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第118話:絶望の後の収穫祭、あるいは「静かなる爆益」


スタンピードという名の「強制仕入れ」から一夜明け、開拓地は未曾有の活気に沸いていました。


かつて多くの命を奪い、王国を震撼させた魔王領の軍勢。


しかし今、それらはハンスの設計した「地下解体処理場」にて、整然と部位ごとに分けられ、山のような**「富」**へと姿を変えていたのです。


「ガハハハ! 飲め! 食え! 今日は魔王領の特上カルビ(ミノタウロス肉)の食べ放題だッ!」


中央広場では、ディエスが包帯姿も痛々しいはずなのに、片手で巨大な肉の塊を焼きながら叫んでいました。


住民たちは、昨日の恐怖が嘘だったかのように笑い、高タンパクな肉を頬張っています。


彼らにとって魔獣はもはや「絶望」ではなく、「自分たちを強くし、街を豊かにしてくれる資源」へと認識が書き換えられていました。


「ハンスさん……これ、いくらなんでも潤いすぎじゃない?」


リナが呆れ顔で指さしたのは、街の地下倉庫から溢れ出さんばかりの素材の山です。


**「火炎トカゲの耐熱皮」**が数百枚。


**「大蜘蛛の強靭な糸」**が山積み。


**「魔獣の鋭い牙や爪」**は、それだけで武器の材料として金貨数千枚の価値があります。


「リナさん、声が大きいです。これらはすべて『公式には存在しない素材』です」


ハンスは帳簿にペンを走らせながら、冷淡に告げました。


「えっ、どういうこと?」


「王都のアレクシス様には、『スタンピードにより甚大な被害を受け、現在は辛うじて生存しているが、再建の目処は立たず。至急、廃棄処分の検討を乞う』という偽の絶望報告書を送っておきました。これだけの富を得たと知れれば、即座に重税を課されるか、素材を没収されるだけですからね」


ハンスは眼鏡を光らせ、ニヤリと笑いました。


「素材の売却はすべて、信頼できる帝国の裏ルートのみを使用します。表向きは『貧しい開拓地』を演じつつ、裏で『筋肉バルカス経済圏』を確立する……。これが今の私の仕事です」


「ハンスさん……あんた、相変わらず性格悪いわね(褒め言葉)」


「ハンス! 相談がある!」


そこへ、肉を食らい尽くしたディエスがやってきました。その手には、並の鋼鉄を容易に貫く魔獣の牙が握られています。


「おお、ディエス様。腹の筋肉は満たされましたか?」


「ああ! だが、この牙を見てくれ。工作兵のツルハシの先に付ければ、もっとサクサク岩が削れそうじゃないか! だが、俺の馬力に耐えられるように加工できる奴がここにはいないんだ」


「……左様ですね。加工前の素材を売るだけでは利益率は上がりません。この希少素材を叩き上げ、工作兵の装備や、我々のための真の武具に作り変える……。今この街に、アレクシス様にバレないよう隠密に招き入れるべき人材がいます」


「ああ、分かっているぞハンス。この硬い素材を叩き上げ、筋肉の鼓動を鉄に伝える男……**『鍛冶師』**だな!」


翌日。 ディエスは、王都の隅っこで「頑固すぎて仕事がない」と干されていた、あるドワーフの鍛冶屋を**「極秘に拉致スカウト」**するために動き出すことにしました。


「ハンス、手紙には何と書けばいい?」


「そうですね……『最高級の素材が腐るほどあるが、扱える男がいない。死ぬまで叩き放題だ』と。王都の監視を掻い潜り、彼を『夜逃げ』という形でこちらへ連れてきましょう」


アレクシスが「ディエスの開拓地はそろそろ飢え死にしている頃だろう」と高を括っている間に、開拓地は「筋肉」と「隠し財産」、そして「伝説の職人」を手に入れ、王国最強の隠れ里へと進化を始めようとしていました。

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