第九話 ブレイクスルー(4)
ナレーター(以下、「>」と表す。): 今回は複数の場所を行ったり来たりのお話になるそうです。最勝寺先生は、「一回分のつもりの話を割って、前回と今回に分けたけれど、割らないと大変な量になっていたね」と笑っていました。……どうなるのですかねえ。では、続きを見てみましょう。
>建物の中へ入った後、ノーパン刑事は珍しくサングラスを外した。残念なことに、カメラは背中から撮っているので顔は確認できないぞ。だが、驚いて振り返った後輩刑事の顔ははっきり見えるぞ。
NPD: タカ。今日の俺、女難の相が出ていねえか?
後輩刑事: え? ……いやあ、わかりません……だけど、なぜですか?
NPD: いや、立て続けに厄介そうな女と出会ったからな。……でも、まあ、今のところ、直接ぶつかることはないから、良しとするか。
>ノーパン刑事はサングラスをかけ直すと、階段を降り始める。後輩刑事はその後に続く。
後輩刑事: はあ。……次はどうします?
NPD: 上の若者たちについて、支店長をもうちょっと絞ってみるか。どういう連中か掘り下げれば、事件に関わる連中かどうかもわかるだろう。
後輩刑事: ってことは、あいつら何か怪しかったんですね?
>言外に「気付かなかったなあ」とノーパン刑事に対する敬意が現れていた。
NPD: いや。全然。
>肩透かしをくらい、思わず立ち止まる後輩刑事。
NPD: うーん。もしかすると、ここらが怪しいのは気のせいだったのかもしれねえなあ。
>散々「刑事の勘」と言い張っておいて、この急展開。なんという無責任。……と思いますが、やっぱり「勘はあやふやなものなのだなあ」と感じさせられる説得力も少しありますね。後輩刑事は意外にも、さらにズッコケ気分になるのかと思いきや、小さく溜息をつきながらも、頷きます。……ほほう、こういう展開は今回が初めてではなく、度々あるようですね。刑事の勘は常に当たるわけではない。まあ、当然と言えば当然です。
後輩刑事: 課長への借り、背負うだけになっちゃいますね。
NPD: そんなことはねえよ。怪しいかどうかを調べるのも俺たちの仕事だからな。それがたまたま怪しくなかったってわけだ。
>どことなく開き直りにも聞こえなくはないが、事実、ノーパン刑事に落ち込んでいる様子はなかった。
NPD: 問題なのは、ここで引っ掛かっちまったことで、どこかわからねえ本当の事件現場にはもう間に合わねえ、ってことだな。……でも、そうなると、アイツの勘も、あの女の読みも間違っていたことになるな……。うーん、さすがに二人も外すか? いや、俺自身も入れて三人か。……だったら、何か、見落としていることがありそうだが……。
後輩刑事: とりあえず、支店長にもう一度当たりましょう。
>しかし、結局、支店長への再度の聞き込みも不発に終わる。屋上にいた銀子先生が、本店の有力者の親族だということまでは引き出せたが、その情報を提供しただけで支店長は大いに怯えていた。
支店長: ここだけの話にしておいてくださいよ。本店に知られた日には、私は……
>この反応は二人の刑事にとっては不可解だっただろうが、視聴者の方々には納得いただけるだろう。あの養老家の情報を、他愛のない内容だとしても「警察に売った」と知られたら、どんな仕打ちが待っているか、と怯えているのです。銀子先生の叔父さん、征十郎さんは雰囲気が怖いだけでなく、実行内容も恐ろしい方のようですね。養老家については、怖いのでこれ以上踏み込まないようにしましょう。
>二人の刑事が銀行を出た時には、空はすっかり暗くなっていた。そして、夜空に、花火大会の開始を告げるスターマインが花開いた。
若い男の声: てやんでぃ!
>銀行の屋上から聞こえる掛け声。直後に笑い声が続きます。花火での掛け声と言えば、「たまやー」「かぎやー」が有名ですが、この花火大会では「てやんでぇ」が使われます。花火大会の名称に使われているからでしょうが、一瞬で数万円から数十万円が火花となって消えていくのですから、苦しい懐事情で打ち上げるのは、そりゃあヤケにもなります。だったらやらなければいい、というのは正しいですが、苦しくても華やかに散るというのが江戸っ子の粋というやつなのでしょう。
後輩刑事: 始まりましたね。
>後輩刑事が夜空を見上げる。ほどなく別の花火が夜空を彩る。一瞬遅れて届く爆発音。後輩刑事がノーパン刑事を振り返ると、三発目の花火がノーパン刑事のデカサングラスに反射して映った。この時、後輩刑事は「事件にはぶち当たらなかったけれど、平和な日常はやっぱりいいな」と思った。……いい子ですねえ。が、ノーパン刑事は、花火にはすぐに興味を失くしたようで、あたりを見回しながら歩き出す。慌てて追う、後輩刑事。
後輩刑事: どうします? 一旦、署に戻ります?
