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文明の〇〇 パンツイッチョマン  作者: 最勝寺 蔵人
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第十話 本物は誰だ!パンツ〇〇マン?(3)

ナレーター(以下、「>」と表す。):フロントラットスプレッドのシルエットのアップ。カメラが引くと、両隣にも体型こそ違うが同じ姿勢をした二人。さらにカメラが引いてズラリと並ぶフロントラットスプレッドシルエッツ。影で見る限り、全員半裸のようだぞ。右下に現れる「パンツイッショマン」のロゴ。……このアイキャッチが、後半の内容を暗示しているなら、不安しか湧かないぞ。


>さて、半裸闘争として語られる一連の出来事の序盤は、各地に――と言っても、枚鴨まいがも市 に限っての話だが――出没した半裸の男たち。もしかしたら、女性も混じっていたのかもしれないが、当番組がそちらにスポットライトを向ける事はない。それは深夜放送枠の番組内容だからだ。最勝寺先生は「日曜日の午前中に放送している感じで……」と言っていたが、もうタイトルからして無理があると思うぞ。そもそも、リリースタイミングが深夜じゃん、と思うよね。……あ、日曜零時だったら午前という枠では間違えないのか。


※ いや、理想は日曜の朝に子供と一緒に観よう、なんだけどね。……やっぱり無理かなぁ。


>ともかく、半裸闘争の第二ステージは市議会だった。そこでの議論の中継は「需要ニーズがないでしょ」とディレクターズカットに遭ったので、結果だけお伝えすると、「公共の場における大幅な肌の露出による迷惑行為を禁止する条例案」、通称「露出迷惑条例」が可決されたのだ。何かとグタグタ言い合って長くなる民主主義社会にとってはかなりの迅速さだった。この背景には、本来行政側の執行者で立法には関与しないはずの大棚おおだな市長が、強力に後押ししたからだ、と言われている。大棚おおだな市長、てやんでぇ花火大会の打ち上げ式の注目を、パンツイッチョマンに奪われたのがよっぽど悔しかったようです。そして、この露出迷惑条例が半裸軍団への抑えとなったか、というと、その逆で「施行しこうされるまで堪能たんのうしてやるぜ」と活性化してしまった。が、それは半裸闘争にとって小さな振動でしかなかった。半裸闘争の主たる動きは、「露出迷惑条例が個人の自由を侵害しすぎてはいないか?」と言う法的な問題提起により起こった。自由の制限に敏感なジャーナリストや、法律関係の学者たちが、この指摘をした。しかし、大きな鳴動を起こしたのは、展海てんかい議員だった。展海てんかい議員は市議員だった。だが、枚鴨まいがも市 の議員ではなく、隣の――え、名前を出すと迷惑が掛かるから出してはいけない? ……では、単に隣の市の議員ということだけにしておきます。


枚鴨まいがも市 の存在が既に日本地図をいびつにしていますので、新たな架空都市を設けるのは止めておきます。


展海てんかい議員はすぐさま、「越権行為だ」とか、「自分の市だけ考えておけ。隣に口出しするな」と叩かれた。それに対して、展海てんかい議員は、枚鴨まいがも市 の決定を自分が覆す権利などなく、それをするのは枚鴨まいがも市 の議員や市民だ、と断ってから、次のような発言をした。


展海てんかい議員: 家庭それぞれには独自のルールや独自の教育方針があり、本来他人が口を出すべきものではありません。しかし、隣から見ていて「やり過ぎだ」と思える行為には、「それで大丈夫ですか?」と、同じ社会に生きる者として、声を掛けるべきではないでしょうか? 自分の家さえ見ておけば良いわけではないと思います。


>この発言はさらなる炎上を呼んだ。「児童虐待と市政を一緒にするな」と訴えられたのだ。厳密には、展海てんかい議員は児童虐待にまで言及していなかったのだが、ネットでは特に一旦貼られたレッテルは容易にはがれない。ほとんどの人が展海てんかい議員の発言内容を確認せず、この件について意見を言い合った。結果、展海てんかい議員は「例えが適当ではなかった」と謝罪したが、「露出迷惑条例の施行については、懸念がある」という説を曲げなかった。

>この一議員が、自分の責任範囲外の組織に対しても意見を言うべきか否かは、法的になかなか興味深いテーマとなった。ある大学のゼミでは、実際にテーマとして議論されたくらいだった。組織の規模を変えた場合はどうなのか?

