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異世界でも強いだけでリア充出来る訳じゃない  作者: 脱力呼吸法
第2章 赤の迷宮と骸骨達の騒乱
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不意打ち

書かないよりは書いた方がいいと信じたい。

 滅茶苦茶気分が良かった。だから霧崎はつい叫んだ。

 「最ッッッッ高にハイッてやつだァアア!!」

 

 午後に入って三時間、昼食を食べてそれなりにまったりとしていた老爺は馬鹿馬鹿しい大声に顔をしかめた。

 あれはいかん。

 平和な転寝を破った諸悪の根源を探せば、道の真ん中を剣士風、もっと言えば冒険者風の男が闊歩しており、注意しようと起こした腰はゴブリン風の顔を覗き込んだ後、ゆっくりと籐で編んだ椅子に戻される。

 まあ、いいじゃろう。若いもんは元気があるくらいでいいんじゃ。

 その心境の大半は、年老いた故の寛容さや、余裕と言うものではなく、ただ単に自己保身のためと言う事は分かっている。しかしどうしろと言うのか。もう先が長く無いとはいえど、孫娘の結婚ぐらいは見たいものだし、第一、非力な老人の自分が言うよりも周りの若いもんが注意するのが正当と言うものだ。

 まったく最近の若いもんは。

 自己の正当化を終えた老人は再び目をつぶり、午後の睡魔に身を委ねた。


金属の城壁に囲まれているというのに、この街の午後は涼しかった。これはオリハルコンの特性の一つで変形は可能だが、常温を保ち続けるというものが関与しているらしい。

 らしい、というのは所詮跨聞きに跨聞きを重ねたような先輩からの話であってメイが確かめたものではなく、だから本当のところはまったくの不明なのだが、しかしその話を聞いた時には成程と納得したものだ。

 未知の煉瓦さえ灼熱する夏の暑い日も、ひんやりとしているオリハルコンの城壁の下は絶好の休憩所だった。

 それにしても眠い。

 冒険者は朝に迷宮に潜り、夕方ごろ帰ってくる。そして昼過ぎの三時頃には、それまでうるさかった通話機能の呼び出し音もぱたりと止んで、異様に退屈な時間が訪れるのだ。

 閉じたら落ちる。閉じたら・・・。

 勝手に閉じようとする瞼は最早随意を乖離して、どうしようもなく意識を眠りの世界に誘う。

「おいメイ、ぼーっとするな」

 もにもにむにゅむにゅ。

「うひゃあっ!」

 音声と物理的な感触がメイの意識を苦界に呼び戻した。

 感触は胸部。

ならば振り向くまでもない、こんなことをする人物はこのギルド内でもただ一人しかいない。

「アーシェン先輩、マスターに訴えますよ!」

もう、と振り向くメイの顔前に先輩受付嬢の眠そうな顔が現れる。

「いやあ眠くてさ、此処は一発可愛い声を聞こうと思って」

「ふざけないでください。それに先輩も胸はあるんだから自分のを揉めばいいじゃないですか」

 メイの抗議に先輩受付嬢は肩をすくめる。

自慰(そんなこと)を職場でしたら変態じゃないか」

「正論っ!?」

 目眩で視界が揺れた。

 ふらつくメイに好機を見たアーシェンは一息に後ろへ回り込み抱きしめる。それは達人の動きにも等しい滑らかな動きで、「大丈夫か」というセリフを入れればふらつく後輩を支える優しい先輩に他ならない。

 だが手の動きは熟練したセクハラオヤジのそれで、豆腐を握る様な優しい手つきが、豊かな胸の感触を制服越しに楽しんでいる。

 もにゅもにゅむにむに。

「はあ、はあ、すごいなこの乳はなんだ?神に祝福されているぞ」

「ダメ…、…先輩、あ、やめ…んん、んぁあっ!」

「くくく、言葉では否定していても体は正直だな」

 熱い吐息がメイの耳に注ぎこまれた。

「はあ、ああ、んああ、だめ、だめぇ…です…」

 

 目の前で百合が展開されていたら、どうしたらいいのだろうか?

 少なくとも霧崎九郎はそういう状況を考慮に入れて稽古したことは無いし、もし知っている人がいれば、その意見は拝聴に値すると思う。

 しかしどうしようかな、本当に。

 割って入るべきなのか、それとも黙って鑑賞するべきなのか。一応霧崎も男の範疇に入るので、美人受付嬢が過激にあれをあれしてああしているのは眼福なのだけれども、しかし公共の場での猥褻行為を止めるのも義務という気もする。

「眼福眼福眼福……」

 うむ、十対零で黒霧崎の勝利が確定しました。幸い集合時間まではまだ一時間ほどあるし、三十分ぐらい覗いてもばちは当たらない、はず。

 

 十分前の霧崎の見積もりは、甘いと言わざるを得なかった。霧崎が見ていることに気付いたらしい受付嬢の攻めはさらに苛烈さを増し、午後のギルド内を甘い声が満たしていく様は、女に不慣れな霧崎にはこの上なく刺激的である。