>……民間施設に立ち入ったら、報告書を作成しなくてはいけない決まりのようです。だけど、その仕事は予想どおり、後輩刑事に押し付けられているみたいですね。だからこそ、当てがないなら実務を進めようと考えるのは間違ってはいません。そのまま、立ち去っていく二人。が、数分して、ノーパン刑事が突如足を止めます。
NPD: 今の聞いたか?
後輩刑事: え? 何です?
>その直後、夜空にまた一発の花火が上がる。全国的に有名な花火大会のように、連発して上げられるのが当然ではない。むしろ、一発と一発の間に数十秒の間が空く方が普通だ。そして、光より少し遅れて届く破裂音。
後輩刑事: 花火の音以外聞こえませんが。
NPD: 一つ前の音。空に花火はなかったぞ。
>意外や意外。むしろ花火に背を向けて歩いているので興味がないと思っていましたが、いや、やっぱり興味はないのかもしれませんが、少なくとも明るく光る空として、認識はしていたようです。だが、言っている内容は不明です。花火が無くて、音だけが聞こえたと。そういう事態は起こりえるのでしょうか?
NPD: それに、地面も少し揺れたな。
後輩刑事: え? そうでしたっけ?
>この二人の場面としてよくあるように、今回も、ノーパン刑事は後輩刑事を無視して話を進める。
NPD: 戻るぞ。
>くるりと向きを変え、また苔石銀行へと向かうノーパン刑事。しかも、早足だ。例の刑事の勘とやらが何かを告げているのかもしれない。その様子に後輩刑事は顔を引き締めると後を追った。
>ここでカメラは苔石銀行の守衛室に切り替わります。時間は少しだけ巻き戻っています。ここに詰めている守衛は二人。中年の男と初老の男です。この二人も、ノーパン刑事と同じく、異変を感じていました。しかし、彼らが気を引かれたのは揺れの方で、音は花火だと考えていました。だが、彼らの懸念はスマホの着信音によって霧散します。
中年の守衛: お、新潟で地震があったみたいです。さっきの揺れはそのせいかな。
年配の守衛: 緊急速報? 俺のには入ってないぞ。
中年の守衛: ガラケーだからでしょ?
年配の守衛: もう、ガラケーじゃねえよ。何週間か前にスマホへ換えたんだから。
中年の守衛: 換えただけじゃダメですよ。ちゃんと設定しなくちゃ。
年配の守衛: 何が便利なのかねえ。面倒臭いったら、ありゃしない。
>彼らの名誉の為に言っておくが、普段は勤務中に、彼らはスマホをイジっていない。今回も近くに置いてあったスマホをちらりと確認しただけで置いている。元々は控え室で小休憩する時に触る程度だったのだが、動きのない夜勤時は控え室から持ちだして暇つぶしに利用することがあった。厳密にはサボりなのだが、それを咎める者はいなかった。
>いつもの二人なら、それでも「念の為」と巡回をしていたのだが、ノーパン刑事に促されて一緒に回ったばかりだった。それゆえ、監視カメラの映像を見て、問題なければそれ以上の行動を起こさなかった。
>だが、彼らが気付いていない異常が幾つかあった。一つは、幾つも映る防犯カメラの映像の一つが、録画モードではなく再生モードになっていた事。そのカメラは大金庫の中の映像だった。大金庫の中は普段何の変化もないので、そうして録画された映像が再生されても、当然変化はない。再生されていると気付かなければ、おかしいと気付きにくい異変だった。別のもう一つの異常は、地震速報の通知だった。それは、正しい地震速報ではなく、単なるメールだった。差出人の名が「地震速報」で、プレビュー内容だけで、「新潟で地震があった」と判断してしまったが、きちんと開いていたら、フォームから緊急通知ではなくメールだと気付いていたかもしれなかった。しかし、その重大な異変に気付かず、二人の守衛は通常どおり待機状態を維持してしまった。
>この工作をした者は、意外に近くにいた。その者は、二人の守衛の同僚だった。隙を見て、中年の守衛と交換したメールアドレスの登録内容を書き換え、自信の電話帳での表示内容を「地震速報」に変えた。防犯カメラの映像は、映像記録室に小型の機械を持ち込み、時間が来れば録画から再生へと変わる設定を施していた。そこまでして、今日非番の彼が果たそうとしていた目的は……そう、金庫破りである。
