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異世界でも強いだけでリア充出来る訳じゃない  作者: 脱力呼吸法
第2章 赤の迷宮と骸骨達の騒乱
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道場破り2

弟文章上手すぎぃ。「骸骨の処刑人」というダークな小説を弟が書いているんですが、びっくりした。それと同時に割と絶望しました。

 「五行五派とは、トゥルン王国一帯に広く伝播している剣術流派のことです」

 道場からも、庭園からも離れた一室で老人は最初にそう切り出した。霧崎は黙して老人の双眸をを見つめる。使い古され、殆ど視力を失ったであろうその目には、僅かの動揺も見られず老人が嘘を付いているわけではなさそうだ。

「その古くは魔物から身を守るために作られた土着の剣術であり、剣祖エルトリアによって編纂され今日の原型が出来たと言われております」

 黙聴する霧崎を前に老人は続ける。

「エルトリアの残した伝書は五つあり、それらは五人の直弟子達によって引き継がれました」

「ソれは何年ぐラい前のことですか?」

 周辺に伝わったという事は、新しい出来事ではないと霧崎は睨んむ。剣術の流派が一つしかないという事はあり得ない事だろうし、浸透するにあたって各流派との縄張り争いが確実に存在したはずである。

「約80年前のことです」

言ってから、ずず、と音を立てて老人は冷めた茶をは啜った。霧崎の予想に反して老人の返答した年は早かった。

「確かに伝播が早すぎると、私も思います」

霧崎が今抱いたのと同様の疑問を、老人は想定したことがあったのだろう。


「…強かったんですよ」

暫くの静寂の後にポツリとしわがれた声が落ちた。

「単純に剣祖エルトリアが強かったんです。そうですね、この国には八魔剣という剣士選定制度が存在します」

「それは、…トーレルとカですカ?」

「いえ、トーレル様は八魔剣ではありませんね。八魔剣は魔剣の中の魔剣です。トーレル様のなお上を行きます」

「あレの上があるノか……」

老人の言葉に嘘偽りはないと見て、苦笑いが霧崎の顔に刻まれる。老人もつられて微笑した。

「剣祖エルトリアは当時に八魔剣二人と決闘してこれを破っています。…つまり在野の剣士としては最強でした。そして彼はそのことを証明し続けた。強さを隠そうとしなかった」

挑戦者を片っ端から撃破し続けた、とそこで老人は言葉を切って茶をすすり息を整える。

「彼は各地を流浪して五行五派を伝え続けました。いえ、順序が逆ですね。放浪した年代の違いによって地域ごとに教えが異なり、その後に五行五派として連携するようになっと言うべきでしょう」

「はイ、」

なるほど、と霧崎は顎を縦に振った。それで五行五派というのか。しかし、

「ヨく五派に収まりマしたネ」

 それだけ、広域に伝わったのであれば某覚者の教えを集める会のように諸説入り乱れたすえに解散となってもおかしく無かったと言うのに。

 ええ、ですからと老人は続ける。

「今も、年に一度、各剣派が一堂に会する集会が開かれています。中々に修羅場ですよ?模擬試合でも2、3人死ぬこともある」

 それは重苦しい言葉だった。少なくとも笑顔で話す老人の裏側には、殺気にも似た陰りが潜んでいるように見えた。ひょっとしたら、愛弟子を試合で失っているという事も十分に考えられることだ。

 

 風が表の庭を通り抜ける。かさかさと鳴る葉擦れが、蝉の求愛の歌を七色に彩る。窓から霧崎に伸ばされた緑枝の影はいつの間にそに位置を大きく変えていた。

 

 「…それで話は戻りますが、死に際にあの双剣の男が彼方に何か言いませんでしたか?」

 話を切り出すタイミングとしてはこの上ない頃だったと思う。

「そうデすね……」

 霧崎は出来るだけこの老爺の質問に誠実に答えようと、記憶を探る。

「あノ男は、あなたの事ヲ卑劣だと。そうして五行五派の話に繋がルのですが」

 今のところはよくわからない。話の脈絡が掴めない。五行五派の派閥争いからの刺客ということも考えられるが、弟子たちの稽古を見た限りでは一刀を用いる技はあっても二刀で戦う術技は練習していなかったと憶えている。だが、他の派閥では二刀を用いるということも充分に考えられるし、もしかすると一刀を修練し続けたその次の段階として二刀の技が存在するということも考えられる。しかし、目の前の老人が二刀を持っていないことから後者の予測はあまりあてにならない。

「そレ以外は無いでス」

「そうですか、いえ成る程判りました」

 そう、一人合点されても霧崎にはなんのことやら分からない。

「卑劣とハ、どういウことで?」

「ものの見方の問題です」

 きっぱりと老人は快答して会話の全てを断ち切った。

「もう日も暮れます。私はこれから稽古がある。彼方も帰られたほうがよいでしょう」

 硬直した老人の言葉に霧崎は首を縦に振った。

「今日は御馳走様デした。良い酒が手に入っタら、持ってきます」

「それは楽しみだ」

 門まで見送られて、五歩ほど歩いたところで霧崎ははたと振り向いて、頭を下げた。視界の上では老人が霧崎に礼を送っていた。




とある通信履歴、某日某所。

 もしもシ、ヤフタレク、霧崎だ。今どうだ?忙しい?迷宮探索の途中カ。失礼した。後デもう一度、かけ直すわ。

 おウ、はイ。了解。んじゃア。

 ……こンど手伝えって?オう、・・・。考えとく。幸運を祈ル。

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