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暴走列車 清水ユリ 第2部  作者: トモサン


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10/16

暴走列車 清水ユリ 第2部 10


  …どんな、男なんだ?…


 …アタシの担任は?…


 そう、思って、アタシは、見た…


 たった、今、アタシを美人だと、言った、担任を見た…


 初めて、マジマジと、見た…


 当然、この教室に入った瞬間、アタシの視界に入ったわけだが、どんな男か、気付かなかった…


 全然、眼中になかったからだ…


 この担任より、このクラスに、どんな生徒がいるのか、それが、気になっていた…


 その方が、重要だからだ…


 だから、気付かなかった…


 担任が、どんな男か、気付かなかった…


 アタシは、今さらながら、その担任を見た…


 しげしげと見た…


 …む、村井?…


 さっき、電車の中で、アタシの乳を揉んだ、村井?


 まさか、あの村井?


 …あの村井にそっくりだ…


 ウソ!


 一瞬、脳がパニクった…


 …まさか、そんなはずはない…


 …まさか、そんなバカなはずはない…


 あの村井が、担任なわけはない…


 あの村井は、たぶん、まだ、駅にいるか、警察に連行されたか、どっちかのはずだ…


 アタシは、考えた…


 必死になって、考えた…


 顔に、冷や汗を浮かべながら、考えた…


 …まさか、村井のはずは、ない…


 …そんなバカなことは、ない…


 そう、思いながら、この担任を見た…


 必死になって、見た…


 そして、出た答えは、違う…


 違うと、いうことだった…


 あの村井では、ないということだった…


 さっき、電車の中で、アタシの乳を揉んだ、村井ではないと、いうことだった…


 しかしながら、似ている…


 実に、似ている…


 他人の空似とは、思えないほど、似ている…


 アタシが、そう思っていると、この担任が、


 「…どうかしましたか?…」


 と、聞いてきた…


 当たり前だった…


 アタシは、とっさに、


 「…いえ、センセイとそっくりなひとを、さっき、駅、いえ、電車の中で、見まして…」


 と、言った…


 言い訳をした…


 「…そっくりなひと?…」


 と、担任は、驚いた…


 次いで、


 「…この世の中には、自分とそっくりなひとが、3人はいると、言われています…だから、そう考えれば、不思議じゃないです…」


 と、穏やかに、言った…


 だから、アタシは、


 「…失礼ですが、センセイの名前は? …まだ、聞いていないと、思いまして…」


 と、聞いた…


 すると、目の前の担任は、


 「…ボクは、村井です…」


 と、名乗った…


 それを、聞いて、アタシは、仰天した…


 「…む、むらい? ウソでしょ?…」


 と、叫んだ…


 大きな声で、叫んだ…


 それを、見て、村井は、驚いた…


 そして、


 「…なにを、驚いているんですか?…」


 と、聞いた…


 当たり前だった…


 アタシは、まさか、この学校に、来るときに、電車の中で、村井に乳を揉まれたとは、言えないから、とっさに、


 「…いえ、今朝、この学校に来るときに、ちょっとしたトラブルがあって、その相手が、村井さんと、いう名前で…」


 と、言った…


 まさか、この学校の教師をしていて、その名前が、村井だとは、言えなかったからだ…


 すると、それを、聞いた、目の前の村井が、


 「…村井という苗字なら、この学校には、いっぱい、いますよ…」


 と、言った…


 「…いっぱい、いる?…」


 アタシは、オウム返しに、言った…


 「…そうです…いっぱい、います…」


 と、目の前の村井。


 アタシが、なにも、言わずに、驚いていると、


 「…この学校の創設者が、村井さんです…」


 と、目の前の村井が、言った…


 アタシは、それを、聞いて、即座に、


 「…村井さんが、創設者?…でも、この高校は、沢村学園じゃ…」


 と、言った…


 当たり前だった…


 村井は、それを、聞いて、頷いた…


 「…たしかに、そうです…沢村学園です…」


 と、言って、頷いた…


 それから、


 「…でも、沢村は、夫の苗字…妻の苗字は、村井です…」


 と、答えた…


 妻の苗字?


 意味が、わからなかった…


 夫の苗字が、沢村で、妻の苗字が、村井…


 それが、なんの関係があるのだろうと、思ったからだ…


 この村井は、アタシの疑問を見透かして、


 「…要するに、創業者が、入り婿だったんです…」


 と、種明かしをしてくれた…


 「…入り婿?…」


 「…そうです…」

 