>ここでもう一人の人物を紹介しておこう。正確には、付随して他にも登場するのだが、スポットライトを当てるのはそのうちの紅一点。瓜爪朱火さんだ。彼女は自身の事を「世が世なら、私は英雄だった」と思っている。まあ、そういう自意識過剰な人はそこそこいるのかもしれませんが、朱火さんは実力も兼ね備えていた。厄介なことに、その実力はどちらかというと反社会的な方向を向いていた。彼女の生き方を変えたのは、あの「あさま山荘事件」だった。子供の頃、その事件についての特集をテレビで見た朱火は、妙な感化を受けてしまう。――え? これ以上は深堀りするな? ……はい、じゃあ、飛ばしましょう。ともかく、目的を持って生きることとなった朱火は、多くの知識や技術を率先して身に着けていった。そして、時折、頃合いを見計らってはその知識や技術が世に通じるのかを試し、逃げて、隠れた。日本の警察および公安も無能ではないので、朱火の危険性を見抜きマークするようになっていた。しかし、朱火が悲しんだ、時代から革命の空気が失われた影響は、法の番人側にも及び、予算と人員が削られる中、朱火の行動は網を抜け、その姿は度々捕捉されなくなった。その女性が、今、苔石銀行の枚鴨支店の地下へと潜んでいたのだった。
>花火が弾ける音に交じって、苔石銀行の金庫の床が爆発によって吹き上がった。武器密輸商人のリチャードから流れてきたプラスチック爆弾による爆破だった。床の穴は小さかったが、その後下から突かれて、ひび割れた部分が崩落する。それで人が通れるだけの余地が生まれた。そこから、二人の人が金庫内へと侵入する。
朱火: よし、ツヴァイ。メールを送れ。
>侵入した一人である朱火が、もう一人の若い男の侵入者へと指示を出す。その男はスマホを触り、準備していた偽地震速報を送信した。そう、この男こそが、銀行内に幾つかの仕掛けを施していた、内部の協力者だ。
ツヴァイ: 完了。
>手早く報告を終え、スマホをポケットに収納すると、二人は持ち込んだ器械で、大金庫内の金庫を開けていく。――あ、これも描写はダメ? そうですね、良い子が学ぶべきことではございません。えーと、では、結果だけをお伝えしますね。二人は、手にした金品を穴の中へ放り込んでいきます。その中では、待っていたもう一人の男が、荷物を外へと運んでいきます。外と言っても、侵入経路の外までです。そこには、スーパーで使うカートが置かれ、その上下に積まれたカゴへ盗品を収納していくのです。
>では、ここでノーパン刑事たちへカメラを戻しましょう。ノーパン刑事は、苔石銀行へ至らず、隣の建物の前で立ち止まった。
NPD: ここは?
>そこは、改装中の飲食店だった。シャッターが下りており、一台の商用バンが店先のレンガタイルのスペースに停まっていた。
後輩刑事: あ、ここですね。警備員たちが言っていた定食屋って。
>前回、かなり駆け足をして放送したせいで、飛ばした部分の話をしちゃいましたね。あの時は、他愛もない話だと流しました。もちろん、こうして後から掘り返されるとは思ってもいませんでした。えーと、確か、一通り銀行内の巡回を終えた後、最近変わったことは起きなかったか、という質問に対して、警備員の一人が「隣の定食屋が閉店しちゃいまして、馴染みにしていたのに残念です」とか答えていました。それに対して、ノーパン刑事が「売りはなんだった?」と聞いて、「ビーフコロッケです」と……。ね? 省略しても構わなそうな他愛もないやりとりでしょう?
>そういったやり取りを忘れてしまった可能性があるノーパン刑事は、レンガタイルに踏み入ると、ゆっくりを周囲を見回す。
NPD: ……臭うな。
>「本当かよ!?」と思いますが、事実、後輩刑事は「また、始まった」と言いそうな顔をしています。その時、ノーパン刑事は、シャッターに張られている掲示を指差す。
NPD: 見てみろ。
後輩刑事: はい。……店舗改装のお知らせ。開店は明日みたいですね。
NPD: 臭い。
>言われて後輩刑事は鼻をひくひくさせた。もちろん、実際に臭いと言われたのではなく、怪しいという表現だとわかっているようですが、すぐに怪しい部分に気付かなかったので、せめて鼻をひくひくさせたようです。その行動は、ノーパン刑事には、「よくわかりません」というような回答として解釈される。
NPD: お前が、この店で商売しようとしていたら、どうする? せっかくの花火大会に合わせて開店しようと思わないか? たった一日だぞ。なんとか早めようとするもんじゃねえか?
>……確かに、一理ありますね。あいにく、この辺りに人の流れはほとんどありませんが、それは今だけかもしれません。花火が終わって、「少し遅いけれど夕食にしようか」となった時に、近隣の店は当然として、少し離れたここにもお客さんが流れてくる可能性はかなり高いでしょう。
後輩刑事: 確かにそうですけれど、……ガスの手配が間に合わなかったとかじゃないですか?