「…股間ノ短刀(野太刀とは言わない)が…。ク…、霧崎九郎もここまでカ…」

 そして覗いている内に気がついたのだが、責められている方の受付嬢には見覚えがあった。たしか、ヤフタレクの想い人のメイさんだったと思う。いや、あの素晴らしい乳を見間違えるはずが無い。巨乳は俺の正義。

 「…めよう」

 良心の呵責と下の霧崎の我慢も限界地に近い。この後依頼があるというのにズボンを汚したまま行くわけにもいかない。

「日本刀日本刀日本刀日本刀……」

 心に描くのは鋭い鋼の切っ先。湾曲した優美な刀身。そして芸術的ともいえる鍔と、鮫皮巻きの柄。

 念じること三十秒で心は静まり、いきりたった股間の短刀は刀身を鞘に納める。

 さて、

どうやって声をかけようか。本質的なところで霧崎の問いは最初に戻ってくる。

 とりあえず霧崎は声を掛けるために近寄っていく。


「先輩、…人が…はあんっ」

「ぬう、ならば仕方なし」

メイの体から即座に離れた先輩受付嬢は、何処かへ去っていった。


「ダ…大丈夫カ?」

あれだけ凝視しておいて何だとは思うけれども、霧崎の口からは意外とまともな言葉が出てきた。

 全力疾走を終えたランナーのような顔の受付嬢は、何とかで言葉を紡ぐ。それは最早、気力に突き動かされたもので、あっぱれ職務精神と霧崎は僅かに感動した。

「…少々お待ち下さい。すうはあすうはあー……はい、もう大丈夫です!それでどのような御用件でしょうか?」

「あ、…ト、少し待っテ」

 依頼書は……何処だったかな?

 霧崎の手は出かける前に入れたはずのズボンのポケットを二周三周、ああもどかしい。

「あっタ、あリまシた。こノ将軍の…「お客様その依頼は極秘事項ですのでこちらへ」

いきなり出てきた手が、横合いから、依頼書を出す霧崎の手首をつかむ。

「アーシェン先輩?えっとこれは?」

 ちょっと静かにね。

後輩の受付嬢に微笑を向けて、アーシェンは手首の主を誘導する。

「この階段を上がった、三階の奥の部屋でマスターがお待ちです、では」

 はあ、と鳩が豆鉄砲を喰らった様な、そんな奇妙な表情を浮かべてゴブリン顔の冒険者は階段を上がっていった。


「…先輩極秘依頼って、なんです?」

 ゴブリン顔の冒険者を見送って一息ついた後、巨乳の後輩は好奇心満々といった感じで質問をしてきた。

「ほら、依頼書の上部に通常は赤い線が一本引かれているだろ?」

アーシェンの指先が依頼書に惹かれた赤線をなぞる。

「あ。はい。これですね」

び、とメイの手も遅れて赤線をなぞった。

「そう、これが二本あるのが、極秘の奴だよ。ホントにメイみたいな駈け出しが世話をするもんじゃないから、とりあえず赤い線二本あるやつは内容を見ないで私のところに持ってきてね」

「…え?っと、内容をみると?」

「首、で済めばいいけど」

どうだったかなと、アーシェンは首を傾げる。

「……監禁と口封じのための暗殺もあるかもしれない。とにかく私のところに持ってこい、話はもう終わりこれ以上聞くなよ」

この話をしたとき、いつも軽いアーシェンの口調は妙に重く、

「……はい、」

メイも黙って肯くに止めておいた。



 受付嬢に指示された通り、階段を上ると突きあたりに木製の重そうなドアが鎮座していた。

「・・・ここでいいんだよな」

 いいんです、いいんだよ、いいとも!三回心の中で自己肯定を繰り返した後、霧崎は部屋のドアを軽く叩く。

「入れ」

 中からともすれば傲慢ともとれる声が、廊下中に響き渡る。

 へへえ、入りますだ。

 霧崎の気分は、奉行所にひったてられた町人のそれに近かった。声を聞いた感じだと霧崎と性格が合いそうにない。きっと、嫌な奴だろう、そんなことを思って中に入ると、案の定、苦手な感じの人物がいた。

 まず目につくのは三白眼、それを抜きにしても鋭い目つき。皮膚の張りと髪の色からすると中年で、しかし革鎧に覆われた肉体はまだ衰えを知らず、室内での戦闘を想定してか刃渡りの短いロングソードを帯びている。偉そうにちょび髭なんかを生やしたところは某独裁者にそっくりで、厳めしい面はきっと毎朝青汁をがぶ飲みして、うまか、うまかと言っているに違いない。

 そんな連邦艦隊司令のような男が、高級感漂う黒木机の向こうに堂々と鎮座していた。


書く。必ず書きますから。そしてお気に入り登録が増えた。嬉しいです。感謝感謝\(^o^)/。もうね、がんばりますよ。

 百合は書きたかったので書いた。後悔は無い。

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