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異世界でも強いだけでリア充出来る訳じゃない  作者: 脱力呼吸法
第2章 赤の迷宮と骸骨達の騒乱
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酔いが醒めて

どうしよう、ここからの展開が・・・。

 目が覚める。此処はどこだ?などという古典的な状況を、寝る前に霧崎が経験した記憶はない。藁に動物の毛皮の寝台と薄暗い、光の入らない様な石造りの壁。横に裸の女がいることも無ければ、かといって男がいるわけでもない。いたら、大惨事である。三度目の世界大戦だ。

「えエ・・・と」

あれだ。風呂に入った後、セレナ&トーレルと服を買いに行って、血塗れの道着と袴を珍しがる店主に買い取ってもらった。

「その後ハ・・・」

酒を飲んで、せっかくだから二胡を弾いたら、セレナとトーレルが消えて。

ついでに少年冒険者と立ち会った。

「・・・それで、ここは?」

 霧崎の視界が酒で酔っているのか何なのか、気の所為だとは思うのだけれども、細い垂直の鉄の棒が何本も垂直に起立して空間を塞いでいるようだ。

まるで牢屋である。

違った、何処からどう見ても牢屋だ。本当にありがたくない。

「・・・ん~」

そうだ、そうだと霧崎が手を叩く。

あの後、練兵場で気分が良くなって二胡を弾いていたると、邪魔する黒い人型が抱きついたり掴んだりしてきたから、投げ飛ばしたり張り倒したりしていたんだ。

そうしたら、現れた謎の美女が手を振ってお出でお出でをするから付いていき、今に到る。そういうことである。

「はて、いったい此処は何処だ?」

酔っ払いの記憶など当てにならないもので、霧崎は正に古典的な状況に落ちっていた。


 どうしたものかと壁を叩くと空洞のような軽い手応えが帰ってくる。木刀の一閃で一抱えもある大蛇の首を叩き落とす霧崎の発勁を持ってすれば、粉砕できない厚さではない。だからと言って粉砕するわけにもいかず、かと言って状況を尋ねられる人通りも無い。

「寝よう」

どうせならば、山で暮らしていた頃には味わえなかったこの寝台のモフモフ感を味わっておこうか。

「いや、それは生物的に余りよろしく無いな、うん」

全身を揺さぶって起こし、肩幅にひらいた両足を平行に揃える。膝を軽く曲げ、腰が後ろに逃げないように落とす。呼吸は緩く、踏ん張らない様に、決められた姿勢の中で出来るだけ長く立てる様に、体内をかちゃかちゃと機械のように動かす。基本にして奥義と、ゴブリン師匠に教わった形、身体を実験室にした体内の観察に霧崎は没頭していく。


・・・ここか?・・・・・・・首をこう?そうすると腹が・・・・・・。おお?背中をああしてこうして・・・・・・お腹を上げる、いいね。・・・足音、横目人が来たな。


これは真面目な練習である。例え、はたから見てニヤニヤ笑いながら汗を流す変な姿勢の男が其処に居たとしても、決して笑ってはならない。知り合いだったら他人のふりをしてそっと来た道を引き返す等、心の無い真似はせず温かい目で見守って下さい。



「お前何をやっているんだ?」

「・・・練習」

何の?と思わず牢屋の男の会話に引き込まれそうになった兵長は、慌てて頭を振り疑問を追い払った。とりあえず分かっていない牢屋の男に説明してやることにする。

「ええ、今の状況が分かるか?」

解からん。牢屋の中の男はゴブリン顔をしかめた。まあそうだろう、と兵長も思う。あれだけ酔っていて判れば奇跡だ。

「ええとな、夜中にお前が練兵場で踊っていた訳だ。いいか?」

「ハい」

「それで、第一発見者の部下が言うには尋常じゃない動きをして危なくて近寄れなかったんだと」

「ハいはイ」

「で、放っておいたら、頭から壁に突っ込んで勝手に気絶した」

「それデ、ここに?」

優しく介抱してくれてもよかったんジゃないか云々、ゴブリンの口から漏れた言葉に呆れつつ兵長は欠伸をかます。いまだに眠気でぼやけた頭を振って、振るい起す。この後、朝練があったはずだ、部下の手前、気の緩みを見せるわけにはいかない。

「んで、不法侵入罪だけど初犯だから今回は見逃す、二度と来るなよ」

「了解デあリます兵長殿。ところデ自分の荷物ハ?」

「階段を上がってすぐ、右の部屋」

「ハっ!!」

鍵を開けてやると、わざとらしく敬礼までしてゴブリン顔の男は走り去っていく。

「・・・財布から二~三枚金貨が消えているだろうが許せよ」

兵長の呟きはきっと聞こえていなかっただろう。


 「アー、ところで事務所はどコだったか」

そういえば霧崎はこの街のことなど何も知らないし、馬車の中の話ではセレナとトーレルが運営している事務所で寝泊まりさせてもらえるという話だった、と思う。

「道が在るから歩かなくちゃな」

一旦は真面目なことを考え移動を開始したが、しかし川に出た辺りで急にやる気がうせ、水面の流れの変化を楽しむ事にした。こういうモノこそ道端にしゃがんでみている分にはまるで飽きることが無いし、たまに剣のアイデアが浮かんだりするのだ。

水面を行きかう魚影。大きいやつ、ちいさいやつ、ほそながいやつ、ひらったいの、中には一分ほどかけて視界を横切る大物もいる。小魚の大群が群がっているものを何か、と見ればそれは上半身しかないオークの死体だった。

「たのちいナあ」

どうも、陽気に当てられてこういうモノを眺めていると思考が和らぐどころか脳味噌が溶け出して鼻から垂れて来てしまうんじゃないか、そんなとりとめもない妄想が後から後から湧いてきてのんびりとして、気分がよい。

戦闘の際の冴えた感覚もいいがこういうぼやーっとしたのもいいなと霧崎は水面を眺め続けるのであった。



「お兄さん・・・」

「ウん、何?」

「水面見ていて面白いですか?」

「ウン」

ところで、異世界に生き別れになった妹がいたかな。横を見ると案の定、庶民らしい服を纏った子供がしゃがんでいる。


「・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・」


何時の間にかオークの死体に群がっていた魚軍は何処かに消え去り、骨だけになったオークが下流に消えていった。

「お兄さんは何をやっているんですか?」

「水面ヲ・・・」

「そうではなく、仕事です」

「・・・・・・・」

「僕は将来、剣士に成りたいのです。もしよろしければ一手ご指南いただけますか」

「・・・・・・・」

「・・・お願いします!金が無くて剣の道場にも通えないんです」

「・・・・・・」

「あのー・・・話を」

「・・・剣ハ、」

「・・・え?」

霧崎の目がうっとおしげに子供を眺めた。

「三日に一度、此処ニ来れば教エる」

「・・・ありがとうございます!」

それと、霧崎の口はいかにもめんどくさげに開かれる。

「チョっと冒険者ギルド前に案内してクれなイか?道に迷っタ」

少し、戸惑ったような表情を見せ子供は、こっちですと霧崎を先導した。

敗北の多い主人公!!←取り消しでお願いします。

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