>さすがは刑事。すぐに、それらしい可能性を考え付いてくれました。公共サービスは市民を平等に扱ってくれるがゆえに、こういう気の回し方はしてくれません。追加料金を払ってもいいから早くして、という要望にも、不正行為にあたるので応じてくれません。警察も公務員だから似た思想なのかもしれませんね。
NPD : シャッター、少し開いているな。
>相変わらず、他人の意見は耳に入っているのかどうだかわからないノーパン刑事。次に興味を持った対象に近づいていきます。指摘したとおり、シャッターの下は十センチほどの隙間が開いていました。だけど、そこから光は漏れてきていません。中で作業をしているなら、照明が点いていてもおかしくないのですが……確かに、ノーパン刑事の言うように、少し変ですね。
後輩刑事: ちょっと、アニキ! あ、ダメですよ。警察でも不法侵入になりますから。
>ノーパン刑事は、後輩刑事の言うことなど気にする素振りもなく、むしろ肩に担いでいたジャケットを後輩刑事に押し付けると、両手をシャッターに掛ける。
後輩刑事: いや、だから、ダメですって!
NPD: 大丈夫だよ。ちょっと聞き込みをするだけだ。
>そう言いつつ、ノーパン刑事はシャッターをノックして中の人が出てくるのを促すこともせず、むしろ音をたてないようにゆっくりとシャッターを上げていく。シャッターの向こうに現れたのは、中央部に片開きの扉のある、一般家庭用にも使える建物だった。シャッターは半ばで止められると、ノーパン刑事は引き戸の取っ手へ手を掛ける。
NPD: 鍵は掛かっていないな。……おじゃまします。
>一応、挨拶をしたような体をとっていたが、その声は後輩刑事が聞こえるだけの小さいものだった。後輩刑事はため息を付くと、周りを見渡して、誰も見ていないのを確認してから、自分もシャッターを潜るべく、腰を屈めた。
>建物の中はやはり暗かった。入ってすぐ、シャッターを下ろしたので、外の街灯の明かりも入って来ない。明かりがないと、普通は暗くて何がなんだが見えないでしょう。しかし、こちらは高性能の観察システムがあるので問題ありません。画像修正をちょいちょいとすれば、ほら、輪郭がはっきりしてきますね。さすがに元の色まではわからないですけれど、入ってすぐの左手が会計用のいわゆるレジにあたるのがわかります。正面はすぐに壁に突き当たり、右に折れて続くのは待ち合わせスペースですかね。壁沿いに低いソファが並んでいます。おっと、ノーパン刑事もデカサングラスを外して、見えているようですね。ポケットから細い懐中電灯を出した後輩刑事の動きも把握しており、その手に触れて明かりを点けないように指示します。それから、持たせていたジャケットをまた肩にかけ直します。
NPD: お前は、これに掴まって付いて来い。
>素直に従う後輩刑事。金魚のフンと署内で陰口を叩かれるだけあります。しかし、この悪口は本人ちっとも悪いと思っていないので、イジメる効果はありません。……今は関係ないですね。
>ノーパン刑事は、道なりに進み、待ち合わせスペースを左に折れると、そこから先は客席ゾーンとなっていました。が、テーブルとイスはぞんざいに脇に寄せられ、真ん中には部屋を斜めに横切るように広い道が作られ、奥へと続いています。
NPD: これは、明日、開店する気はなさそうだな。
後輩刑事: え? 何が起きているんですか? さっぱり見えませんよ。
NPD: しゃあねえなあ。ほら、そこ。かがんで触ってみろ。
>軽く手を引かれて、脇に寄せられているテーブルセットへ誘われる後輩刑事。そこで手を離されて、自分で調べてみろ、と促されますが、後輩刑事はおっかなびっくりで手を暗闇に伸ばします。……あ、これは、アレだ。「箱の中身はなんだろな?」ゲームみたいですね。が、もちろん、後輩刑事の手に触れた物は、タワシやトカゲや、ましてペロリと舐めてくるおじさんでもなく、普通の背もたれつきの椅子とテーブルなので、ちょっと怯えていた自分をごまかそうとしているのか、後輩刑事は無駄に胸を張ります。
後輩刑事: なんだ。イスとテーブルじゃないですか。
NPD: 物が何かを当てているんじゃねえんだ。どう置かれているかも考えろ。開店前なのに、整列させていないのはおかしいだろ。
後輩刑事: た、確かに。
>これは後輩刑事の勘が悪いだけではない。視覚情報として全体を確認しているノーパン刑事と、触覚から得られた情報を脳内で構築しないといけない後輩刑事では、理解力に違いがあるのは当然だ。視聴者の皆様も、脳内構築活劇をご覧になっているので、その大変さは良く理解していただけるでしょう。
NPD: ん? 何だ、あれは? 土砂か?
