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第122話:王都の喧騒と、完璧なる「英雄」の虚像


王都の活気ある酒場『黄金の麦穂亭』では、今宵も職人や兵士たちがジョッキを傾け、喧騒に身を投じていました。


「おい、このナイフを見てくれよ! 帝国の新ブランドだっていうんだが、どんな硬い肉でも紙みたいに切れるんだ。最近の帝国製はどうなってるんだ?」


「へぇ、俺の使ってるこの新型のスコップもそうだ。軽いのに、岩を叩いても火花が出るだけで傷一つつかねぇ。……これなら仕事が早く終わって、酒の時間が増えるってもんだな!」


男たちが感心して眺めているのは、マルコが「帝国の試作品」として隠密に流した、バルカス領ドワーフ工房製の逸品でした。


彼らは自分たちの生活を支える道具が、かつて「素行不良の筋肉ダルマ」として追放された男の地で作られたものだとは、夢にも思いません。


やがて話題は、今、王都で最も輝いている「光」へと移ります。


「それにしても、アレクシス様は御立派だよなぁ。今日も街の外で暴れていた大型魔獣を、傷一つ負わずに仕留めたって話だぞ」


「ああ、あの美しさと強さ……まさに王国の理想だ。かつて軍にいた**『あの暴力の塊』**とは大違いだよ。あいつは強かったが、歩くたびに石畳を壊すし、魔獣ごと建物まで粉砕するから迷惑極まりなかったからな」


「全くだ。あんな粗野な筋肉男がいなくなって、ようやくこの国も『気品』ある平和を取り戻したってわけだ」


その頃、王宮のバルコニーでは、アレクシスが眼下に広がる街の灯りを見下ろしていました。


「……民の声は、常に『正解』を求めている」


アレクシスの傍らには、整えられた活動報告書。


そこには、彼がいかに完璧に振る舞い、いかに効率的に魔獣を討伐し、いかに民衆の支持を集めているかが克明に記されていました。


アレクシスは、ディエスという「不条理な暴力」を排除した後、自らが理想とする「秩序ある平和」を築くため、本格的に王国の象徴としての地位を固め始めていたのです。


炊き出しの視察、騎士団の演習指導、そして「自ら剣を振るう」華麗なパフォーマンス。そのすべてが計算され、美しく、民衆の熱狂を呼び起こしていました。


「不正という毒を抜いたこの国は、ようやく私の描く美しい庭園へと生まれ変わる」


アレクシスは満足げに微笑みました。


だが、その完璧な「英雄」の背後、暗い夜の淵では、彼が最も軽蔑する「不条理」が、静かに牙を剥き始めていたのです。

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