第82話 死後霊!
前世もふくめて、実は葬式に出るのは初めてだった。
だから、現実のそれと比較はできないのだけど、この村で行われた葬式は簡素に思えた。
二度と目覚めることのない彼らが炎に包まれると、なんらかの木の枝を細く削ったものが全員に配られ、それを順番に火にくべていく。そして、その後はお経をあげることもなく、ただひたすらに揺れる炎と煙を見送るだけ。
特別な言葉も動作もないけれど、村人たちが一堂に会する光景は、それだけで一つの儀式にも見えた。
声を上げて泣く人、無言ですすり泣く人、静かに手を合わせる人、それを見ている自分。
あの煙が知り合いじゃなくて良かった。そう思った。
そう思ってしまう自分が、ひどく冷たい人間のように思えた。
「辛気臭い顔してるな」
声に振り向くと、見覚えのある男が立っていた。
自警団の一員で、祭り当日には歌唱大会を開くといっていた男だ。
亡くなった自警団の一人は彼の弟らしい。
「えーっと、その」
こういう時に適切な言葉がなんなのか知らない私は、しどろもどろになってしまう。
「お前たちには礼を言っとかなくちゃと思ってよ」
「お礼?」
見に覚えがない。
結局、防衛では犠牲が出てしまったし、私に至っては村外れで弍鬼と戦っていたから、自警団の応援に行けたわけでもない。
「なに不思議そうな顔してんだ。もし、お前たちが鬼の群れに気づいてなかったら、これくらいじゃ済まなかったんだ。感謝して当然だろ」
「……」
「今回、死んだのはみんな自警団の奴だ。いざって時に自分が盾になろうって覚悟はできてた奴らだ。お前がしめっぽくなる必要はないぞ」
「……別に、しめっぽくなってないけど」
「そうか? ならいいが」
自警団の男はいったん口を閉じたあと、思い出したように語り出した。
「人はたとえ肉体が滅びても、魂までは死なないらしいからな。案外、俺の弟だって今頃、魂だけで空を飛び回ってるかもしれねえぜ」
「幽霊になるってこと」
「おいおい、あいつらは自警団だぞ。せめて、守護霊っていってくれよ」
死者が霊となる。
現代ではオカルトの類と切って捨てられそうな話も『くくり姫』というゲームにそっくりなこの世界では、充分ありえる話なのかもしれない。