市ではなく、都道府県。都道府県ではなく、国ならどうか? 規模が変われば、是非の印象が変わった。また、議論となる内容にとってももちろん是非は変わった。……あ、こういう法的な命題については、当番組では深く扱わない? では、社会の動きについて戻りましょう。

>議論としては、ある程度の非を認めた展海てんかい議員だったが、皮肉にも()()()()()()が「わかりやすかった」と一部の市民に浸透した。以後、市民活動として「服装の自由」を求める動きが活性化し、ついに抗議デモ集会をするに至る。半裸闘争はこれら一連の出来事を示す言葉として、最も広まったが、狭義における「半裸闘争」は、この集会を指す。ただし、一部の人たちは、この集会とそれに直接関係する騒動を「半裸の乱」と呼ぶ。しかし、そう呼ぶ人たちより多くの人が、それを「パンツの乱」と呼ぶ。


>抗議デモ行進の集合場所となったのは、枚鴨まいがも市 の駅前広場だ。大棚おおだな市長が花火打ち上げ式を開いた場所と同じだ。さらに、同じと言えば、デモ行進のコースは、てやんでぇ花火大会と同日に行われた、中岡町の山車巡回ルートと同じだった。車道を占有した山車巡回と違い、デモ行進は歩道の通行を予定されていた。というわけで、駅前広場に集まった人々。その中に一部、半裸の男たちが含まれていた。その数、数十人。なお、このすうという日本語表現は、二三という場合と、五前後という場合の、二つに分けられます。留学生からは「どっちなんですか!?」と聞かれる事が多いですが、それには「文脈から判断してください」と答えるしかありません。ですが、音声多重おんせいたじゅう総天然色そうてんねんしょくスリーディ脳内構築のうないこうちく活劇かつげきでは、どちらを採用しても自由です。でも、半裸の男を増やしすぎて気持ち悪くならないようご注意ください。

>そういうわけでお昼前に集まってきた半裸の男たち。ようやく、サブタイトルらしくなりましたね。あの元気よく笑顔を振りまいていた温泉パンツマンもいます。ただし、今日は椰子の実が目立つトランクスです。なので、椰子の実パンツマンですね。性懲しょうこりもなく、パンツマッチョマンもいます。さすがに、サングラスに替えていますが、体型が特徴的なので――あ、ゴツゴウ・ユニバースでは、もうこれで変装完了なんでしたね。そして、皆さんお待ちかねのパンツイッチョマンですが……あ、やっぱり居ますね。ちゃんとわかりやすくフロントラットスプレッドで立ってくれています。一方で、桜ちゃんが解放してしまった男のような、半裸でも下半身開放系の人は、今回集まっていません。流れを作った展海てんかい議員も、そこの部分は一切認めておらず、「法律違反は(取り締まるのは)当然として……」と話しておりました。

>半裸の男たちが集まると、それの見物人もやって来ます。え? 女性ならまだしも、男でそんなに人は集まるか、ですって? まあ、興味がある人があっても、他人の目があるとなかなか気軽にいけない対象ではありますが、必ず来る人が何人かいるのです。例えば――


友庫ともこ: パンチョさん、来ているかなぁ?


>半裸の男たちとそれに混じって存在するデモ活動に賛同する方々を囲むように、見物人の取り巻きがいたが、その中に友庫ともこさんと桜ちゃんが来ていた。


桜: うーん、似たような人たちがいるから、良く分からないなぁ。……あ! でも、見分ける方法、思いついた!


友庫ともこ: え、何々?


桜: 出るか出ないかわからないビームで、バババッと横に出して、ちゃんとよけられた人が――


友庫ともこ: 却下!


桜: そうだよね。出るか出ないかわからないビームって、本当に出るか出ないかわからないのが難点だから。


友庫ともこさんの眼差しは冷たい。仲良くなった二人でも、ここはまだ歩み寄れていないみたいだ。


友庫ともこ: でも、これだけいるなら、きっといるよね?


