暴走列車 清水ユリ 第2部 6
が、
ここでは、終われない…
このままでは、終われない…
アタシは、とりあえず、二人の警官に向かって、
「…この村井さんに、一筆、書いてもらいます…」
と、宣言した…
「…それから、警察官のお二人にも、それを、見届けたという証明をして、もらいます…」
と、続けた…
「…証明って、お嬢さん、どうするの?…」
と、年長の警官…
「…この村井さんが、アタシに痴漢した賠償で、百万円払うと、念書で、書いて、その証明に、警官おふたりの名前を書いてもらいたいんです…なにか、あれば、お二人が、記述したと、証明できますから…」
アタシが、言うと、警官ふたりは、顔を見合わせた…
それから、
「…お嬢さん、実に、しっかりしているね…」
と、言った…
アタシは、一言、
「…十七年、生きてますから…」
と、言った…
それを、聞いた、若い警官の方が、
「…えーっ! まだ、十七歳…それで、そんなに、しっかりしているの!…」
と、驚いた…
アタシは、それを、聞いて、
「…当たり前ですよ…アタシは、女子高生ですよ…この制服を見れば、わかるでしょ?…」
と、返した…
が、
これに対して、返ってきたのは、
「…ダブりかと、思った…」
と、いうものだった…
「…ダブり…」
と、アタシは、絶句した…
ダブりの意味は、わかる…
留年だ…
しかし、どうして、そう思うんだ?
アタシの頭の悪さが、バレたのか?
それが、謎だった…
だから、速攻で、
「…どうして、そう、思うんですか?…」
と、聞いた…
当たり前だった…
「…お嬢さんの顔だよ…」
と、すぐに、その警官は、答えた…
「…大人びているし、とても、女子高生には、見えない…」
と、その若い警官は、答える…
が、
それを、聞いて、年長の警官が、すぐに、
「…お嬢さんが、美人だからだよ…」
と、口を挟んだ…
フォローしたと、言っても、いい…
「…美人が、どうかしたんですか?…」
と、私。
「…美人は、当たり前だが、目鼻立ちが、整っている…目鼻立ちが、整っていれば、大抵は、歳より、2,3歳は、老けて見えるもんだ…」
と、年長の警官が、説明した…
アタシは、それを、聞いて、
…なるほど…
と、思った…
同時に、母の言葉を思い出した…
ユカリの言葉を思い出した…
「…アタシは、この顔だから、若い頃は、歳より老けて見えるんで、困った…」
と、告白したことを、思い出した…
「…この顔だから、男たちは、平気で、ホテルに誘う…私が、まだ、高校生だと、言っても、信じないんだ…」
と、嘆いたことを、思い出した…
たしかに、わかる…
それは、わかる…
若い頃の母の写真を見れば、わかる…
制服を着ていない、私服の写真では、当時、女子高生といっていても、とても、女子高生には、見えない…
大人びて、見える…
それに、なにより、色気がある…
写真でも、わかる、色気がある…
ムンムンの色気がある…
やはり、父は、母のこの色気に負けたのか!
やはり、父も、男だったのか!
と、あらためて、思った…
あらためて、気付いたのだ…
ちなみに、アタシに色気はない…
全然、ない…
アタシは、美人で、背も高く、ナイスバディの持ち主だが、色気は、全然、ない…
が、
だとしたら、一体、どうして、この村井は、アタシに痴漢をしたんだ?
どうして、アタシの胸を揉んだんだ?
それが、謎…
謎だった…
だから、面と向かって、聞いた…
「…村井さん、どうして、アタシの胸を、触ったんですか?…」
と、聞いた…
すると、すぐに、
「…いろいろ、悩みがあって…」
と、答えた…
しょんぼりと、答えた…
「…いろいろあるのは、わかりますが、そんなことで、アタシの胸を、揉まれちゃ、たまったものじゃないですよ…」
と、アタシは、言って、やった…
「…まさか、満員電車の中だから、そこに、女子高生の胸ありって、やつじゃ、ないでしょうね…」
アタシが、力強く、言うと、
「…さすがに、それは…」
と、村井が、しょんぼりと、答えた…
「…でも、言いづらいですが、このお嬢さんは、背も高いし、胸も、大きい…それに、なにより、ルックスがいい…」
そう、力なく、説明した…
それを、聞いて、アタシは、
…やはり、アタシは、魅力があるんだ!…
と、自分の魅力を再発見した…
あらためて、自分の価値を再発見したと、言っても、いい…
が、
それだけでは、なかった…
まだ、村井の言葉は、続いた…
「…それに、このお嬢さん、ルックスはいいけれど、頭の方は、ちょっと…」
と、言いづらそうに、言った…
それを、聞いて、アタシは、すぐに、
「…どうして、わかるんですか?…」
と、怒鳴った…
まさか、一目、見ただけで、アタシの中身が、わかるのか?
