表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お茶女子と…私。  作者: たかさば


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/3

麦茶

 夏の雰囲気を感じる頃から、いつも冷蔵庫に常備されていた…茶色いお茶。

 香ばしくて、キンと冷えている、夏のお茶。


 冷たいのが当たり前の、ゴクゴクと飲み干せる、夏に相応しいお茶…それが、麦茶。


 夏、うちに遊びに来た友達に麦茶を出してあげると、いつも美味しいねと言われた。

 濃い目のうちの麦茶は、氷をたっぷり入れたグラスに注ぐとちょうどよく薄くなった。


 うちは、炒った麦を買ってきて、薬缶で煮だして麦茶を作っていた。

 近所で週二回やっている朝市に来ていたお茶屋さんが、炒りたてのプクプクとした麦を格安で売っていたのだ。


 とある年の、夏休み。

 朝から蝉獲りに夢中になり喉がカラカラになっていた私は、つい…、冷蔵庫にあった麦茶を飲み干してしまった。


 無くなってしまったからには、作らねばならない。

 飲み干したまま放置して叱られるのは、得策ではない。


 麦茶を作る事は、難しいことではなかった。

 2リットルの薬缶に水を入れ、沸騰したのを確認したら大きな茶こし網をセットし、計量カップ山盛り1杯分の麦を入れ、茶色く色づくまで煮込む。

 十二分に煮だせたら、たらいに水を張って薬缶を冷やし、湯気が立たなくなった頃に麦ごと茶こしを取る。

 温かい麦茶をプラスチック製のポットに入れて、冷蔵庫のサイドポケットの定位置に置く。


 沸かした麦茶は、ポットに移し替えなければいけない。2リットルの薬缶で沸かして、2リットルの容器に入れるのだが、その時はなぜだか少し余ってしまった。

 のちのち判明するのは、私が2リットルの薬缶と思っていたのは2.2リットルの薬缶だったということだ。つまり、少しお湯を少なめに沸かすという工夫が必要だったのである。


 そんなわけで、コップ一杯分の麦茶が余ってしまった。

 作ったものを捨てるなど、とんでもないことである。

 これは飲み干さねばなるまい…、使命感が生まれた。


 ほんのりぬるい麦茶をコップにうつし、こくりと飲んだ時の…違和感。


 いつも冷たいやつが、生ぬるい。

 いつも冷たさを与えてくれるものが、熱を帯びている。


 冷たいのが当たり前すぎて、一瞬、脳が混乱した。

 なんだか、いけないものを飲んでしまったような感じがして…若干テンションが下がった。


 次に麦茶を作ることになった時、今度は熱々の状態で飲んでみたらどうだろうと思い至った。

 たらいで冷やす前に、薬缶から湯のみに熱々の麦茶を注いで…真夏のクソ暑い時期に、セミの合唱をバックコーラスにして、一口、飲んでみた。


 明らかな違和感は否めない。

 だがしかし…香りがいい。

 麦茶の一番いいところがバッチリ前に出ているような気がする。


 どういう訳か、私は熱々の麦茶が…好きになってしまったのだ。


 ……今でも私は時折、炒った麦を煮だして麦茶を作る。


 あの時の衝撃は、どれほど年月が経とうとも忘れることができない。

 どれほど飲みやすい冷たい麦茶を飲もうと、飲みにくくて手間のかかる煮だした麦茶が恋しくなる瞬間がある。


 熱々の麦茶の香りを全身全霊で求めてしまう私が、ここにいるのだ!!


 ―――だってあたし、めっちゃ美味しいもんね~!


 スゥと香りを吸い込み、ふうふうと熱を飛ばして、そっと茶色いお茶を啜った…その瞬間。


 ミンミンと鳴く蝉の合唱を背負った女子が、麦わら帽子で真夏の日差しを遮りながら…こちらをふり返るのだ。

 小麦色に日焼けした、みつあみの女子が…ニカッと笑いかけるのだ。


 春であろうと、夏であろうと、秋であろうと、冬であろうと。

 カンカン照りの真夏の日差しを受けて燦燦と輝く、とびきり元気な…真夏そのものの女子が、私と邂逅してくれるのだ。


 年がら年中、夏を身近にしている私は、本場の夏もわりと好きだ。


 今年も冷たい麦茶をガブガブと飲みながら、熱々の麦茶も飲むはずだ。

 どの麦茶が美味いだの、この麦茶はなってないだの、スゴイ麦茶が発売されただの…色んな感想を持って、少女に会いに行くはずだ。


 ―――またね~!


 元気にバイバイしてくれるから、()()を求めて…私は嬉々としながら湯を沸かすのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