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第125話:完璧なる英雄の綻び


王都の空は、禍々しい紫の雲に覆われていました。


魔王軍四天王リリス率いる小隊が王都の外郭を突破し、街はかつてない恐怖に包まれています。


「怯むな! 我らにはアレクシス様がついている! 放てッ!」


ノーマンの鋭い号令とともに、王国魔法軍の兵士が一斉に杖を掲げました。


数百の魔法陣から放たれる火炎と雷撃の豪雨が魔物の群れを焼き払います。


その傍らでは、ジョエルが冷や汗を流しながら、魔力の供給ラインを必死に維持していました。


「ノーマン、敵の数が減らないぞ! 魔法兵の精神が持たない、これじゃジリ貧だ!」


「黙って杖を振れ、ジョエル! アレクシス様が……我らの太陽が、最前線におられるのだぞ!」


戦場の中心、純白のマントを翻して戦うアレクシスの姿は、まさに絵画のような美しさでした。


彼の放つ聖なる光の一撃が、魔物の軍勢を次々と霧散させていきます。


「……掃き溜めのごみどもめ。私の美しい街を汚すことは許さない」


アレクシスは、押し寄せる絶望を切り裂く「完璧な英雄」として、民衆の視線を一身に浴びていました。


だが、その熱狂こそが、リリスの仕掛けた罠の入り口だったのです。


「あら……。あの大男ディエスの後だと、なんて繊細で脆そうな心かしら」


戦場に甘い香りが漂い、アレクシスの目の前にリリスが音もなく現れました。


「魔族の将か。消えろ、不浄なる者」


アレクシスが光の剣を振り下ろそうとした瞬間、視界がぐにゃりと歪みました。


「な、何を……私は救世主だ。完璧な、英雄なのだ……!」


アレクシスが膝をつき、激しく頭を振りました。


聖なる光が乱れ、王国軍の防衛線が崩れ始めます。ノーマンやジョエルが叫びながら駆け寄ろうとしますが、リリスの幻影の壁に阻まれ、届きません。


「……ふふ。あの辺境の男は、私の指が折れるほど心が硬かったけれど。あなたは……ガラス細工みたいに簡単に砕けそうね」


王国の光が、今、絶望の闇に飲み込まれようとしていました。

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