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第81話 終幕!

「おしゃべりもこれくらいにして、そろそろ試合再開といこうかの」


 焼け焦げた肌が剥がれ落ちて、赤色に戻った弍鬼が口を開くと、どこからか声が聞こえてきた。


「弍鬼、撤退だ」


 弍鬼の後方から現れたのは、もう一人の鬼だった。

 赤い肌に折れたツノと弍鬼と同じ特徴をしているが、その体格の厳つさは比較にならない。

 弍鬼が少女であれば、その鬼は大男だ。


「はぁ? 今、いいところなんじゃ。水を差すな」


 苦虫を噛み潰したような表情とはまさにこのことだろう。

 弍鬼は思いっきり顔をしかめたけど、対する大男の鬼は淡々としている。


「残念ながら、時間切れだ」

「……何があった」

「俺たちの襲撃がバレていた」

「劣勢なのか?」

「いや。だが、このままではいつ連盟が来てもおかしくない。その前に退却したい」

「……」

「行くぞ」


 大男の鬼は、弍鬼の左肩に手を置いたけど、


「いやじゃ」


 弍鬼はそれを突っぱねた。


「絶対にいやじゃ。まだ、儂は酒を飲んどらん。これで帰ったら、何のためにきたかわからぬわ」

「酒なら奪った」


 大男が瓢箪を掲げた。


「むぅ。じゃが、人間をまだ食っておらぬ」

「良い機会だ。そんな悪趣味な嗜好は矯正しろ」

「やれやれ、これじゃから食わず嫌いはな。食えばわかる、美味いぞ?」

「味ではない、倫理の問題だ」


 ……鬼にも倫理観とかあるんだ。


「人が集まってくる前に行くぞ」

「せめて、あの小童を食ってから」

「やめとけ。そんな死にかけで行っても、返り討ちにあうだけだ」

「やじゃ! 儂はまだ――」


 大男が手刀を振るうと、弍鬼はすとんと意識を失った。ぐらりと倒れかかった体を受け取った大男は、こちらを一瞥だけすると、何も言わずにその場を去っていった。


「どうやら、助かったみたいでやすね」

「そうね」


 そうして、鬼たちの襲撃は終わった。





 幸いにも自警団の応援に行った他のみんなは、酷い怪我を負うこともなかった。

 私たちの中で一番、怪我が酷かったのは護衛の男だ。


 でも、それは村の人々に損害がなかったことを意味しない。


 村の死亡者は八人。

 いずれも自警団の人員だ。


 連盟が来たときにはすでに鬼たちは逃げた後で、姿はなかった。

 連盟は鬼の追跡、捜索のために小戸羽村をすぐに離れた。

 彼らが来るからこそ鬼たちは逃げ出したわけで、そういう意味では小戸羽村はたしかに連盟に救われたのだけど、村の人々の心情はそう簡単に割り切れるものでもなかった。


 もっと早く来てくれたなら。

 口には出さずともそう思う人はたぶんいただろうし、それを踏まえると彼らが村にほとんど滞在しなかったのは良かったのかもしれない。


 結局、祭りは延期となり、身を挺して村を守った彼らの葬式が先に行われた。

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