 「…」


 「…要するに、創業者の元の苗字が、沢村…それが、婿に入って、村井になった…」


 「…だったら、どうして、村井学園じゃないんですか?…」


 「…爺さんの意地ですよ…」


 「…爺さんの意地?…」


 「…ボクは、その創業者の孫で、ボクの血縁者が、この学校に、何人もいます…皆、名字が、村井です…」


 「…村井…」


 「…爺さんは、入り婿で、ばあさんに頭が上がらなかった…でも、この学校の名前だけは、沢村にしたかった…自分の元の苗字にしたかった…それが、爺さんの意地です…」


 村井が説明した…


 納得のできる説明をした…


 要するに、この沢村学園は、名前こそ、沢村だが、実際は、村井一族が、牛耳っているということだ…


 それが、わかった…


 それに、納得した…


 そして、それに納得することで、あの村井と、この村井が、似ていることにも、納得した…


 たぶん、兄弟かも、しれないからだ…


 いや、


 兄弟でなくとも、従兄弟とか…


 いわゆる、村井一族で、教師が占められている可能性が高い…


 教師も、そうだが、理事長等、この学園を実質的に運営するのが、おそらく、村井一族なのだろう…


 そう、思った…


 そう、気付いた…


 そして、アタシが、そう、考えていると、この村井が、


 「…清水さんは、あの席で…」


 と、教室の後ろの席を指差した…


 それから、


 「…清水さんには、申し訳ないが、清水さんは、カラダが、大きい…だから、後ろの席で、お願いします。前の席にすると、清水さんの後ろの生徒が、前が、見えなくなってしまいますから…」


 と、説明した…


 アタシを、教室の後ろの席に、座らせる、理由を説明した…


 アタシは、


 「…わかりました…」


 と、答えた…


 答えて、教室の後ろの方に、歩いて行った…


 これは、あるある…


 清水ユリ、あるある、だ…


 アタシは、昔から、背が高い…


 子供の頃から、背が高い…


 すでに、幼稚園のときから、背が高い…


 男の場合は、途中から、背が高くなる場合があるが、女の場合は、それがない…


 背が高い女は、小学校どころか、幼稚園のときから、背が高い…


 真逆に、男の場合は、中学の後半や、高校に入ってから、いきなり、背が高くなる人も多い…


 まあ、背が低いままでいる男も、いるが、背が途中で、別人のように、高くなる男もいるということだ…


 アタシは、そんなことを考えながら、席に着いた…


 自分の席に着いた…


 席に着いて、すぐに、アタシは、前後左右の生徒に、男や女の区別なく、


 「…よろしく、ね…」


 と、満面の笑みを振りまいた…


 この清水ユリの満面の笑顔だ…


 男が、泣いて喜ぶ、満面の笑顔だ…


 が、


 その反応が薄かった…


 実に、薄かった…


 アタシが、愛想を振りまいた、アタシの席の前後左右の生徒は、ただ、


 「…どうも…」


 と、言って、軽く、会釈をするだけで、反応が、薄かった…


 …これは、一体、どうしたことだ?…


 この美人のアタシが、満面の笑みを浮かべて、挨拶をしたんだぞ!…


 嬉しくないのか!


 とくに、男子…


 こんな、美人に、ニッコリとされて、嬉しくないのか?


 アタシは、悩んだ…


 本気で、悩んだ…


 が、


 それは、さておき、反応が、薄いのは、相変わらずだった…


 アタシの周囲の席の生徒は、大半が、自分のスマホを見ていた…


 いや、


 ただ、見ているだけ…


 夢中になって、見ているわけでもない…


 ハッキリ言えば、暇つぶし…


 暇つぶしに、見ているだけだ…


 しかしながら、今は、授業中…


 ただいま、授業中だ…


 にも、かかわらず、大半の生徒が、教師の話を聞いていない…


 ほぼ、無視している…


 もちろん、一部には、授業に集中しているものもいる…


 しかしながら、それは、少数…


 ごく少数の生徒だ…


 そして、そんな生徒の態度を知りながらも、この教師の村井は、授業を進めている…


 淡々と、授業を進めている…


 それは、ちょうど、選挙の演説に似ている…


 ほぼ、誰も聞いていないにもかかわらず、演説している…


 選挙に立候補した候補者が、淡々と演説している…


 それと、似ている…


 もはや、有権者の反応など、どうでもいい…


 下手をすれば、一人カラオケに近い…


 自分だけ、満足している…


 それと、似ている…


 アタシは、この光景を見て、考えた…


 …もしかしたら、これが、一般クラスの現実か?…


 と、気付いたのだ…


 これが、寄付金目当てに、この学校に入った生徒の現実か!


 と、気付いたのだ…


 この一般クラス…


 これは、寄付金集めのための生徒…


 この生徒たちの親から、高額な寄付金を募り、選抜クラスの生徒たちの授業料等の面倒を見る…


 そのために、集めた生徒…


 当然、それが、わかっているから、集めた生徒は、皆、脛にキズを持つ身だろう…


 アタシのように、前の学校を追い出されたとか、他に行き場ないひとたち…


 これは、素行に、問題があったり、頭に問題があったりするのが、大半だろう…


 だから、当然、やる気がない…


 真剣に、授業を聞く気がない…


 そういうことだろう…


 まあ、真剣に授業を聞いていても、授業がさっぱりわからない頭の持ち主も多いだろう…


 ちなみに、アタシも、その一人…


 授業の内容がわからないから、授業を聞かない…


 その無限ループ…


 授業の内容が、わからない…


 だから、授業を聞かない…


 余計に、授業が、わからない…


 その無限ループだ…


 そして、それを、考えると、それが、この一般クラスの現実…


 今、アタシのいる、一般クラスの現実だと知って、暗澹たる気持ちになった…


 正直、落ち込んだ…


               <続く>


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