>え!? この暗さでそこまで見えるの? ノーパン刑事の視力はバケモノか! ちょっと、この観察システムでは暗視モードだとピントが合いづらいですね。奥の映像をお願いします。……はいはい。テーブルや椅子の向こう側にこんもりとあるやつですね。お、近くに、一輪車も横たわっていますね。
NPD: そうか。奴ら、穴を掘って……。現場は隣というより、むしろこっちだったのか!
>その時、奥から物音が近づいてきました。まず、奥の廊下の明かりが点きます。
NPD: タカ、隠れてろ。
>素直に素早く指示に従い、テーブル類の陰にうずくまる後輩刑事。ノーパン刑事は、部屋の中央に作られた道の反対側へと移動し、そこで身を潜める。ほどなく奥から出てきたのは、カートを押している長身の黒装束の男。そう、自称「遅れてきた革命家」の朱火が指揮している金庫破りの侵入経路はこの隣のお店から伸びていたのです。カートの男は、広間に入るとそこの明かりを点けます。そして、刑事が二人潜んでいるとも知らずに、呑気に口笛を吹きながら、カートを押して出入り口へと進んでいきます。……お、この曲は、映画『明日に向かって撃て』のテーマ曲『雨にぬれても』ですね。なかなか立場に合った選曲ですね。――と、感心している場合ではなく、そろそろカートの男が刑事たちの横を通ります。通り過ぎた途端、立ち上がって、いとも簡単にカートの男の片腕を捩り上げるノーパン刑事。不法侵入している上にこれが善良な一市民だったらどうしようという心配はないのでしょうか? というか、いつの間にかジャケットを着てデカサングラスも掛け直しています。暗くてわからなかった素顔が、白日――じゃなくて電灯の下に晒されるかと少し期待していましたが、まあ、明るくなったら普通掛け直しますよね。
NPD: おっと、何を運んでいるんだ?
カートの男: いてて! な、何者だ、貴様ら……。
>カートの男が捩り上げられているのは片腕ですが、もう片腕で反撃することはできません。なぜなら、上半身を折り曲げてカートに押し付けられているからです。そのままだとカートが動いてしまいますが、そこは同じく立ち上がった後輩刑事がちゃんと保持しています。恐るべき連係プレイ。
NPD: おいおい、質問に質問で返すなよ。先のそちらが答えろ。……まあ、聞かなくてもわかるがな。花火の音に紛れて爆破銀行強盗か、恐れ入るぜ。
>ハッと息を呑むカートの男。見透かされたという驚きだろう。が、冷静に第三者視線から見ていると、踏み込まれている時点でもうバレていると覚悟しておけよ、と思いますよね。だけど、驚いている時の思考って、誰しもこういうものだと思いますよ。
後輩刑事: 警察だ。大人しくお縄に付きやがれ。
>カートの男からの質問には、結局、後輩刑事が答えました。でも今の、最後の部分は、ちょっと時代劇っぽい口調になっていましたね。もしかすると時代劇が好きなのかもしれません。
カートの男: サツだ!!
>押さえつけて暴れるのは封じても、叫ぶのは止められません。「何だって?」と返って来る女性の叫び声。意外に近い。廊下の向こうにいるようです。
NPD: ちっ。確保!
>そう言うと、ノーパン刑事はカートの男を一旦引き起こして、横に突き倒す。しかし、長身のカートの男は踏みとどまって倒れなかった。それどころか、近くにいる後輩刑事に掴みかかる。だが、ノーパン刑事はそちらを見ずに、廊下へと目を向ける。ジャケットの両ポケットに手を突っ込み、おそらく今日もそこにあるパチンコ玉を握っている。
>奥から出てくる、がっしりした体つきのサスペンダー姿の女。そう、髪を後ろに束ねたこの女性こそ、知る人ぞ知るテロリスト瓜爪朱火だ。
NPD: 警察だ。抵抗は――
>ノーパン刑事が言い終える前に、朱火が片手を上げた。そこに持っていた銃が火を噴く。
# パパパパパン!
>連発式。一般に機関銃と言われる銃器だ。ただし、彼女の持っているものは分類上はサブマシンガンと呼ばれる小火器だった。戦場の兵器で考えると、その名のとおり補助的な役目を受け持つ銃だが、拳銃さえ珍しい日本においては、非常に攻撃性の高い武器と言える。
NPD: くそっ!
>ここでまた、場面が変わります。ごめんなさいね。次のカメラさんは……屋上ですね。銀子先生と仲間たちの場面です。隣の建物で起きた銃声は、この屋上にも聞こえていました。みんなが「あれ?」という顔をしますが、すぐに気にしない表情に戻ります。ただ一人、銀子先生を除いて。
お銀: ねえ、リッキー。今のって……銃声じゃない?
