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暴走列車 清水ユリ 第2部  作者: トモサン


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13/16

暴走列車 清水ユリ 第2部 13


 なにしろ、アタシの取り柄は、この顔だけ…


 美人に生まれた、この顔だけだ…


 そして、このボディ…


 大柄なボディだ…


 それ以外は、ウリがない…


 取り柄がない…


 それが、わかっている…


 自分でも、痛いほど、わかっているから、痛かった…


 実に、痛かった…


 プライドが、傷付いた…


 が、


 そんなことを、言っていられなかった…


 隣の村井が、


 「…さあ、食べましょう…」


 と、アタシを急かしたからだ…


 それから、


 「…今日は、バイキング形式みたいです…」


 と、アタシに告げた…


 アタシは、村井が言うので、食堂をしげしげと、見た…


 たしかに、バイキング…


 テレビで、よく見るバイキングだ…


 よくホテルでやる、バイキングだ…


 アタシも、両親に連れられて、ホテルでは、ないが、バイキング形式のお店に行ったことが、何度かある…


 でも、さすがに、高校で、バイキングにお目にかかるとは、思わなかった…


 さすがに、思わなかった…


 アタシが、そう思っていると、村井が、


 「…さあ、食べましょう…清水さんも、好きな食べ物を選んで下さい…」


 と、促した…


 アタシが、グズグズしている暇は、なかった…


 今、この食堂にいる連中が、美人のアタシを無視して、アタシのプライドが、傷付いたこと…


 学校で、バイキング形式で、お昼を食べることなど、驚きがあったが、そんなことを、考えている暇はなかった…


 まずは、目の前のこと…


 目の前のバイキングで、並べられた食事を、選ぶことが、大切だったからだ…


 アタシは、まだ、若いから、太ることがない…


 だから、食事を遠慮することがない…


 おまけに、カラダも大きいから、好きなだけ、食べ物をとった…


 それを、見た、村井が、


 「…大丈夫ですか? 清水さん?…」


 と、アタシに声をかけて来た…


 アタシは、


 「…大丈夫です…」


 と、即答した…


 「…アタシは、食べることには、自信があるんです…」


 と、自信満々に、答えた…


 すると、アタシの言葉に呆れたのか、村井は、なにも、言って来なかった…


 アタシの言葉を、聞かなかったように、無視した…


 それから、村井は、席を見つけて、


 「…あそこで、食べましょう…」


 と、アタシに言って来た…


 アタシは、当然のことながら、


 「…わかりました…」


 と、言って、村井に従った…


 それから、アタシたちは、席に着くなり、食べ出した…


 おしゃべりも、なにもあったものじゃない…


 二人とも、黙々と食べ出した…


 アタシは、自分で言うのも、なんだが、食べるのは、得意…


 得意中の得意だ…


 自信がある…


 アタシは、我を忘れて、食事に夢中になると、ふと、周囲が、気になった…


 周囲のひとたちが、どうしているか、気になった…


 気になって、周囲を見た…


 食事をする手を止めて、周囲を見た…


 すると、同じだった…


 アタシと村井と同じだった…


 皆、黙々と食事をしているだけ…


 おしゃべりをする人間もいない…


 …たしか、これと同じような光景をテレビで見たことがあるな…


 と、アタシは、考えた…


 それから、すぐに、


 …中国だ!…


 と、思い出した…


 …中国の学校だ!…


 と、思い出した…


 中国の学校は、日本とは、比べ物にならないほどの学歴社会…


 とにかく、勉強、勉強、また、勉強の一日だそうだ…


 とにかく、朝、目が覚めた時から、夜、寝るまで、勉強…


 アタシなら、発狂するところだ…


 それと、似ている…


 だから、思わず、


 「…中国みたい…」


 と、呟いた…


 それを、耳にした村井が、


 「…どういうことですか?…」


 と、聞いた…


 アタシは、すぐに、


 「…テレビで見た、中国の学生みたいだと、思ったんです…朝から晩まで、勉強、勉強…それと、同じみたいだと、思ったんです…」


 と、答えた…


 すると、村井が、


 「…同じみたいじゃないですよ…」


 と、答えた…


 それから、すぐに、続けて、


 「…同じです…」


 と、答えた…


 「…同じ?…」


 と、アタシ。


 「…いや、もしかしたら、それ以上かも、しれない…」


 「…それ以上…」


 「…選抜クラスの生徒は、全員、親の期待、学校の期待を背負っている…だから、ここに清水さんのような美人がいても、見向きもしない…」


 村井が、いきなり、言った…


 これには、驚いた…


 まさか、この村井が、そんなことを、言うとは、夢にも、思わなかったからだ…


 アタシが、驚いて、村井を見ると、


 「…ボクだって、男です…美人は、好きです…」


 と、言って、笑った…


 …まさか、口説いている?…


 …美人のアタシを口説いている?…


 と、思ったが、違った…


 村井は、すぐに、続けて、


 「…こんな美人が、近くにいても、選抜クラスの生徒は、見向きもしない…それが、寂しい…」


 と、言った…


 「…寂しい? どうして、寂しいんですか?…」


 と、アタシ。


 「…だって、そうでしょ? 男なら、美人…女なら、イケメンが、そばにいれば、気になる…それが、人間です…でも、気になっても、行動ができない…それが、寂しいんです…」


