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第40話 討伐隊参加!

 私、希里華、凛之助の三人とも蜃鳴岬(しんめいみさき)の討伐隊に参加した。

 私一人だけ参加なんてことにならなくて本当によかった。


 討伐隊は二、三十人程度で構成されているらしい。

 らしいというのは、実際に全員が集まった場を見ていないからだ。

 今、私たちは妖祓連盟の拠点にいるのだけれど、その中の誰が討伐隊の参加者かなんてわかるわけもない。


 私たち三人は一つの班がまとめて預かることになっているようで、説明もそこそこに指導班の元に連れて行かれる最中だった。


 案内役の男性に連れられ、同じ柄の和服に身を包んだ人々の中を歩いて行く。


 人見知りという言葉を知らない凛之助は、案内役に何度も話しかけていたけど、詳しいことは指導員に聞いてくれとあしらわれていた。

 さすがの凛之助も、そう言われてまで会話を続ける度胸はないようで、途中からの私たちはほぼ無言だった。


「……それでは荒銀(あらがね)班長、あとはお願いします」

「ええ、かしこまりました」


 連れて行かれた先の部屋には、銀縁メガネが特徴的な男、荒銀(あらがね)杏次(きょうじ)がいた。

 稽古場の応接室で会ったことがまだ記憶に新しい。


「またお会いしましたね。では、改めて名乗らせていただきましょうか。あなた達の指導を努めさせていただく班長の荒銀杏次です。そして、こちらの二人が指導班の班員です」


 杏次が手で示した先には、二人の男女がいた。

 男性は机に突っ伏するように眠り、おかっぱの女性はそれを起こそうと、頭をべしべし叩いている。


「おい、研修の子たちがきたぞ。はやく起きろって、この寝坊助!」

「ふぁ……なに、もうきたの?」


 男性はゆっくり顔をあげると、寝ぼけ眼をこすり、一際大きなあくびをした。

 元気のなさそうな姿の中、寝癖のついた前髪がだけが元気に跳ねている。


 隣の女性は、彼の寝癖をしばらく手で押さえていたけれど、どれだけ押さえても重力に逆らい続ける前髪を見て、やがて諦めたように、私たちへと顔を向けた。


「アタシは白小町(しらこまち)紫乃(しの)。で、こっちの寝坊助は歌方(うたかた)弥仁(やひと)。これからしばらく一緒にいるわけだし、まあ、仲良くやっていこうよ」

「ふわぁ、おはよう…………弥仁です。よろしくね」


 緊張感の欠片もない、気の抜けた雰囲気があたりに漂っていた。

 凛之助が私の肩を叩いた。


「なあ、だいじょうぶなのか? この人たち」


 あのね、そういうことは思っても言わないの。

 しかも、わざわざ私に話を振らないでくれ。


「凛之助、少し黙ろうか?」


 私は、これ以上口を開くなと凛之助を睨みつける。


 そんな私たちの後ろで、小さな笑い声があがった。

 振り向くと、杏次が緩んだ口元を手で押さえていた。


「東藤くんでしたか、君は正直ですね。でも、大丈夫ですよ。安心してください。こう見えて二人とも戦いになれば、それなりに頼りになりますので」





 蜃鳴岬(しんめいみさき)に向けて討伐隊の移動が始まった。

 目的地はまだ遠いとはいえ、途中にも妖怪はたくさんいる。街では夜にしか出ないが、人里離れた場所では昼でも構わずに現れる。

 出てくる妖怪が弱い分、私たちが経験を積むのに最適なので、道中が一番忙しくてキツくてかもしれないと杏次班長は言っていた。


 ……一度、始まってしまえば、帰りたくても帰れないとも。


「キツい。辛い。帰りたい。やってらんない。もう、嫌だぁ。キリカ! 二人で一緒に逃げようよぉ!」

「る、ルリさま、落ち着いてくださいませ」


 張り巡らされた陣幕の中、食事の時間も終わり、私は希里華にくたくたとしなだれかかっていた。


「くうぅ、指揮官なら、見てるだけですむかもなんて思ってた私が甘かった」


 私たち三人には、それぞれ指導員が一人ずつつく形となっていた。

 私には、銀縁メガネの班長、荒銀杏次。

 希里華には、さばさばとしたお姉さんの白小町紫乃。

 凛之助には、いつ見ても眠そうな歌方弥仁。


 指揮官の経験を積むだなんて言っていたから、てっきり、みんなが戦う姿を後方から眺め、指示を出すのかと思っていたけど、ぜんぜんそんなことはなかった。


 銀縁メガネは私がどんな妖術を使えるか確認するや否や、


『討伐数ゼロ匹とのことでしたから、妖術を全く使えない可能性も想定していましたが、そんなことはないようですね。安心しました。型が復水(おちみず)なのも、支援に適していてとてもいいです』


 とつぶやいて、私を戦場に放り込んだ。


 そこからの私は、妖怪と戦うみんなを強化して、回復して、強化して、回復しての繰り返し。

 これがゲームなら、せいぜいボタンを押す指と、画面を見る目が疲れるくらいだけど、生憎と今は現実だ。

 戦闘時は常に動き回って、気も抜けないし、戦闘が終わったら終わったで徒歩での移動と反省会があるから、体の休まる暇がない。


 やっと訪れた夕食の時間では、凛之助ですら疲れ果てていたのだから、遠出する時は駕籠(かご)に乗るようなお嬢さまたる私がへとへとになるのは、そりゃもう当たり前だ。


「ぜんぜん指揮官要素なかったんだけど! ただひたすら命令されるままに妖術唱え続けただけなんだけど!」

「わたくしも似たようなものでしたわ」

「じゃあ、逃げようよぉ」


 私は再び希里華にすがりついたが、緑髪の少女は困り顔を浮かべるばかりだ。


 ……さては、私の「逃げよう」を冗談だと思っているな。

 希里華がうなずいたら、すぐさま実行しようと思っているくらいには本気だぞ。

 一人でやろうとまでは思わないけど。


「はぁ、憂鬱すぎる」


 初日からこんなに疲れ果てて、若干、筋肉痛すらありそうな状態。

 こんなで私はやっていけるのか?

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