リッキー: え? まさか! どうせどこかのバカが、打ち上げ花火に対抗してネズミ花火に火を点けただけだろ。 銃声ってもっと、バッキューンって感じじゃん。
>銀子先生は少しムッとした。彼女はリッキーの明るい性格は好きだった。花火が上がった時に「てやんでぃ」と叫んだのはリッキーで、それはみんなに受けたが、実際にそう叫ぶには勇気が必要だと思っていた。――そういえば、実際、花火大会で「たまや~」とか「かぎや~」とか叫んだ人を、皆さんは見たり聞いたりしたことはありますか? 私はありません。それと同じで、資料としては「『枚鴨てやんでぇ花火大会』では「てやんでぇ」という呼び声があがる」とありますが、実際にする人は少ないのでしょう。あ、すみません。銀子先生の思考の途中でしたね。戻りますね。――だけど、銀子先生は物事を重く考えないという点においてはリッキーに問題ありと見なすようになっていた。忙しいからと言って、デートの機会が月に一回に落ちている理由もこの性格にあるのかもしれない、と銀子先生は考えていた。
お銀: ううん。実際の銃声って、思っていたのより軽いよ。映画の銃声とかは演出なんだと思う。
リッキー: え? ギン、お前、銃声って生で聞いたことあるの?
お銀: ……うん。
>結婚式場での一件は、恋人であろうとリッキーには伝えていなかった。養老家に関わる内容だからだ。養老一族として、この手の話は許可が下りないと話すべきではないと、身に沁みついて理解していた。すると、リッキーはパンパンと手を叩いた。
リッキー: 注目~! ギンがさ、銃撃戦の現場に立ち会ったっていうんだよ。ウケるよねー。
>また銀子先生の頬が少し膨れた。冗談だと思っているのか。もし、本気だと思っていてその軽さだとよりタチが悪い。銀子先生はそう怒っていた。
お銀: 話したくない。
>憮然とそう言う銀子先生に、集まった視線にシラケが漂う。普通の人ならこの空気は嫌なものだが、銀子先生はちっとも気にならないようだ。一人一人と視線が外れていき、リッキーも「つまんねえの」と言いたげに鼻を鳴らしてから、缶ビールをあおった。最後まで銀子先生を見つめていたのは隣にいる女性だった。その女性が、恐る恐る口を開く。
若い女性A: で、でも、もし、あれが本当の銃声で、銀行強盗とか始まっていたら、私たち、危なくない?
>その発言に、また視線が集まる。発言した女性へ集まった視線は、彼女が見つめる銀子先生へと自然と流れる。すると、銀子先生は微笑みを浮かべた。
お銀: 大丈夫よ。そうなったら、きっと助けてくれる人が現れるから。
>嬉しそうに語る彼女に脳裏に浮かんだのは、あの黒パンツの股間――じゃなくて、いや、そうかもしれないけれど、なんというか、表現上はパンツイッチョマンだった、でいいよね。うん。……しかし、あいにく、銀子先生が、そしてもしかすると一部の視聴者が登場を期待しているパンツイッチョマンの反応は近くになかったのであった。
>そして、また苔石銀行の隣にある閉店中の飲食店の中へと場面は戻ります。ふう、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、今回は忙しいですね。
>サブマシンガンで撃たれたノーパン刑事。しかし、ノーパン刑事は銃口が向けられる前に、もう回避行動に入っていた。ゆえに、銃弾は人には当たらず、壁に弾痕を残す。……この、「危ない」と思わせてシーンが変わって、戻ってきたら別に平気って、なんかCM跨ぎの演出みたいですね。
NPD: タカ、伏せろ!
>あ、そういえば、後輩刑事はカートを引いていた男と格闘していた――って、見てみたら、もう勝負は着いていました。後輩刑事は自分より背の高い男を組み伏せて、後ろ手に手錠をかけているところでした。意外に、格闘術に秀でていたようです。首を竦めながらも、最後にカチリとしっかりロックをしてから、転がるようにしてテーブルの陰に隠れる後輩刑事。その時には、ノーパン刑事は前にあるテーブルを倒し、防御壁を作っていた。それを見て、後輩刑事もすぐに防御壁を作る。朱火は、無駄撃ちせず、射撃を一旦止めると、テーブルの陰に逃げ込んだ後輩刑事を追うように銃口を向け、そこでノーパン刑事の方で大きな音がしたので、そちらに銃を向け、テーブルを倒されたと知るとここでも無駄撃ちをせず、また音に釣られて後輩刑事へと銃を向けて、両方がバリケードの向こうに隠れたと理解し、ニヤリと笑った。……朱火さんには同調できますが、「へえ、やるじゃない」と感心したようです。
カートを引いていた男: た、助けてくれ!