アタシが、バカか、利口か、わかるのか?
そう、思ったのだ…
が、
次に、村井が、言った言葉が、衝撃だった…
「…だって、お嬢さん…うちの学校の制服を着ているけれども、選抜クラスじゃないでしょ?…」
と、言ったのだ…
年配の警官が、
「…選抜クラス? それは、一体、なんですか?…」
と、聞いた…
当たり前だった…
が、
それを、聞いた若い警官が、
「…あの高校…沢村学園は、選抜と、その他に別れるんですよ…」
と、説明した…
「…どういうことだ?…」
と、年長の警官…
「…あの高校…選抜では、日本中の中学から、お金のない家庭の優秀な生徒を集めているんです…」
と、若い警官…
「…お金のない家庭の優秀な生徒? なんだ、そりゃ?…」
「…要するに、高校に、進学するのに、全部、費用を高校が、負担してくれるんです…生徒の親は、一銭も出さなくてもいい…」
と、若い警官。
「…でも、今は、授業料無償化といって、私立でも、お金が、かからないんじゃ…」
と、年配の警官。
「…いや、かかりますよ…」
と、若い警官。
「…かかる? どうして?…」
と、年長の警官。
「…ほら、学校って授業料が、すべてじゃないでしょ? 昼は、昼食代がかかるし、制服代も、かかる…修学旅行もそうだし、その他、学校に通うのは、もろもろ、お金がかかるでしょ?…」
と、若い警官。
「…それは、そうだな…」
と、先輩の警官。
「…ですが、沢村学年の選抜クラスは、それをすべて、学校が、負担してくれるんです…」
と、若い警官。
「…えっ? 負担…」
と、先輩の警官。
「…全部、学校持ち…しかも、全国から、優秀な生徒を集めてきているから、全寮制で、完全個室制…一人部屋だから、プライバシーも守れる…おまけに、噂では、学校から、小遣いも、支給されるらしいですよ…」
と、若い警官。
「…小遣いって?…」
と、驚く、先輩の警官。
「…まあ、あくまで、噂ですけどね…」
と、若い警官。
が、
それに、村井が、口を挟んだ…
「…噂じゃないですよ…」
と、口を挟んだ…
「…噂じゃない? って、ことは、本当なのか?…」
と、驚く、年配の警官。
「…本当です…ただし、金額は、高校生だから、たかが、知れてますけれど…」
と、村井。
「…それに、なにより、選抜クラスの生徒の情報は、選抜クラスの授業を担当しない教師にも、情報が、降りて来る…このお嬢さんは、たしかに、うちの制服を着ているけれども、このお嬢さんの情報は、降りてこなかった…だから、選抜クラスじゃないと、思って…」
と、村井。
それまで、近くにいて、黙っていた駅員が、
「…しかし、その選抜クラスの生徒には、よく、学校は、そんなに、優遇しますね…」
と、口を挟んだ…
それを、聞いた村井は、
「…優遇…それは、お客様だから、当然ですよ…」
と、答えた…
「…お客様?…」
と、駅員さん。
「…学校の名前を全国に広めてくれる、大切なお客さんです…私ら、一般の教師より、はるかに、学校で、大切にされています…」
と、村井が、言った…
仰天の告白をした…
「…だから、選抜クラスを担当すれば、揉めるわけには、いかない…生徒と揉めるわけには、いかない…それが、プレッシャーで…」
と、言って、頭を抱えた…
私は、それを、聞いて、これから、私の通う高校の全容が、見えてきたと、思った…
とんでもない、全容が、見えて来たと、思った…
<続く>




