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第114話:想定外の汚染、筋肉の強制送還


翌朝、王国魔法軍団長の執務室には、アレクシスの震える怒声が響き渡っていました。


「もう限界だ……! 練兵場から聞こえてくるのが『バルカス!』という不気味な叫び声ばかりなのはどういうことだ!? なぜ王国軍の挨拶が、挙手ではなくサイドチェストになっているッ!?」


アレクシスは机を叩き、震える指で追放命令書を書き殴りました。


当初の「開拓を遅らせる」という目的など、もはや怒りの彼方に消え去っています。


「あいつを呼んだのは間違いだった! 討伐演習などどうでもいい、予算も軍績もくれてやる! 今すぐ、一刻も早くディエスを開拓地に叩き返せ!! 二度と王都の門を潜らせるな!!」


一方、練兵場では。 帰還命令を伝えに来た伝令に対し、ディエスは汗を拭いながら爽やかな笑顔を見せていました。


「えぇっ!? もう帰っていいのか!? まだ新兵諸君に『広背筋を広げて滑空する方法』を半分も教えていないんだぞ。……おい新兵ども、アレクシスが帰れと言っているぞ!」


その言葉を聞いた瞬間、数百人の新兵たちが一斉に膝をつき、地響きのような声を上げました。


「そんな! ディエス師匠、まだ私たちの僧帽筋は未完成です!」


「アレクシス様にお伝えください! 私たちは剣を捨て、この肉体を『王国の盾』にすると誓ったのですッ!」


「ガハハハ! お前たち、いい気合だ! アレクシス、お前も一緒にどうだ? 腹筋を割れば、そのイライラも解消されるぞ!」


「「「帰れぇぇぇぇッ!!!」」」


バルコニーから様子を見ていたアレクシスと王宮官僚たちの、悲鳴のような絶叫が重なりました。


その頃、開拓地の丘の上。 ハンスは望遠鏡で王都方面を眺めながら、懐中時計を確認していました。


「……想定より三日は早いですね。ディエス様が戻ると、『まずは丸太を担いでから考えよう』などと非効率な精神論を持ち込まれ、私の完璧な建築スケジュールが乱されます」


ハンスの背後では、ディエス不在の間に「科学的・効率的」な指揮を受けた工作兵たちが、魔導機械のような正確さで石材を積み上げていました。主がいない今、開拓地の発展速度は理論上の限界値を突破していたのです。


「ハンスさん、王都から早馬が来ました! ディエス様がこちらに向かっているそうです!」


リナの報告に、ハンスは冷静にペンを走らせ、一通の「公式な書状」を書き上げました。


「リナさん、ディエス様へ伝令を。……『現在、領内は急ピッチな区画整理と経済協定の最終調整に入っております。領主殿が今戻られると、そのあまりの覇気に商人が怯え、契約が白紙に戻る恐れがあります。あと三日、王都で新兵の教育バカンスを続けてください』と」


「ハンスさん、それ……暗に『今はお前の筋肉が邪魔だ』って言ってますよね?」


「言葉を選んでください。これは『戦略的な待機勧告』です。……さあ諸君、主が王都で足止め……失礼、休養されている間に、居住区をさらに二倍に拡張します。ノンストップでかかりなさい!」


王都を追い出されたものの、ハンスから「今は戻るな」と理論武装された書状を受け取り、街道の真ん中で立ち往生するディエス。


「ガハハハ! 困ったな、王都からは追い出され、ハンスからは待てと言われた! ならばこの街道の真ん中で、野宿トレーニングといくか! 野郎ども、この辺りの岩を全部ダンベルにするぞ!!」


結局、どこにいても周囲を筋肉の色に染めてしまうディエス。


一方の開拓地は、主不在の「ボーナスタイム」を最大限に利用し、さらなる異常な発展を遂げるのでした。

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