>さっさと、危険な技から話を逸らす友庫ともこさん。桜ちゃんは、頷いた後で、少し首を傾げる。


桜: いや、良く考えてみると、いない可能性もあるかも。あの人、事件をかぎわけてくるところあるみたいだから、このまま何も起きないなら、来てないかも……


友庫ともこ: ええーっ!


>あからさまに落胆する友庫ともこさん。……しかし、桜ちゃんが言うことが本当なら、この後、事件が起きるということでしょうか? ……と不安をあおっても無駄ですか? もうカメラを向けている時点で、視聴者の方にはバレバレですもんね!

>桜ちゃんと友庫ともこさんが来ているなら、当然あの人も来ています。つうの間では「パンツイッチョマンファンクラブ会員番号1番」とまで言われている、その人は……はい、銀子先生です。銀子先生は、桜ちゃんたちのように同志がいないので、一人で来てます。しかし、一人で来ているからこそ気兼ねなく、カメラを持ちこんでカシャカシャと撮りまくっています。今時、スマホカメラではなく、デジタル一眼レフカメラです。「誰がパンツイッチョマンさんかわからないなら、全部撮ってしまえばいいのよ!」という戦略のようですが、わからなかったら鑑賞段階でもどうしようもないので、実は破綻している戦略ですね。……まあ、執念は凄いです。目が怖い……。そして、あの人たちもこの集会を確認しにし来ていました。


後輩刑事: ほんと、パンツ男ばっかりですね。


>後輩刑事、そしてやっぱり逸書にいるノーパン刑事デカがいるのは、広場より駅側にある陸橋だ。そこから、集まった人たちを見下ろしていた。


後輩刑事: この中にあの、戸羽公園で暴れた男はいるんでしょうかね? いや、いるわけないか。花火大会の時にここで暴れ出す男も、たぶん同じ男でしょ?


>言っている最中に、可能性がないと考えた後輩刑事は、首を左右に振りながら言った。


ノーパン刑事デカ(以下、「NPD」と表します): パンツイッチョマンの事か? 奴なら……ほら、あそこにいるぞ。


>意外にも、あっさりと手をのばして、ある場所を指し示すノーパン刑事デカ


後輩刑事: え? ど、どこですか?


>指差された場所を見て、それでも良くわからなかった後輩刑事は、ノーパン刑事デカの腕の角度を確認しながら、自分もそちらに指を伸ばす。それでも、やっぱりわからなかったので、ノーパン刑事の肩の後ろに立ち、指差す先を偏位差なしで見ようとする。


後輩刑事: ……よくわからないッスね。何か特徴ないですか?


ノーパン刑事デカ: んーと、上半身は裸で、黒いメガネを掛けているな。


後輩刑事: って、それ、当てはまるヤツ、いっぱいいるじゃないですか! しかし、さすがアニキ、良くわかりますね。


ノーパン刑事デカ: ああ。刑事の勘だな。


>出た、いつものセリフ! というか、ノーパン刑事デカは後輩刑事と違って、パンツイッチョマンに数回会っていますからね。……って、それは銀子先生たちも同じか。そこを超えてくる、となるとゴツゴウ・ユニバースの常識を超えてくるわけで、さすがは異能者といったところでしょうか。……いや、単に思い込みで正しいかどうかはわかりませんね。こちらからも、ノーパン刑事デカが誰を指差していたのか、わかりませんでしたから。


後輩刑事: って、アニキ! 被疑者がわかるなら、確保する絶好の機会じゃないですか! 職質掛けましょうよ。


>肩の後ろに立っていたので、後輩刑事はそのまま、ノーパン刑事の肘のあたりをまんで引っ張る。


ノーパン刑事デカ: いや、良いだろう。ああいう集会に警察が介入すると面倒だからな。今日も暴れ回るなら別だが……ま、今日は静かに過ごしそうだな。放っておくぞ。


>陸橋を歩き出すノーパン刑事デカ。後輩刑事は、その後に続きながら、一応聞く。


後輩刑事: 本当に、大丈夫なんですかね?


