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第113話:新兵たちの筋肉覚醒(マッスル・ライジング)


王都の練兵場。そこでは、本来なら「高貴な王国軍人」を目指すはずの新兵たちが、かつてない人生の岐路に立たされていました。


「声が小さいぞ新兵ども! 魔法や剣を振る暇があるなら、腹直筋を収縮させて横隔膜を震わせろッ! 全員、装備を脱げ! 筋肉の動きが見えんッ!」


ディエスの地鳴りのような怒号が響くたび、新兵たちの間に戦慄が走ります。


当初、彼らはディエスを「地方へ追いやられた野蛮な筋肉ダルマ」と侮っていました


。しかし、訓練開始からわずか数日。彼らの瞳には、次第に「狂信的な輝き」が宿り始めていたのです。


「……なあ、聞いたか? 三番隊のロバート、昨日のスクワット千回で『真理』を見たらしいぞ」


「ああ。剣を振るより、広背筋を広げたときの方が風の抵抗を感じて、自分が自然と一体になれるって……」


新兵たちは気づいてしまったのです。


ハンスが開拓地で証明した**「効率的な筋肉」と、ディエスの「圧倒的な熱量」**が組み合わさった時、ただの素人だった自分たちの身体能力が爆発的に向上することに。


「バルカス様! 報告します! 今朝のベンチプレス後、私の火球魔法ファイアボールの温度が二度上がりました! これもすべて、大胸筋という名の燃料タンクがデカくなったおかげです!」


「ガハハハ! よく気づいたな! 魔法とはいわば排気ガスだ! エンジン(筋肉)がデカければ、自ずと出力も上がるというものだッ!」

ディエスが適当なことを言う。


もはや練兵場は、王国軍の施設ではなく**「バルカス流・筋肉修道院」**と化していました。


新兵たちは休憩時間ですら、互いの筋肉をオイルで磨き合い、「ナイスバルク!」と称え合う始末。


その光景を遠くのバルコニーから眺めていたアレクシスは、手にしたワイングラスを震わせていました。


「……何だ、あれは。私の新兵たちが、なぜ上半身裸で丸太を抱えて走り回っているんだ? 王国軍の規律はどこへ行った……?」


アレクシスは、ディエスを王都に縛り付けることで、開拓地を無力化するつもりでした。


しかし目の前で起きているのは、王都の軍事基盤が「バルカス色」に染め替えられていくという、恐るべき筋肉汚染だったのです。


さらに事態は悪化します。 視察に訪れたアレクシスに対し、新兵の代表が目に涙を浮かべて直訴に及んだのです。


「アレクシス様! 私たちを、ディエス様の開拓地へ配属してください! ここは……ここは設備が整いすぎていて、筋肉が甘えてしまうのです! もっと過酷な、あの『筋肉の聖地』で自分を追い込みたいんですッ!」


「何を……言っているんだ、君たちは……」


「王国軍? いえ、今日から私たちは『バルカス工作兵団・王都支部』を自称させていただきます! さあ野郎ども、アレクシス様へ敬礼のサイドチェストだぁーッ!!」


「「「バルカスッ!!」」」


一斉に炸裂する、若き新兵たちの肉体美。 アレクシスの目の前で、王国軍の未来を担う若者たちが、キラキラした笑顔の「脳筋」へと作り変えられていくのでした。

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