインを飲ませて、内側から改造しましょう」


ハンスが不敵に眼鏡を光らせ、禍々しい色をした(しかし栄養満点の)液体を差し出しました。


騎士は、王都で見てきた「アレクシスの美しすぎる光」と、目の前にある「泥臭く、不条理で、しかしどこか温かい筋肉の塊」を比較し、頭を抱えました。


「……王都じゃ、アレクシス様が『神』のように崇められてるっていうのに……。ここは、別の世界の地獄か何かか……?」


「地獄じゃねぇ、ここは『楽園』だ! 筋肉を鍛えれば、悩みなんて汗と一緒に全部流れるぞ!」


ディエスの言葉に、騎士は導かれるようにプロテインを口にしました。 その瞬間、全身の細胞が沸き立つような、暴力的なまでの活力が脳を突き抜けます。


アレクシスが王都で「孤独な完璧」を極めていく一方で、ディエスの開拓地には、彼の秩序から零れ落ちた者たちが、吸い寄せられるように集まり始めていました。


それは、意図せぬ形での「力の二極化」。 王都の「静かなる光」と、辺境の「騒がしい熱」。 この二つの流れが再び交わる時、王国に真の変革が訪れることを、まだ誰も知りません。


「……さて。ハンス、そろそろ『収穫』の時期だな」 「ええ、ディエス様。開拓地の畑も、そして……王都への潜伏工作も順調です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