ノーパン刑事デカ: ああ、刑事の勘だ。


>と、これでは、事件を察知しているかもしれないパンツイッチョマンの勘と、ノーパン刑事デカの勘が、どちらが当たるのが勝負! という展開なのですが、もう勝敗は見えていますよね。本当に、デモ隊が予定のコースを練り歩いただけで終わったら、私たちの番組が成立しませんから。……いや、銀子先生たちが介入するゴタゴタでも、十分番組は成立しそうだなぁ。どうなるんだろう。……おっと、ここで場面転換ですか。



>薄暗い……ここは、公園ですね。公園の林の中。植え込みの裏側に、男どもが十数名、身を潜めております。えーと、……同調シンクロしてみますね。…………なるほど。これは、良くない事態です。ある意味、パンツイッチョマンが招いた事態。ここに集まっている男たちは、みなパンツイッチョマンに恨みを持っている連中です。前回出てきた黒牛くろうしさんのように、パンツイッチョマンに改心させられた人ばかりではありません。というか、むしろ、半裸の男に張り倒されて改心する人は元々良くなるきっかけを探していた人だと考えられます。イッチョマン・スラップでも人の性根は変えられないのでしょう。実は、放送した内容以外にもいろいろと()()()活動をしており、その結果、視聴者の方々が思っている以上に恨みを抱いている人が多いんですね。そんな中でも、視聴者の方々に説明しやすい人を挙げると……あ、この若者ですね。見たことないですか? さえない小太りの青年ですが、実のところ、私も見覚えがありません。しかし、同調シンクロしたところ、あの戸羽公園で張り倒された酔っ払いの一人だとわかります。あの時、この方は会社の同僚と花見に来ていたのですが、暴言を吐きながらの暴行だったので、「どうも集団催眠的なものに掛けられたらしい」という話は受け入れられたのですが、それでも職場の居心地が悪くなり、退職して、現在失業中の身だそうです。他にも、同じ戸羽公園の被害者がおります。そこの猿顔の男の人は、あの騒動の後、カノジョに振られたそうです。……これも、事件が直接関係したのかはわかりませんが、本人が「あいつのせいだ」と思い込めば、恨みは発生してしまうのです。……噴水広場の方での、イッチョマン・スピンの被害者もいますね。しかし、パンツイッチョマンに恨みを持った人がいたとしても、どうしてここに潜んでいるのか。まあ、ここ、という部分は、この公園が山車巡回ルート、すなわちデモ隊の予定ルートだからでしょうが、集まった理由は不可解です。それぞれが、「一発くらい殴ってやろう」と思っても、同じ場所に集まるのは不自然ですからね。というわけで、また失礼しますよー。はい、同調シンクロです。……これ、頭の中を覗いている相手の人に悪影響ないですよね? ……え? わからない。……じゃあ、そのあたりは考えないようにしましょう。悪影響あるとわかったら、使いにくくなっちゃいますもんね。…………何!? そ、それは、……怖いですね。この恨みを持った集団をまとめた黒幕は、翠丘みどりがおか大舎ひろいえ。あの、非常ベル事件の際、本物の火災事件を発生させようとしていた男です。確かにあの人も、パンツイッチョマンに恨みを持っていました。……あれ? この隠れているメンバーの中にはいませんね。……どうも、手はずだけ整えて、現場にはやってこなかったようです。完全犯罪者らしい、ずるい立ち回りです。他の方は、どうもアンチパンツイッチョマンのウェブ掲示板で知り合って、ここまでやってきたようです。それぞれ手にしているのは、木刀やら樹脂製のバットなど。これを用意したのも翠丘みどりがおからしいですね。翠丘みどりがおかは「刃物は持ってくるな」と指示していたようです。殺傷事件にまで発展すると、捜査の真剣度が増すと考えてのようですね。

>おっと、デモ隊、ついにこの公園にまで来たようです。見物人はかなり減りましたが、銀子先生も友庫さんたちもまだいますね。銀子先生は、もう見物ではなく、中に入ってカメラを色んな人に向けています。おかげでジャーナリストに間違えられているようです。


短髪の男: よし、いくぞ。あの中に奴はいる。片っ端からのしてやれ。


>藪の向こうで、中心的立場の男が呼びかけます。この男は、翠丘みどりがおかが来ていないと知ると、自分がさも翠丘みどりがおかだというふうに振る舞っています。


男たち: おー!


>いや、奇襲の前に掛け声はダメですって、と思いましたが、デモ隊も「パンツ賛成!」とか「薄着を許せ!」などとバラバラに叫んでいるので、気づいていないようです。――と、今日はここまで!

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