第129話:至高の光、王都を照らす
王都の防衛線が崩壊の危機に瀕しているというのは、あくまで「一般兵たち」の視点でした。
戦場の中心で、光輝く法衣を翻すアレクシスにとって、この状況は既に自らの掌の上(コントロール下)にありました。
「……そろそろ、終わらせよう。この茶番を」
アレクシスの瞳には、疲労の色など微塵もありません。
彼はこれまで、あえて全力を出さずに戦っていました。
絶望的な状況を演出し、そこから民衆を救い出す「完璧な救世主」としての劇的な演出。
その全てが、彼の承認欲求を満たすための計算された舞台装置だったのです。
アレクシスが両腕を天に掲げると、王都全域の空気が震え、耳を刺すような高周波の音が響き渡りました。
「我が光こそが秩序。闇を払い、世界をあるべき姿へ戻さん」
「極天魔法・神罰の光雨」
瞬間に放たれたのは、数万、数十万という光の針。
それは意思を持っているかのように空中のハーピーだけを正確に貫き、地上に潜むサキュバスたちの核をピンポイントで消滅させました。
「な……!? 一人で、これほどの範囲を同時に……!?」
影からその様子を窺っていたリリスが愕然と目を見開きます。
彼女がアレクシスの精神を揺さぶったはずのあの瞬間ですら、アレクシスにとっては「英雄の苦悩」を演出するためのスパイスに過ぎなかったのか。
「素晴らしい……! やはり、アレクシス様こそが真の英雄だ!」
市民たちの歓喜の叫びが爆発します。
ミスティが保護していた避難所の上空にも、一切の容赦ない光が降り注ぎ、市民を狙っていた魔族を塵へと変えていきました。
「あらあら……。本気を出せば一瞬なのに。相変わらず演出に凝ること」
ミスティは杖を肩に預け、涼しげな顔でアレクシスの背中を眺めていました。
彼女は知っています。アレクシスがどれほど潔癖で、どれほど「誰からも愛される完璧な存在」であることに固執しているか。
そして、その目的のためなら、自分自身の魔力を限界まで酷使することさえ厭わない狂気を。
アレクシスは光の道を進むように、リリスが潜む闇の深淵へと足を踏み入れます。
「リリス。私の秩序に、君のような不浄な魔物は必要ない」
「……っ、ふざけないで! 理想を語るその口を、今すぐ引き裂いてあげるわ!」
絶望したリリスが、魔力そのものを爆発させてアレクシスに襲いかかります。 しかし、アレクシスの周囲に展開された光の防壁は、彼女の攻撃を1ミリも通しません。
王都は今、一人の男が放つ「正しさ」という名の、あまりにも眩しすぎる光に塗りつぶされようとしていました。




