第71話 祭りにそなえて妖怪討伐!
妖怪に追われて逃げてきたこともあってかさすがに蓮太郎も再び村外れに向かおうとはしなかった。
大人しく部屋へと戻る蓮太郎を見届けた私がしばらく読書時間を潰していると、ようやく眠気が襲ってきて、寝ることができた。
次の朝がやってきた。
夜中に私や蓮太郎が外に出たことはだれも知らないようで、何事もなく朝食を終えた。
今日は村祭りの前日。気合を入れて妖怪退治をする日だ。
私たちは村の自警団の元へと向かった。
昨日、手伝いをしていた姫子と百、そして小戸羽村生まれの凛之助は自警団の面々と面識がある。
そうでない私と希里華、六郎、そして後方保護者面している護衛の男は、大人しく流れに身を任せていた。
結果、私たちは二人一組(私にはもれなく護衛の男がついてくるけど)になるよう分かれて、それぞれ自警団の手が足りない部隊について行くことになった。
姫子と六郎、百と希里華、私と凛之助(と護衛の男)のペアだ。
「……ぜんっぜん、ものたりねぇよ」
「なに言ってんのよ、充分活躍してるじゃない」
私たちの隊は極めて好調、絶好調だ。
私が水の壁で守りつつ、凛之助が麻痺やスタンで動きを止めて、その隙に自警団と護衛の男の総攻撃で一掃。
連携はしっかり取れているし、実際に成果もかなりあげている。
それでも凛之助が消化不良気味なのは、やっぱり自分で倒した妖怪が一匹もいないからだろう。
凛之助が文句をたれていると、偵察に行っていた護衛の男が戻ってきた。
「皆さん、二つ首の犬っころみたいな妖怪がこっちに向かって来やすぜ」
「また【双狗】?」
この辺りで出てくる妖怪は基本的に『くくり姫』をプレイした時と同じ顔ぶれだけど、双狗だけは見覚えがない。
それなのに、これで三匹目の遭遇。
五年後と今では、妖怪の分布も違うということなのだろうか。
私が不思議に思っていると、自警団の一人がつぶやいた。
「最近になって、急にその犬の妖怪を見るようになったんだよな。あと少しで勝てるってなると決まって逃げ出すから、相手するのがとにかく怠いんだよ」
最近という言葉が気になった私は、思わず声をかけていた。
「それって今まではもっと少なかったってこと? それとも、そもそも見なかったの?」
「見なかったな。一週間前くらいに初めて見たぜ」
「……初めて」
自警団の男は軽快な口調で続けた。
「すぐ逃げるから倒せねえけど、今回は凛之助のおかげで動きを完封できるからな。手際良く倒せて今日は気分がいいぜ」
「…………」
本来、出現しないはずの妖怪が湧くようになった。
もし、それが『くくり姫』のプレイ中であれば、その理由は一つ。
クエストイベントの発生だ。
何らかの事情で現れるようになった特殊な敵モンスター。それを一定数討伐することでクリアとなる類のクエスト。
この世界がどこまでゲームに忠実かはわからないけど、今までいなかった妖怪を急に見かけるようになったのだ。それなりの理由がある方が自然だ。
「くっそぉ、相手が犬ってことは俺の役割はまた足止めかよ!」
「そう言うなよ、お前のおかげで俺たちみんな助かってるんだぜ」
「それはそうかもしんないけど……さすがにずっとこれじゃスッキリしないっつうかさ」
「皆さん、まだ戦ってもいやしないうちに気を抜くのはよくありやせんぜ」
「お、そうだな。その兄ちゃんの言う通りだ」
「……あの、みんな。ちょっといいかしら」
私は周囲の会話をさえぎった。
会話の流れをぶった切ったことで、一瞬場が静まり返る。
そして、みんなが一気に私の方を向いた。
その場の全員の視線が集まっていることを確認して、私はゆっくりと口を開いた。
「次の戦い、少しお願いがあるの」