 と、村井が、嘆いた…


 「…ここにいる選抜クラスの生徒は、親の期待も、学校の期待も背負っている…だから、余裕がない…勉強以外をする余裕がない…」


 「…」


 「…なにより、この食堂は、選抜クラス専用…普段は、教師も利用できない…」


 「…ウソ?…」


 思わず、叫んだ…


 「…ホントです…ボク以外、教師もいないでしょ?…」


 村井に言われて、周囲を見渡すと、村井が、言う通りだった…


 教師と思われる年配のひとは、誰も、いなかった…


 村井しか、いなかった…


 「…それに、ここの食事…」


 と、村井が続ける…


 「…立派なものでしょ? 一流の食材に・一流の料理人が、作っています…まずいはずがない…」


 たしかに、おいしい…


 まるで、一流の店に行ったように、美味しい…


 「…これも、選抜クラスへの接待…おいしい食事を食べて、少しでも、よい成績を上げて、一流の大学に入ってもらいたいと、いう気持ちから出た、学校の接待…それが、皆、わかっているから、余計に、勉強する…それゆえ、ここに清水さんのような美人がいても、誰も、見ないほど、勉強に集中する…」


 「…」


 「…皆、学校の名前を上げようと、必死になっている…いい大学に入ることが、学校のためであり、親のためであり、結局は、自分のためになる…それが、わかっているから、勉強する…」


 村井が、説明する…


 熱心に、説明する…


 アタシは、それを、聞いて、今日、ここにアタシを連れて来た目的が、わかった気がした…


 この村井が、アタシを、この食堂に連れて来た目的がわかった気がした…


 この村井…


 たぶん、アタシに、この学校の現状を見せたいに、違いない…


 選抜クラスと、一般クラスの現状を見せたいに、違いない…


 それには、この食堂に、連れて来るのが、一番…


 一番だからだ…


 他には、たぶん、接点がない…


 いや、あるが、それは、さっき聞いたコンビニ…


 コンビニは、接点がある…


 コンビニは、選抜クラスと、一般クラスが、平等に使えると、さっき、この村井が言ったからだ…


 だが、たぶん、コンビニでは、選抜クラスと一般クラスの差が、わからない…


 それが、この食堂では、わかる…


 一般クラスと選抜クラスの残酷なまでの差がわかる…


 なにしろ、選抜クラスは、こんないいものを食べているんだ…


 こんないいものを、たぶん、毎日食べているんだ…


 それだけで、恵まれているのが、わかる…


 一般クラスに比べて、はるかに、優遇されているのが、わかる…


 アタシは、思った…


 口の中に、いっぱいの食べ物を入れながら、思った…


 そして、そんなことを、アタシが、考えていると、村井が、


 「…でも、清水さん、彼らにも、コンプレックスがあるんですよ…」


 と、言った…


 思いもかけないことを、言った…


 これには、驚いた…


 コンプレックスがあるのは、わかる…


 誰にも、多かれ少なかれ、コンプレックスがあるものだからだ…


 だが、一体、どんなコンプレックスだろう?…


 選抜クラスに入れるほどの頭脳の持ち主が、持つ、コンプレックスは、一体、どんなコンプレックスだろう?…


 気になった…


 実に、気になった…


 なんといっても、選抜クラスに入る連中は、名門の高校野球の常連校と同じ…


 日本中から、頭の良い人間を、選んでとっている…


 そんな頭のいい、人間のコンプレックスって、一体、なんだろう?


 実に、気になった…


 村井は、そんなアタシの反応を、見て、面白そうに、言った…


 「…答えは、清水さん、アナタです…」


 と、言った…


 「…えーっ! アタシ!…」


 アタシは、思わず、大声を上げた…


 それほど、ビックリした…


 アタシって、ことは、やっぱり、外見…


 外見=ルックスだろうか?


 アタシは、村井の言葉で、今、食堂にいる、生徒たちの顔を見た…


 どんな顔をしているのか、見た…


 美人やイケメンが、いないのか、見た…


 それを、見た、村井が、笑いながら、


 「…顔じゃ、ありませんよ…」


 と、告げた…


 「…ルックスじゃ、ありません…」


 と、笑いながら、告げた…


 アタシが、なにを考えているか、わかったようだった…


 「…だったら、なんですか?…」


 アタシは、速攻で、聞いた…


 この頭のいい連中が、一般クラスの連中に抱いているコンプレックスを知りたかった…


 ぜひ、知りたかった…


 村井は、すぐに、あっさりと、言った…


 笑いながら、言った…


 「…それは、お金です…」


 と、言った…


              <続く>


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