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第110話:筋肉と食物繊維、人間耕運機の咆哮


開拓地の建設が急ピッチで進む中、ある「異常事態」が住民たちを襲いました。


「……リナさん、助けて……。もう三日も、お腹がパンパンで……」


「アタシもよ。なんだか最近、お肌のツヤがなくなって、筋肉のキレも悪い気がするわ……」


リナの元に、元流民や元野盗たちが次々と泣きついてきたのです。


彼らの体は確かにバルクアップしていましたが、その表情は一様に土色。


そして何を隠そう、リナ自身もまた、数日前から「お通じ」という名の平和を失っていました。


「(……くっ、お腹が重い。これも全部、朝から晩まで肉、肉、肉の生活のせいよ!)」


リナが脂汗を浮かべて腹部を押さえていると、背後から「みっしり」とした影が迫りました。


「どうしたリナ! 随分と顔色が悪いじゃないか。もしや、腹筋の追い込みが足りなくて内臓が驚いているのか!?」


デリカシーの欠片もない声で現れたのはディエスでした。


「うるさいわね! 追い込みすぎなのは食生活よ! 住民全員、重度の便秘と肌荒れで全滅しかけてるんです! 筋肉はつくでしょうけど、このままじゃみんな『出ない苦しみ』で憤死しますよ!」


「ガハハハ! 案ずるなリナ! 出ないなら、出すまで踏ん張るのが筋肉の道だ! ほれ、俺が後ろからお前の腹筋を全力で圧迫プレスしてやろうか!? 『マッスル・ハイムリッヒ法』だッ!」


「殺す気か!!! 物理で解決しようとするな! 必要なのは野菜よ、野菜!」


リナの必死のツッコミに、ディエスは豪快に胸を叩きました。


「なに、野菜だと!? ならば今すぐこの辺り一面に野菜の種をぶちまけてやるッ! ほうれん草にキャベツ、トマト! 何でもいい、筋肉に良さそうなのを全部植えろ!」


鼻息を荒くして種袋を掴もうとするディエスでしたが、その腕を冷徹な力が制しました。ハンスです。


「お待ちください、ディエス様。この開拓地の土壌は魔力を含んだ硬い荒れ地。王都の軟弱な野菜を闇雲に植えても、芽が出る前に枯れるだけです」


ハンスは眼鏡を押し上げ、一枚の区画図を広げました。


「今は『時間』と『環境』を計算すべきです。まずは荒れ地でも育つジャガイモや根菜類を優先して植えるための土壌改良を行います。ディエス様、貴方はその有り余るパワーで、帝国との取引を加速させてください」


ハンスは即座にマルセル商会を通じて、帝国側へ緊急の伝令を送りました。


「魔獣素材の納入を増やす代わりに、保存の利く乾燥野菜と食物繊維の豊富な穀物を倍量納入せよ」という、筋肉の腸内環境を最優先した契約変更です。


一方、現場ではハンスの指揮により、広大な荒れ地の整備が始まりました。


「『人間耕運機マッスル・プラウ』、用意! 姿勢を低く、大腿四頭筋に意識を集中しろ!」


ディエスの号令と共に、巨大な「鉄の爪」を足に装着した工作兵たちが一斉に地面を蹴り出しました。


「バルカス! バルカス!!」という野太い掛け声と共に、本来なら牛が数頭で引く重いくわを己の腰に括り付け、硬い岩盤を爆発的な脚力で掘り起こしていきます。


「……すごすぎて、もう突っ込む気力もないわ。牛の立場がないじゃない……」


リナが呆然とする中、ハンスは冷静に指示を飛ばします。


「ただ耕すだけではありません。帝国から届く苗や種が到着するまでに、石一つ残さず砕きなさい! その振動が、腸への良い刺激になると思えば安いものでしょう?」


「ガハハハ! いいぞ野郎ども! 明日の快便は、今日のデッドリフトにかかっているッ!!」


数日のうちに、荒れ果てていた大地は見事な農地へと姿を変えました。


さらに帝国から「食物繊維たっぷりの雑穀と乾燥キャベツ」が大量に届くと、開拓地には久しぶりの「平穏(お通じ)」が訪れました。


数日後、スッキリした顔で畑を見つめるリナに、ディエスがニカッと笑いかけました。


「どうだリナ、顔色が良くなったな! さあ、スッキリしたところで記念の『スクワット千回』といくか!」


「なんでそうなるのよ! 畑に水を撒きに行くわよ、この筋肉バカ!」


筋肉で建物を建て、筋肉で大地を耕す。


住民たちの胃腸と絆は、この「食物繊維危機」を経て、より一層強固なものへと鍛え上げられていくのでした。

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