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異世界でも強いだけでリア充出来る訳じゃない  作者: 脱力呼吸法
第2章 赤の迷宮と骸骨達の騒乱
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六歩足のアイテムポーチ

例によって書き足し投稿です。主人公危険過ぎ。

 精神的な危機というのは誰にでも存在する。例えば、今の霧崎がそうだ。

それにしても、名前忘れられてるって・・・。お前いたの?とかそういう類の言葉でもかなり厳しめの言葉だと思う。こういうのを上手く切り返せるのが達人だと思うのだが、どうやらそれは神々の領域だったようだ。

「・・・霧崎ダ。霧崎九郎」

ぐってりと疲れた声で改めて自己紹介すると、むこうもどうやら思い出したらしく、わざとらしい動きで手を打って頷いた。

 さすがイケメン。そして死ね。

湧き上がる敵愾心は、背後に侍らせた(ように霧崎には見える)美女二人を見た時に、暴圧的な殺気に変わる。

 死ね、やはり貴様は男の敵だ。

 暴風にも等しい殺気に、アステリアの矢が男の眉間に放たれる。尋常でない弓勢の一矢は抜き打ちの一刀で明後日の方向に弾かれ、迷宮の壁を削って落下。三歩で間合いを詰めた霧崎の必殺の縦斬り。天空から大地までを貫く巨大な半円の斬撃は、その経過に置かれた斧槍の柄など、歯牙にも掛けずに迷宮の床まで一降()りに駆け抜けた。

そして、そのイケメンを上下左右に四等分したところで霧崎は負け犬的な妄想を終わりにする。しかし妄想の定義とは何なのだろうか?霧崎が思うに、実行できない頭の中での想像を妄想、実行できるものは計画というのではないだろうか?

