表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/88

第57話 赤点同盟!

 ザーザー降りの雨の中、番傘が二つ。

 姫子が赤色を、私は紺色を差していた。


 二人でくるくるりと水を飛ばし合いながら、向かう先は稽古場。

 やがて、屋根の下に入り、傘を閉じた私たちは、そろって空一面を覆う雨雲を見上げた。


 姫子がつぶやいた。


「街の外で降られなくてよかったな」

「ホントね」


 あと一日でも設営拠点からの出発が遅れていたら、雨の中を旅しなければいけなかったと思うとなかなかにゾッとする思いだ。


 そんなことを考えながら、雨露を払った傘を立てかける。


「まず、姫子を教務室に連れてくるように言われてるから、えーっと、こっちね」


 私は姫子の手をぐいと引っ張って、久しぶりに廊下を駆け出した。





 姫子を先生に引き合わせた私は、教室へと向かっていた。

 懐かしのクラスメイトたちはどんな顔をするかな、なんて思いながら扉を開ける。

 パッと目に飛び込んできた桃色の髪の少女に声をかけた。


「モモ! 久しぶり!」

「……瑠璃!?」


 荷物を置いた私は、目を丸くする少女、山桜百の元に近寄った。


「行方不明だって聞いてたけど」

「ついこの前まではね。でも、こうしてなんとか無事に帰ってきました」

「よかった。本当に無事でよかった」


 百は首元に霊石のネックレスをのぞかせながら、胸を撫で下ろした。


「……心配かけちゃったね」

「本当よ! でも、戻ってきてくれてよかった。わたし一人だと、やっぱり、さみしかったし」

「一人?」


 百の発言に首をかしげながら、周りを見回し、私はようやく気づいた。


「え、なにこれ、モモ以外に知ってる人がいないんだけど」


 転生してから一ヶ月程度しか通ってないとはいえ、同じ学び舎で机を並べた仲だ。クラスメイトの名前と顔が一致せずとも、見覚えくらいはあるはずである。

 それなのに、どの顔もまったくこれっぽっちも記憶にない。

 えっ、なにこれ、こわっ!


「初級試験に合格した人は上の学級に移動したから」

「あー、そういうことね」


 どおりで希里華も凛之助も六郎もみんないないわけだ。

 そして、落第者の私たち二人は相変わらずここにいると。


「あれ? でも、落ちたのって私たちだけじゃないよね。他にも不合格だった子はそこそこいたと思うけど、その子たちは?」


 百は目をそらした。


「……やめたよ」

「え?」

「私たち以外はみんな辞めちゃった」

「え……なんで」


 あまりに予想外な答えに、考えるよりも先に疑問が口をついた。

 右手で首飾りを触りながら、百が答える。


「中級以上ならまだしも、初級で落ちるのは……その、才能がないってことだから、そこで抜ける人がほとんどなの。お金だってかかるし」


 将来への投資なのだから、あまり期待できないことな時間もお金も費やせないというのは納得できると同時に世知辛さを感じてしまう。


「……百ん()は大丈夫なの?」

「うん、私がやりたいのなら応援するから、気にするなって」


 心葉家の私が言うのもなんだけど、やっぱり裕福な家は心に余裕があるんだなあ。


 しかし、よりにもよって残ったのが討伐数ゼロ匹を叩き出した私たち二人だけというのは、滑稽というかなんというか……。


「ま、赤点同盟として今後もよろしく」


 うまく言葉にできないけど「ままならないな」なんてことを思いながら、つぶやいたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