とある冒険者の記憶
主人公が作者の嫌いなチ―トに・・・、orz。もっとすごい奴を出していきたいと決意する。
剣を見た。
オークと人が犇めき、剣と腸が乱舞する赤い迷宮で男は『剣』を見た。あれを剣と呼ばずに一体何と呼べばいいのだろうか。
活人剣、殺人刀、剣速の速さ、長さの有利、連続技、斬撃の威力。そんな表現は、上積みの理屈はあの剣の前には無意味だ。
あれこそが剣である。他にどのような言葉を持ってしても表しようがない。
きっとあの使い手は、その手に持つものが剣で無くとも、あるいは何も手に無くとも「剣」で在り続けるのだろう。
感嘆の後、男に到来したのは情けなさだ。男とて人並み以上に剣の修練をしてきた自負が在り、そして自分が使い手だと思っていた。それが、迷宮で見た『剣』にまったく無意味な物のように打ち砕かれた。
腹腔を渦巻くどす黒い感情が『剣』に勝負を挑んだ理由かもしれない。
『剣』は、その日、居酒屋で飲んでいた。飲みながら楽器を弾いていた。思わず男が勝負を挑もうと思った理由さえ忘れてしまう様なような、いい音色である。そんな風流な場所にいきなり踏み込んで来た戦場丸出しの男には、『剣』も驚いたに違いない。
男の頼みを『剣』はあっさり承知した。酒が入っている所を悪いから、明日にしよう、そんな男の提案を
「・・・酒が入ってイるとキに襲われた。酔いが醒めるマで敵に待てト頼むのカ?」
ゴブリン訛りのトゥルン語で一笑に伏し『剣』は男を市の練兵場に連れていく。
その剛毅さにまた感嘆した。
夜の事である。初夏の生温かい風が頬を撫でた。月も中天に輝き、怜悧な光で円形の練兵場に立つ二人の剣人を見下ろしていた。
いざ、と男は木剣を構え、その切っ先を『剣』に向ける。『剣』はその辺で適当に選んだような片手剣型の木剣を右手に持つ。
戦いが始まった。
剣士の戦いは、斬り合う前から既に始まっていると男は思っている。俗に言う勝負は鞘の内という奴だ。
『剣』は・・・・・・。
『剣』は・・・・・・、
『剣』は・・・・・・?
・・・・・・何だ?
ゴブリンに似たお世辞にも男前とは言い難い顔、肌の張りは若く、いまだに十代と同じ。さして高く無い身長に中肉中背の体つき。
男には、負ける要素が(顔を含めて)存在しないように思える。そんな男の読みを嘲笑うかのように『剣』が無造作に間合いを詰めてくる。
方針が決まった。
エルルトル流四段変化技、『水鳥啄水中之魚』。木剣のリーチを生かして籠手を打ち、その後の変化に合わせ斬る。
初動、剣を構えて一歩・・・・・・・、あれ?
気が付けば頭を『剣』の木剣が押さえている。その一点から男の動きは完全に停止し、成すすべもなく練兵場の砂地に貼り付けられた。身動き一つできない死に体。剣一本に全身の動きを支配され、練兵場の砂の上で男は無意識の内に己の敗北を悟った。
あの後は『剣』とひたすら酒を飲んでいたようなそんな記憶しかない。
どうして自分は『剣』の動きに反応さえできなかったのか。その理由を問いただした時に一つ奇妙な話を聞かされた。
『剣』は言う。
お前の動きは60コマだと。
対して俺の動きは180コマだ、だからお前は俺を捉えられなかったのだと。
結局意味は分からなかった。ただ、剣に迷っていたころの清々しい思い出として、今も呆けの進行した老人の頭の中に残っている。
思っていたのと違う超短編に。なんだこれは?作者も血迷った、そう言う事です。




