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暴走列車 清水ユリ 第2部  作者: トモサン


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15/18

暴走列車 清水ユリ 第2部 15


 つくづく、アタシは、驚いた…


 実に、驚いたが、それでも、食欲は、旺盛だった…


 すでに、目の前の昼食の大半は、食べ終わっていた…


 それを、見た、村井は、


 「…では、清水さん、それを、食べ終わったら、ここを出ましょう…」


 と、言った…


 私の食事の進み具合を見て、言った…


 アタシは、


 「…わかりました…」


 と、言って、残りを急いで、食べ出した…


 すでに、この村井は、ほぼ大半を食べ終えていた…


 だから、今、アタシに、こんな話をしたんだと、思った…


 アタシも、同じく、食事をほぼ食べ終えていた…


 だから、こんな話をしたんだと、思った…


 しかし、


 …大変なところに、来ちゃったな…


 と、言うのが、偽らざる本音だった…


 まさか、そんな学校だったとは、知らなかった…


 まさか、そんな、問題を抱えた学校だとは、夢にも、思わなかったからだ…


 が、


 …仕方がない…


 アタシは、すぐに、腹をくくった…


 今さら、グズグズ言っても、仕方がない…


 すでに、この高校に入ってしまった…


 今さら、なにをグズグズ言っても、他の高校に転校することなど、できないからだ…


 だから、仕方がない…


 と、諦めた…


 アタシは、内心、そんなことを、考えながら、食事をとった…


 内心、そんなことを、考えながら、猛烈なスピードで、食事を終えた…


 まるで、アスリート…


 我ながら、アスリートだった…


 アタシは、食べることには、自信がある…


 猛烈な自信がある…


 食事を食べ終えたアタシを見て、


 「…しかし、清水さんは、変わっているね…」


 と、村井が、言った…


 力を込めて、言った…


 「…変わっている? どこが、変わっているんですか?…」


 当然、聞いた…


 変わっていると、言われれば、どこが、変わっているんですかと、誰もが、聞きたくなる…


 アタシも、例外ではなかった…


 「…清水さん、それほどの美人なのに、全然、周囲の目を気にしないんですね…」


 「…周囲の目?…」


 「…美人のひとは、大半が、周囲の目を気にしています…特に、食事の際は、周囲の目を気にして、おしとやかに、食事をするものです…」


 村井が、言った…


 しみじみと言った…


 アタシは、それを、聞いて、もっともだと、思った…


 実は、アタシも、よく言われた…


 仲の良い、同級生や幼馴染に、言われた…


 いっしょに、食事をしたりして、おしゃべりをしているときに、


 「…清水ってさ、美人だけれども、周囲の目を気にしないの?…」


 と、言われた…


 数えきれないほど、言われた…


 アタシは、


 「…気にしない…」


 と、即答した…


 「…どうして、気にしないの?…美人だから、自分に自信があるから?…」


 「…違うよ?…」


 「…じゃ、なに?…」


 「…母親のアドバイス?…」


 「…お母さんのアドバイス? どんなアドバイス?…」


 「…アンタも、知っているように、アタシのお母さん、アタシ、そっくりの美人でしょ?…」


 「…うん、知っているよ…」


 「…で、母のユカリが、言ったの…」


 「…なにを言ったの?…」


 「…いつも、すまして、カッコよく、しても、男だったら、結婚すれば、いっしょに住むから、すぐに、メッキが剥がれる…中身が、バレるって…」


 アタシは、言った…


 笑って、言った…


 「…まあ、母のユカリは、アタシと同じく、性格がガサツだから、人前で、カッコつけるのが、嫌だったせいもある…でも…」


 「…でも、なに?…」


 「…ユカリの言うことも、一理あると、思って…」


 アタシが、言った…


 すると、友人が、黙った…


 黙って、アタシを見た…


 それから、言った…


 「…でも、それって、やっぱ、自分に自信があるからだよ…」


 と、言った…


 「…自信があるから? どうして、そう思うの?…」


 「…自分のルックスに自信があるから、なにをしても、周囲の男たちが、ちやほやするっていう…」


 そう、言われると、なにも、言えなかった…


 「…アタシだから、言うんだよ…」


 と、その友人が言った…


 たしかに、その友人とは、仲が良かった…


 が、


 そんなことを、言われるとは、思わなかった…


 夢にも、思わなかった…


 アタシが、変に演じることなく、自由奔放に生きる…