>うつぶせに倒されて、後ろ手に倒された男は、唯一自由に動かせる両足をバタバタと動かした。朱火の片眉が吊り上がり、銃口がそちらへ向けられる。が、そこで数秒止まった後、トリガーから指が離れると、そこに沿うように人差し指は真っすぐ伸ばされる。――あ、これはヤバいですね。撃つ瞬間じゃないとトリガーに指を掛けないという動きは本場のものです。映画やドラマではよくトリガーに指を掛けっぱなしにしていますが、あれって間違って発砲しかねない状態だから、誤射を防ぐため、むしろ間違っている行動です。みなさんも銃を扱う際には気をつけてくださいね。……ていうか、そういう状況にならない方が良いと思います。
朱火: ツヴァイ! 次のを押して来な。突っ切るよ。
>後方にそう呼びかけるのを聞いて、両手で「ヤバイですよ」とジェスチャーを送る後輩刑事。ノーパン刑事は物陰から顔を出して、銃口がこちらを向いたのですぐにひっこめた。しかし、容赦なく銃弾がそこへと放たれる。
# パパパパパン!
後輩刑事: ま、待て! 警官殺しは重罪だぞ!
>本当は警官であろうと市民であろうと殺人は殺人だ。だが、警察官として同僚を殺された方が執念深くなってしまうのは人として仕方がない。
朱火: はっ。そんなのが怖けりゃ、最初からこんな物、持っていないよ。
>これは後輩刑事の負けだ。覚悟の座っている相手に、殺人の重さを説いたところで止められない。その隙をついて、ノーパン刑事が片手を出して、指弾を放つ。が、それは朱火にかすりもしなかった。しかし、壁に当たった音で攻撃されたのはわかった。
# パパパン! パパパパパッ!!
>銃口がノーパン刑事の隠れているテーブルに穴を空けていく。テーブルの後ろには、椅子もできるだけ寝かせてバリケードにつかっていたので、ノーパン刑事に今のところケガはない。しかし、楽観できる状況ではない。一マガジン打ち尽くしたのか、朱火は空マガジンを捨てて新しいマガジンを装填する。ゲームなどではここが反撃のチャンスなのだろうが、実際上は、床に伏せて弾を避けていたノーパン刑事にその短い時間を活かす余裕はなかった。
朱火: おい、ドライ。立てるか? 立てるなら、立って、それを外へ運びな。
>指示されて、床に転がっていた男がもがきながら立ち上がろうとする。その男越しに、後輩刑事がノーパン刑事へと小さな声を掛ける。
後輩刑事: マズいッスよ。これ、刑事ドラマなら、殉職しかねないパターンッス。
ノーパン刑事: いや、それはねえな。少なくとも俺は。
>小さく笑ってそう答えたノーパン刑事に、後輩刑事は手振りで「なぜ」と聞く。
ノーパン刑事: ドラマだったら、主人公の俺がここで死ぬはずがない。これが最終回なら別だが、最終回だったらもっと華々しい場所になるはずだ。
後輩刑事: じゃあ、俺は死んじゃって、アニキが復讐に燃えるってパターンじゃないッスか!?
朱火: 何、ごちゃごちゃ、喋ってるんだい! 武器を捨てて、とっととそこから出てきな! おとなしくしてりゃ、殺さずに済むかもしれないよ。そいつのワッパを外して、自分たちに掛けな。
# パパパン!
>また威嚇射撃だ。後輩刑事が溜息をついた。
後輩刑事: 花火大会じゃなけりゃ、銃声で通報いくのになあ。
NPD: それが、今日を選んだ理由だよ。
朱火: 十秒で決めな。さもなきゃこっちから行って、仕留めてやるからね。もう一人も同じ武器があるんだよ。
# パパパン!
>後ろから現れたカートを押してきた男も片手にサブマシンガンを持っていた。これも実弾装填済みなのは先程の射撃で証明済みだ。これらの武器もまた、武器密輸商人のリチャードから流れてきた物だった。
NPD: 安心しろ。これは刑事ドラマでもないし。何より、俺の目が黒いうちには、お前をみすみすやらせはしねえよ。
>ノーパン刑事の呟きを後輩刑事は聞こえなかった。指示を聞き落したのかと確認を取ろうとする。
後輩刑事: え、何ッスか?
>しかし、ノーパン刑事はそちらには答えずに、朱火へと答える。
NPD: 三十秒だ。それくらい待て。十秒では何もできない。
朱火: ……いいだろう。余計な真似はするなよ。……ドライ、とっととしな!
>最後の部分は、まだモソモソして立ち上がれない男への叱咤だ。
NPD: ……なんとなく、か。やってみるか。
>ノーパン刑事はそう呟くと、こちらもモソモソと動き始める。それを横で見ている後輩刑事が何事かと声を掛ける。
後輩刑事: アニキ、何やってるんですか?
NPD: 見りゃあわかるだろ……ベルト、外してるんだよ。
>バリケードに隠れたままなので、腰をくねらせたり、少し跳ねたりしながら、窮屈そうだ。しかし、その作業は着々と進んでいく。
後輩刑事: いや、そうじゃなくて。何の目的で――って、なんで、パンツはいてないですか!? すっぽんぽんじゃないッスか!!