 即ち、先程の霧崎の殺人妄想は殺人計画というモノに分類しなおす必要があるわけだ。

 良し、とりあえず落ち着いた。これで素直になれる。

「道に迷っテしまったのダが、」

もしよろしければその列の後尾を付いていく許可を与えて欲しい。変な文章に成ったが、とりあえずこちらの意図は伝わったはずだ。

「ちょっと考えさせてくれ」

返答は霧崎の想像通りのものだった。三人が集まって仲間内で話しあう姿に、なんとなく子供の頃の他愛のない遊びを思い出す。あ、トラウマが・・・。

「・・・日本刀、日本刀」

呟くことで意識がマイナスに行くことを回避。話しあいの間に腹ごしらえでもするかと、干し肉を噛んでいることにした。




「さて、霧崎が付いて来ることに賛成の人は挙手」

上がった手は二つ、ヤフタレクとアステリアのものだった。

「私は反対だね」

虎人の女は断言して、こつこつと迷宮の壁を左手の爪で叩く。

「なんで?腕利きがいた方が生存率は上がるだろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

正論と無言の抗議にも虎は真正面から立ち向かう。

「確かに、あの剣の腕は認めるわよ。大蛇の首を叩き落とすなんて真似は、中々出来ることじゃないしね」

なら、いいだろという言葉を半分だけ聞いてユルトは続きを述べる。

「だけど、もし嘘をついていたとしたら?至近距離で・・・裏切られた時は全員死ぬわ」

「うーん、一理ある」

迷宮では毎年百人近い死者がランクを問わず生み出されている。中には事故と見せかけた殺人も少なからずあると、冒険者たちの間では有名な話で、

「入った新人を囮に使うところとか、妖刀惨劇とかか?」

ちなみに、妖刀惨劇は有名な作り話で、腕利きに魔物を倒させておいて漁夫の利を狙って腕利きを殺した男が、回収した男の武器に破滅させられる話である。

「なルほど」と、遠くで聞いていた霧崎も頷いた。

「なら、武器ヲ預ケる」

「・・・というのはどうだユルト?」

「・・・それだと足手纏いでしょ?」

しまった、と霧崎は額を打った。しかしこれは不味い。

それにしても、自分は余程人に信用されないオーラを放っているのか。

「まあ、そういうなよユルト。何かあった時は俺が責任持つから」

「そうソう、そうシて頂ケれば、アリがたいナぁと思ったリ・・・」

とりあえずヤフタレクの説得に乗っかってみる。

「ダメか・・・?」

可愛らしく首を横に傾けて、ついでに合掌した手も傾け、もう一つおまけに愛らしいゴブリンスマイル付け足して反応を窺う。

「・・・きも」

弓使いのいかにも不快です、といった独白が霧崎を叩き、生命力を削る。虎人のユルトはと言えばこれも不快そうに鼻に皺を寄せていた。

「・・・お前、さすがに気持ち悪いわ」

ヤフタレクのお墨付きも加わって霧崎は今後の人生で作り笑いの完全な封印を決意する。

「・・・スまなイ」

霧崎の謝罪の後に数十秒を空白の時間が残留して、

「ま、とりあえず他の魔物が来る前に、蛇から換金部位を剝ごう」

ヤフタレクのまとめで四人が動き出した。

 四者四様、それぞれ手慣れた動きで腰のナイフを使い手際よく大蛇を解体していく。霧崎は胴の真ん中あたりを担当する。ヤフタレクとユルトが蛇の口腔から舌を切り取り、牙を引き抜く。アステリアは、血の匂いに寄ってくる魔物を警戒する係、ヤフタレクによると超絶に下手糞だからとのことだった。

 しかし、その弓の腕前は凄まじい。不意に矢を放ったと思うと、迷宮内を断末魔が木霊する。しかも、人とそうでないのとの区別もある様で、解体作業中に三人ほどの冒険者が目の前を横切っていったことに霧崎は冷や汗を流したものである。ゴブリンにも弓の名手がいたが、なんにせよ遠~中距離で戦闘に成った時、勝てる図が浮かばない。



「トころで、ここまで蛇を解体してモ、持っテ帰レないだロう?」

大蛇の牙四十八本。毒腺二つ、皮の上等なところ十枚で、どう考えても五十キロを超えて、とてもじゃないが人力で持ち帰ることは不可能だ。

「アイテムポーチも知らないの?」

そんな霧崎の無知を鼻で笑ったユルトが指を鳴らす。

待つこと数秒、床に石を落とす様な軽い音の連続の後、霧崎の目の前にそれが現れた。

「こレが、アイテムポーチ?ダと・・・」

例えるなら石を加工して作った蜘蛛だ。頭に相当する部分には理解不能の発光する曲線と直線の組みあはせが刻まれている。丸っこい胴体を上手くバランスを取るように造られた六本の歩脚が支えていた。大きさは縦横一メートル、高さ五十センチといったところか。

そんなのが三機。

「運搬用ゴーレム、これが出来てから冒険者の活動は楽になったわ、此処十年のぐらいの出来事だけれどね」

虎人の解説もそこそこにゴーレムもといアイテムポーチの背中が開けられ、どかどかと荷物が放り込まれていく。しかし、解説してくれるユルトさんは中々親切だなというう感想を抱いた。

「ソういえバ、オレの取り分ハ?」

失念していたがこの蛇を倒したのはオレな訳だし、ゴブリン的にも霧崎が一番多く貰えるはずだと思いたい。

「迷宮の案内代という事でどうだ?」

「ウーン・・・、いイよ。どウせオレは持っテ帰れナイし、とこロでモう帰るのカ?」

「まさか、牛さんを倒すまで帰らねえよ。・・・最近、下層の魔物が上に上がって来ているらしい。どうもあのオーク討伐が始まりだとかメイは言っていたんだが・・・」

まあ歩きながら話そうと、ヤフタレクはそこで会話を打ち切った。

「良し行くぞ、速いとこ牛さんを倒して酒を飲もう」

ヤフタレクの指示で四人と三機は歩きだす。

 牛トは何だ?霧崎の質問に返って来た答えをまとめると、どうやらそれは牛人・・・つまりミノタウロスの事だった。

「やつらは普段八層から下にいてな、それが五層なんかに上がって来たせいで、新人が少なからず死んだ」

「・・・・・・」

「その他にも青の方では蜥蜴人、それから巨人にストーンクラブも上がって来ていると聞いた、今がおそらく稼ぎ時だな」

続きます。しかし主人公に精神的なピンチて…。

六本足のアイテムポーチ。このアイテムポーチは人になったりしません。合言葉でパージした装甲を人が纏って武者なったりもしません。

要するに村正じゃないよ、という話。

被っていたので少し付け加え得ておきました。

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