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幼馴染のテイムモンスターですが何か?~VRMMOでキャリーしてたらユニークモンスター扱いされて世界中から追われてる件~  作者: あずーる


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第二話 スタート地点は密林

 眩い閃光が収まり、ゆっくりと目を開ける。

 だが、視界に飛び込んできたのは、西洋風の美しい石畳や活気ある露店が並ぶはずの始まりの街インテルではなかった。


「……は?」


 生い茂る巨大なシダ植物。湿気を含んで重く垂れ下がる空気。

 足元には、じっとりと水分を含んだ黒い腐葉土。

 見覚えがありすぎる。ここはシリーズプレイヤーなら誰もが一度は通る、序盤の難所──『サルツス密林』だ。ブラックエイプの、つまり俺が選んだ種族の主な生息地である。


「いや、なんでここからスタートなんだよ……」


 まさか選んだ初期種族の住処が初期リスポーン地点に設定されているのだろうか。

 もしそうなら、相当なクソ仕様だ。ここから始まりの街インテルまでは、モンスターの徘徊する危険地帯を突っ切らなければならない。


 過去作なら、既に行ったことのある街へ一瞬で移動できるファストトラベルがあったが、当然ながら今は未登録。地道に歩くしかない。


「うきゅあああ! きぃーっ!」

「うきょ! うきょきょ!」


 少し離れた茂みの向こうが、やけに騒がしい。

 そっと葉をかき分けて覗き込む。


「……うわぁ」


 そこでは、不格好な初期装備に身を包んだ新人スレイヤーが、三匹のブラックエイプと泥みどろになって大立ち回りを演じていた。

 大剣をぶんぶんと振り回しているが、完全に見当違いの方向を叩いている。ゲームのシステムアシストに頼り切った、いかにもVR初心者という感じの微笑ましい剣の振り方だ。


「攻撃モーションの固定化はないっぽいな。早く俺もこの糞猿を卒業して、普通の人間アバターでプレイしてぇわ……」


 ため息をついた、その時だった。


「おっ、あそこにも一匹いやがる! 経験値みっけ!」


 大剣を構えたプレイヤーが、ギラギラとした目をこちらに向けて突進してくる。

 獲物を見つけたと言わんばかりの、狩人の目だ。


「おい待て、俺はプレイヤーだ。PKすんな!」


 慌てて両手を振って制止の声を上げる。だが、口から出たのは、自分の耳を疑うような間抜けな音だった。


「うほ、うほほほあほうほ!」

「おりゃあああ! 死ねえええ!」


 声が届かないのか、プレイヤーは嬉々として錆びた大剣を振りかざし、こちらの脳天めがけて振り下ろしてくる。


あぶねえだろうが(うほほへふあ)!」


 寸前で身体を横に滑らせる。

 過去作で数千回は見てきたブラックエイプの突進予備動作──いや、今は自分自身の身体だ。驚くほど軽々と、まるでもともと猿だったかのように素早く、地を蹴って大剣の軌道から逃れることができた。


『──ん? どうしたの、マキマキ? なんかあった?』


 耳元で、ボイスチャットに繋がった桃花ののんきな声が響く。


『なんか、初期エリアのプレイヤーにPKされかかってる!』

『やっば!最初からいじめられるなんてマキマキも不運だね』


「ちょ、すばしっこいなこの雑魚猿!」


 プレイヤーがイラついたように大剣を真横に薙ぎ払う。

 その大振りな動作を見ながら、俺はとっさに足元の泥へと手を伸ばした。手のひらにまとわりつく、ひんやりとした泥土の生々しい感触。


目潰し(うほほ)食らえ(うほあ)!」


 すくい上げた泥の塊を、渾身の力でプレイヤーの顔面に向けて投げつける。


 ベチャッ!


