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第79話 紅嵐と豪雷

「血が足りぬな」


 弍鬼はそうぼやくと、千切れていない右腕を真横に伸ばした。


「戻れ」


 右手の延長線上、凛之助と戦っていた血の人形が、血液に戻り、弍鬼の傷口へと吸い込まれていく。

 嫌な予感がする。

 ボス級の敵がこういう動作をとる時は、大技が飛んでくる予兆だと相場が決まっている。


 ――だとしたら、その前に終わらせないと。


「護衛! 急いで仕止めて!」

「お嬢さま、マズいですぜ。足が動きやせん」

「え、なんで」


 護衛の男に近寄ろうとした私の足も動かなかった。

 提灯で足元を照らすと、そこには血溜まりが私の足をのみ込んでいた。

 地面を覆う大量の血は私だけでなく、護衛の男の足元まで広がっている。

 そして、血溜まりの中心には護衛の男が切り飛ばした弍鬼の左腕が落ちていた。


「切られた左腕を中心に術を展開したのか」


 視界が良くないせいもあって全く気づかなかった。

 背筋を嫌な汗が伝う。


「お嬢さま、あとであっしの治療、頼みやすぜ。足だけに」

「は?」


 護衛の男はそう告げると、弍鬼に向かって飛び出した。

 その姿に、足首から先はついていない。


 護衛の男の切り離された足首が、血溜まりの中に沈んでいた。


「はははっ! お主、いかれておるなぁ!」

「そいつはお互いさまで」


 護衛の男が赤く濡れた小刀を振りかざす。

 だけど、


「ちと、遅かったのう」

「じゅ、術式復水【瀑布】」


 弍鬼が振り上げていた腕を下ろした。

 爆発、または暴風。

 そうとしか表現しない純粋な暴力の波が私たちを襲う。

 辛うじて呼び出した水の壁は瞬く間に紅く染まり、すぐに決壊した。


 とっさに顔を覆った腕に鋭い痛みが走る。

 それを皮切りに、斬りつけられたような痛みが全身に刻まれていく。

 まるで刃物が飛び交う嵐の中に身をさらしているような感覚。

 血溜まりに足を取られ動けない私は、頭だけはなんとか守れるようにと、その場にうずくまった。


 間に合わなかった。

 もう、終わりだ。


 そう思った時だった。


「術式逆雷! 【雷槌落とし】!」


 ゲームで術式逆雷を使う時、育成の方針は大まかに二つある。

 一つは、状態異常の付与率やレパートリーを充実させて、デバフの専門家にするもの。

 そしてもう一つは【雷槌落とし】で火力を出すもの。


 【雷槌落とし】は命中が低く、霊力の消費も大きいが、その威力は侮れない。

 特に『対象に付与されている状態異常の数に応じて威力が跳ね上がる』ことを踏まえると、パーティ単位で状態異常を扱えるなら、かなり強力だ。


 私の使う術式、復水には敵の妨害としては心許ないけど毒のような状態異常がいくつもある。


 私が弍鬼に与えたいくつもの状態異常。

 護衛の男が削った体力。

 そして、弍鬼が大技を放つために止まった動き。


 積み重ねてきた状況が導き出す結論。


 そう。

 この雷は、決してかわせない。


 一筋の雷が轟いた。


 弍鬼の悲鳴と落雷の音の混じった轟音があたりに響き渡る。


 気づけば紅い嵐は過ぎ去り、その中心地には黒こげの鬼が倒れていた。

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