 それが、アタシが、美人だから、自信があるから、変に、周囲の目を気にすることなく、行動していると、言われるとは、思わなかった…


 つくづく、ひとは、わからない…


 なにを、考えているか、わからない…


 アタシが、考えていることと、まったく、違うことを、考える…


 それが、わかった瞬間でも、あった…


 そして、アタシは、今、村井の発言で、そんなことを、考えていると、やはり、村井も、


 「…清水さんは、美人だから、自分に自信があるのかな…」


 と、以前、友人が言ったことと、同じことを言った…


 アタシは、黙った…


 黙って、ヘラヘラと愛想笑いをして、ごまかした…


 やはり、最近では、これが、最強…


 ヘラヘラと、笑って、ごまかすのが、最強だと思ったからだ…


 それを、見た、村井が、


 「…清水さん、なにか、飲む? コーヒーでも、紅茶でも、なんでもあるよ…」


 と、聞いてきた…


 アタシは、笑いながら、


 「…これ以上は…」


 と、だけ、言った…


これ以上は、さすがに、お腹に入らない…


アタシの言葉で、村井は、これまで、アタシが、食べた食事の量を思い出したらしい…


「…でしょうね…」


と、だけ、言った…


それから、


「…清水さん、もう少し、ここにいますか? それとも、教室に戻りますか?…」


と、アタシに聞いた…


アタシは、すでに、食事を終えたのに、この食堂にいるのは、嫌なので、


「…教室に戻ります…」


と、即答した… 


「…だったら、出ましょう…」


と、村井が、言った…


「…ボクも一度は、職員室に戻らなければ、なりません…」


それゆえ、二人とも、席を立った…


席を立って、食堂を出た…


そして、別れた…


村井と別れた…


別れ際に、


「…清水さん、教室には、一人で、戻れますね?…」


と、聞かれたから、


「…大丈夫です…」


と、即答した…


それを、聞いて、村井は、安心したようだ…


「…だったら、ボクは、これで…」


と、言って、アタシを、置いて、スタスタと歩き出して、しまった…


アタシは、村井の背中を見つめて、その場に立ち尽くした…


ひとりぼっちになって、しまった…


そう、思った…


が、


すぐに、立ち直った…


立ち直りが、早いのが、アタシの自慢のひとつ…


いつまでも、グズグズと、していない…


いつまでも、感傷に浸っていない…


アタシは、気を取り直して、教室に戻ろうと、歩き出した…


しかし、


しかし、だ…


とんでもない高校に入ってしまったものだ…


アタシは、つくづく、考え込んだ…


まだ、この学校の居心地が、どんなものか、わからない…


しかしながら、この学校が、どんな学校なのかは、わかった…


十分過ぎるほど、わかった…


正直、わかりたくなかった…


わかりたくない、現実があった…


アタシは、面倒臭いのが、嫌い…


大嫌いだ…


その面倒臭いことが、起きる予感がした…


まあ、予感というと、大げさだが、なんだか、鬱屈した環境というか…


選抜クラス、一般クラスともに、問題を抱えている気がした…


選抜クラスは、金銭コンプレックス…


そして、一般クラスは、学力コンプレックスを、抱えている…


そして、アタシの見る限り、どっちのコンプレックスも根深い気がする…


選抜クラスは、学業一筋…


それは、あの食堂で、皆が、黙々と食事をする姿を見れば、わかる…


普通ならば、もっと、友達とおしゃべりをしながら、わいわいがやがやと、食事を取るものだ…


もっと楽しそうに、食事をするものだ…


それが、あんなふうに、食事を取るなんて…


アタシに言わせれば、ありえない光景…


さっきも、言ったが、テレビで見た、中国の受験戦争と同じだ…


そして、そんなことを、する人たちは、皆、内心では、とんでもないプレッシャーを抱えているものだ…


同時に、プレッシャーと、同じくらいの不満も抱えているものだ…


そして、もう一方の一般クラス…


これは、真逆に、やる気がない…


熱意がない…


ただ、学校に来ているだけ…


勉強もスポーツもやる気がない…


ただ、のんべんだらりと、毎日を過ごしているだけ…


卒業までの毎日を過ごしているだけだ…


これは、これで、つまらない…


毎日がつまらないだろう…


やはり、なにかしら、することで、毎日の活力が生まれる…


活力=やる気が、生まれるからだ…


それが、ないのが、辛い…


実に、辛い…


アタシは、今、アタシの置かれた状況をそう、見た…


そう、睨んだ…


この清水ユリの睨んだことに、間違いはない…


断じて、間違いは、ないのだ…


              <続く>


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