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異世界でも強いだけでリア充出来る訳じゃない  作者: 脱力呼吸法
第2章 赤の迷宮と骸骨達の騒乱
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外伝・始まりの地、始まりの年2

外伝其の二。

 どうやら自分は黄泉路に迷い込んだらしい。

 ゴブリンから無事に逃げおおせたあの時から、どれほど時間が経過しただろうか。日はもうほとんど隠れ、鬱蒼とした木々の隙間を伝う僅かな薄明りだけが、いやに湿り気のあるこの場所を一層不気味な地へと変化させている。

「えらく薄気味悪い場所だな」

 こうなってくると手に下げた太刀がこの上なく頼もしいものに思えてくる。何ともなしに刀身を木漏れ日にかざす。深い蒼を宿した刀身には、先程のゴブリンの血が半渇きの状態で付着していた。

 

 もうじき日が暮れる。火の準備もなく、かといって別段戦闘力に優れているわけでもない霧崎には身を守る術など存在しない。しばらく前の大蛇討伐は、まずもってまぐれ、偶然の産物にすぎないのは今日のゴブリンとの立ち合いを鑑みれば明らかなことだった。

 剣の技術もなく、さりとて度胸もなく、腕力体格に優れるでもない。そんな状態で見知らぬ地に放り出されてどうやって生き抜けと言うのか。やはり、脆弱なる現代人が異世界に転移する際にはチート能力を与えるなり、王国という文明の地に勇者という庇護身分を持って転移する必要があるということだろう。

 

 俺の転移はあまりにも突然すぎたし、地理的な条件も悪すぎる。せめてここは異世界を解説してくれる美少女をつけるべきだろ神様(よくわからないちから)

 などと三日間に薄々感じてはいたが洩らさないでいた不満が実体化する様では相当に霧崎も弱っているということだ。

 結論付けるならばこういうことだろう。霧崎九郎の異世界転移には、あまりにも希望がなさすぎた。


 

 

 勇者ジギント・エが斬られた。その噂がトゥルン山脈に蔓延るゴブリン十一士族の集落全体を駆け回るのにさして時間は必要なかった。お世辞にも普段から仲がいいとは言えない十一士族中に、勇者敗北の噂が広まったのは、そのことがゴブリン達にとってあまりにも衝撃的な噂だったからに他ならない。

 勇者は代々十一人で、各部族からもっとも優れた戦士が選ばれることになっている。この伝統はかつて、神代の時代にトゥルン山脈全体で暴を奮ったかの鋼竜を討伐したという故事に習ったものだ。この未曾有の危機にさしもの十一士族達も連携し、手に手に武器を携えて三日三晩の激闘のすえに多大な犠牲を払いながらも鋼竜を討伐したというのが伝わるところで、その神代の激戦の際、十一士族の旗印になったのが最も優れし十一人の勇者という訳である。

 まあその話はさておいて、ゴブリン達の最高戦力=十一勇者という認識は勇者制度発足の時から今まで揺ぎ無いものだったし、事実その通りである。

 その一人が正体不明の何者かに斬られたとあれば、これはもう一大事であった。例えるならば、ゴブリン達の現状は、人里に人食い樋熊が現れたけど姿が見えないっぽいぜ、うわーーー!!と、こう伝えれば把握が容易になると思う。

 とにかく、未曾有の緊急事態に十一士族全体が蜂の巣を突いたような大騒ぎになっている頃、今のところただ一人の当事者であるジギント・エは酷く後悔していた。

 なぜ、あんな嘘を付いてしまったのか。自問し後悔するところは其の処である。

 身長は二メートルデ、全身が熊ノ剛毛に覆われテいテ、手から「竜の爪」ヨりも切れ味鋭イ長牙を生やしていた。

 何を馬鹿なことをと、普段の仲間たちなら一笑し蹴り飛ばすところだろうが、しかし、同時にジギント・エの左腰から右胸に抜ける傷跡がその戯言に異様な真実味を持たせていた。

 だって、仮にも勇者が空腹の痩せ猫のように細った餓鬼に斬られました言えるわけないじゃないの。とまあ、彼には彼の守るべき立場というものが存在するわけでやはり、ゴブリン史上稀なる強敵と戦って敗けたということにしなければ面子が立たないというのもある。

 とは言えども、やはりそこには罪悪感というものが存在する。

 そこで彼は洞窟に住まう師匠様にお伺いを立てるために起き上がった。あれから三日、ソウコンバンの葉で閉じた傷はもうほとんど塞がっている。彼にとっての最優先は、傷つけるられた名誉の回復だった。

情けない主人公である。が強くなっていく過程を描くのがこの話になる予定w

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