「ぶふぉっ!? 汚ったねえ! 目が、前が見えねえ!」


 泥は見事に相手の初期ヘルムの隙間に入り込み、視界を塞いだ。相手がうろたえ、めちゃくちゃに剣を振り回し始める。


 その瞬間、脳内に硬質なシステム音が鳴り響いた。


【スキル『泥投げ Lv1』を獲得しました】


「はあ!? 泥投げ!?」


 そんなスキル、過去作のプレイヤー用データベースには存在しない。モンスター専用スキルか。

 だが、驚いている暇はない。目の前の初心者に、モンスターの恐ろしさを叩き込んでやる。


「おら! そっちじゃないぞ(うききー)!」


 バックステップで剣をかわしながら、再び泥を掴む。


 ベチャッ! ベチャッ!


「うわあああ! なんだよこれ、この猿おかし──」


 顔面を泥まみれにされ、完全に視界を奪われたプレイヤーの懐に潜り込み、むき出しの首筋をめがけて渾身のひっかき攻撃を叩き込む。

 鋭い爪が肉を裂く、微かな抵抗感が指先に伝わった。


 エフェクトの光が散り、プレイヤーのHPバーが一瞬でゼロになる。

 彼は驚愕の表情を浮かべたまま、光の粒子となってその場から消え去った。


「ふぅ……こんなもんか」


 パサパサになった両手を払い、泥を落とす。


『レベルが上昇しました!』


 目の前に、プレイヤーのものとは明らかにデザインの違う、禍々しい赤黒いステータスウィンドウが展開された。


 名前: ブラックエイプ

 Lv: 1 → 2

 職業: モンスター

 種族: ブラックエイプ

 HP《体力》: 500/500 → 550/550

 MP《魔力》: 100/100 → 110/110

 STMスタミナ: 100/100 → 110/110

 ATK《攻撃力》: 200 → 220

 DEF《防御力》: 100 → 110

 SPD《速度》: 100

 LUC《幸運》: 1 → 2


【部位別補正】

 + (タップして展開)


【スキル】

 ・泥投げ Lv1


【装備】

 ・なし


「……いや、ステータス高すぎだろ」


 初期プレイヤーのHPは、確か一律で100前後のはずだ。なのに、初期の雑魚猿であるはずのブラックエイプは、レベル1の時点でその5倍のHPを持っている。攻撃力も異常に高い。


「ブラックエイプって、こんなに凶悪なスペックしてたのか……」


 普段、プレイヤー側として何気なく狩っていた雑魚モンスターの、隠された強さを身をもって知ってしまった。


『マキマキ? もしもしー? 私、もうインテルの広場に着いたからね! 早く来て!』


 桃花の声が、現実の冷たさを思い出させる。

 しかし、どうやってこのモンスターの身体のまま、プレイヤーたちの集まる街へ入れというのだ。衛兵に一撃で肉片にされる未来しか見えない。


「……とにかく、行くしかないか」


 不安を胸に、俺は木々の間を縫うようにして、インテルの方角へと四足歩行で駆け出した。


【モンスレ雑談スレッド Part 15】


 32:名無しのスレイヤー

 さっきサルツス密林で、動きが異常にバグってるブラックエイプに遭遇したんだが。


 33:名無しのスレイヤー

 どれ?


 34:名無しのスレイヤー

 録画してたから、この動画見てくれ。

[動画URL:玄人ブラックエイプ]


 35:名無しのスレイヤー

 うわ、何これwww


 36:名無しのスレイヤー

 めっちゃ綺麗な回避してて草


 37:名無しのスレイヤー

 一方的に泥投げつけられてボコられてるやんけ。この大剣のやつドンマイすぎるだろwww


 38:名無しのスレイヤー

 これが新規プレイヤーへの手厳しい洗礼ですか。


 39:名無しのスレイヤー

 っていうか、ブラックエイプってあんなに強かったっけ?


 40:名無しのスレイヤー

 初期エリアの雑魚の挙動なんて気にしたことないわ。


 41:名無しのスレイヤー

 まあ、運営がまたサイレントでモンスターのAI強化したんだろ。たまにあるよな、こういう嫌がらせアプデ。

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