>思わず声量が大きくなったが、何を言っていたのかは朱火にはわからなかった。
朱火: ん? 何だ? 準備できたのか? だったら、ゆっくり出て来い。
NPD: はー、スッキリする。確かに、何となくそうなるだろうとは思っていたが、いざやってみると段違いの爽快感だな。これだったら、いつも以上の力が出せるぜ。
>ニヤリと笑ったノーパン刑事に、後輩刑事の顔にも笑顔が戻る。後輩刑事は「アニキはやる時にはやる男だ」と信じていたし、その時の余裕のある顔を今まで何度も見てきた。今も、その時だと確信していた。
朱火: 何、ちんたらしてるんだい? もうとっくに三十秒は過ぎてるぞ。
後輩刑事: 待ってろ、今からアニキが丸腰で出て行く!
>言われてすぐ、ノーパン刑事がゆっくり立ち上げる。幸い、下半身はテーブルバリケードで隠れている。両手もジャケットポケットに隠れていた。
朱火: おいおい、ワッパを掛けているんじゃなかったのか? それに両手に何を持っている。ゆっくりと出せ。
>ノーパン刑事は言われたとおり、ゆっくりと両手を出した。それは少し離れた銃を持った二人からは緩く握られた拳にしか見えなかった。その直後、ノーパン刑事はサイドステップして、物陰から飛び出し、中央の開けた道へと躍り出る。
# パパパン!
>急激な行動に反応して、ツヴァイと呼ばれた男が銃を撃った。しかし、その銃口は跳ね上がり、続く手首への痛みにサブマシンガンを取り落としてしまう。同時に、朱火もまたノーパン刑事の動きに反応したが、認識能力が高かったゆえに、ノーパン刑事の異常な格好に一瞬思考が停止してしまった。ちなみに、視聴者の皆さんには、朱火の見ていた情景は写されていないぞ。見えているのはノーパン刑事の後ろ姿。すなわち、見えているのはケツだ!
朱火: な、な――
>混乱する彼女がトリガーを引く時間はもうなかった。目にも止まらない一撃が指を強かに撃った。続く一撃を朱火はほとんど無意識に、サブマシンガンを立てて防御した。
# チュィィン
>金属が打ち当たり鳴る高い音。同時に放たれていた一撃が、ツヴァイの喉に突き刺さる。
ツヴァイ: ガハッ!
>咳き込み、前のめりに倒れるツヴァイ。朱火は何が起きているのか理解できなかったが、体が反応した。ツヴァイが運んできていたカートの後ろへ身を隠す。
朱火: 銃? いや、音がしない。新型のサイレンサー……いや、そもそも、そんな物を持っていなかった。それより、あいつは……
>同調できても表現できないモノを想像し、関係ないと頭を振る朱火。その時、人差し指に激痛が走る。骨が折れている。いや、折られたのだ、と思った。
朱火: くそ、ツヴァイ?
>そちらを見るが、むせていて応答できる状態ではない。後輩刑事が走り、ツヴァイが放り出していたサブマシンガンを拾った。朱火はそれが見えていなかったが、音からだいたいは予想した。
朱火: くそ、何が起きているんだ?
>無事な方の手でサブマシンガンを持ち直すが、利き手ではないと狙えない。朱火はブーツから短刀を抜いた。折れた指を伸ばして使えなくはない。その時、ブーツの近くに光る銀色の玉を見つける。
朱火: パチンコ玉?
>そう、ノーパン刑事からの見えない攻撃は、全てパチンコ玉を指で弾いた攻撃だった。いつもの隠れノーパンではなく、下半身を丸出しにした真のノーパンは彼の潜在能力を引き出したのだ。今のノーパン刑事はもはやただのノーパン刑事ではない。ノーパン刑事タイプFだ!
後輩刑事: 今度はそちらが投降する番だ。
朱火: はっ。日本の警察が、銃を人に向けて撃てるのかい?
後輩刑事: ああ、撃てるぞ。もう正当防衛の素地は整っているからな。
>朱火は唾を呑んだ。それなりに修羅場をくぐってきた身なので、相手が本気なのはわかっている。
朱火: くそっ。わかった。降参だ。
>銃と短刀を置くと、朱火は両手を上げて立ち上がった。
>こうして、枚鴨てやんでぇ花火大会の裏で行われようとしていた、金庫破りの犯人はノーパン刑事たちの手で逮捕されたのであった。投稿時間が押したから、おざなりに終わっているわけではないぞ、たぶん。
>次こそは、おそらくパンツイッチョマンの出番ですよね、最勝寺先生? そうじゃないと、タイトルを冠している意味がないですからね。それでは、また来週~~。




