第73話 大人たちの決定!
どんな方針を立てるにしても、まずはみんなと情報共有したいとなり、私たちと自警団、そこに村長たち大人をふくめた面々は集会所に集まっていた。
正直、こうなってくるともはや子供の出る幕はない。そもそも、私たちって村の外の人間だしね。
それでも、この場に私たちがいるのは、話し合いへの参加よりも、村の方針を知っておく意味合いが強い。
「村の近くに鬼がいる」
それを聞いた大人たちの反応は、初めの方は懐疑的だったり、理解できずにポカンとしていたり様々だったけど、護衛の男が嘘をついていない(つく理由もないしね)と分かるとこれからの事に目を向け始めた。
話の流れはおおむね予想通りだった。
街の妖祓連盟に助けを求めて、彼らが到着するまで村で守りを整える。
鬼の拠点位置が割れているとはいえ、相手の戦力までは定かではない。明日か明後日には妖怪退治専門の集団が助けに来てくれるとなれば、そりゃあ誰だって下手に手を出さず大人しく待つことを選ぶ。
ただし、気がかりなことが一つ。
「あの、祭りは延期しないんですか?」
村の大人たちはそろって顔を見合わせた。
「今まで頑張ってきたのに、ここで延期はなあ」
「祭り騒ぎに水差したかねえな」
「お祭りくらいは楽しみたいわよね」
「延期したとして、村のみんな全員で警備にあたることもできないですし」
「小戸羽村の伝統を途切れさせるわけにはいかぬじゃろうて」
口々に発せられる言葉はどれも祭りの開催を望むものだ。
さすがの私もこの空気で「祭りを延期しましょう!」とは言えない。というか言っても効果ないだろう。
私が尋ねたのは、祭りでみんなが疲れた後に、村を襲撃されたらヤバイよなと思ったからだ。でも、鬼たちがそもそも村祭りがあることを知っているのかも、そこを狙って仕掛けてくるのかもわからない。
大人たちの様子を見る限り、せっかくの祭りが延期になって村の空気が悪くなる方が余程問題になりそうだし、ここは静かにしておこう。
私は口を閉じてすごすごと後ろにさがったのだった。
◆
結局、妖怪退治は中途半端に終わり、話し合いも途中から聞いているだけだったけど、それでも日はもう沈もうとしている。
「はぁぁー、今度は鬼かよ」
私たちが東藤宅に帰るなり、凛之助が盛大なため息をついた。
「なんかお前らと一緒にいると、ことごとく危ない妖怪にでくわすよな」
「そう言われるとそうですわね」
「たしかに」
初級試験で黒雷と遭遇した時も、遠征中に白龍に襲われた時も、私と希里華と凛之助の三人だった。
「凛之助はそういう体質だしね」
「ルリさまの仰るとおりですわ」
「なんで俺なんだよ! 言っとくけど、俺がそうならお前らだって同じだからな」
いやあゲームをプレイしている私からすると、あながち間違ってもないんだな、これが。
『くくり姫』の凛之助はとにかく妖怪と対立するような描かれ方をしているから、それだけ、厄介な妖怪には絡まれがちだ。
「まあ、いいや。腹減ったし、飯食おうぜ。レン呼んでくるわ」
凛之助はそう言ってバタバタと駆けていった。
その後ろ姿を見て、また追い返されそうだなんて考えていると、姫子が私の肩をトントンと叩いた。
「ねえ、瑠璃ちゃん。私たちは村の警備を手伝わなくていいのか?」
「あぁうん、さすがに村人でもない子供にそこまで危険なことをさせるわけにはいかないって」
「……妖怪退治は危険じゃないって?」
「少なくとも鬼を相手にするよりは」
「鬼ってそんなに危険なんだ」
村周辺の妖怪よりは圧倒的に強いのは確かだ。倒せなくはないけど、できるなら相手したくない。
ふと、ドタドタと凛之助の走る音が聞こえてきた。
案の定、追い返されたのだろうか。
だけど、襖を開けた凛之助の顔は焦燥感で包まれていた。
「レンがッ、部屋にいねえ!」




