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第35話 薬漬け!

 将大(まさひろ)が訪れたその日の夜、受け取った巻物を自室の文机に広げて、黒雷と共に覗き込んでいた。

 地図に記されたバツ印の上に、スタンプを押すように肉球が置かれる。


「本当にこのいずれか場所に竜が居るのか?」

「かもしれないってだけよ」


 あくまで将大の予測だ。

 黒雷には伝えてないけど、将大が言うには、ただ単に竜の居そうな場所に当たりをつけたわけではないらしい。

 そこに竜がいるかいないのか、それを知ることで今後の研究材料が増えるような、そういう場所を選んでいるとのことだ。


 バツ印の中には、すでに竜はいないかもしれないけど、居た痕跡があるはずという場所も多く含まれている。


 一度でもコンタクトを取れればそれでいい黒雷と、竜の出現予測システムを作りたい将大。

 二人の目的は竜を探すという点では同じだけど、少しばかりズレている。


 ……まあ、面倒なのでわざわざ黒雷にそれを言ったりはしないけど、それでも一応、将大から聞いて私なりに判断した優先順位を巻物に記していく。


「とりあえず、竜がいそうな場所の順番はこんな感じね」

「なるほど。それで、出発は何時(いつ)だ?」

「え、そりゃあんたの好きにすればいいんじゃないの」


 何言ってるんだこいつ。

 そう思って、私が黒雷を見つめると、黒雷もまた私を見つめていた。


「……まさか、私についてこいって言ってる?」

「そのつもりだが…………いや、いい。我だけの方が早く移動できる」

「でしょうね」


 むしろ、最初に私を連れていこうと考えていたのがおかしい。

 お月ちゃんに散歩してもらう毎日が続くうちに、ペット根性でも染みついたんだろうか。


 トントンと襖を叩く音が聞こえ、私は巻物を片付けた。


「お嬢さま、本日のお薬をお持ちいたしました」

「はーい、入っていいわよ」


 女中のお貴がお盆を手にして部屋に入ってきた。


「あら、犬吉はここにいたのですね」

「ええ、ちょっと遊んであげてたところ」


 自称大妖怪の黒雷は、この家では犬吉と呼ばれている。

 名付け親は当然、私だ。

 黒雷には「適当すぎる」「黒雷と呼べ」と散々に文句を言われたけど、名付けてしまった以上はしかたない。


 私の「遊んであげた」という言葉を聞いて、黒雷は抗議するように吠えたけど、お貴の目には喜んでいるように映ったようだ。

 彼女はほほえましげな顔のまま、私の手元に薬の入ったお椀を差し出した。


 受けとって、ぐいと(あお)る。


「うぇ、やっぱりマズい。……ねぇ、これ、ホントに毎日飲まなきゃだめ?」

「もちろんでございます。良薬は口に苦し、とおっしゃいますでしょう」


 そうは言われても、マズいものはマズい。


 転生したばかりの頃は、この薬は風邪薬の類だと思っていたけど、どうもそうではないことが最近になって分かった。


 効能は「霊力の流れの活性化」「霊力の器の拡張」。つまるところ、私の持つ霊力の質と量を高めるためのドーピング薬みたいなものだ。

 実際、やたらとお腹が空いたり、眠りが浅かったりするのは、この薬の副作用なんだとか。


 他にも薬とは関係ないけど、私の髪がやたらと長いのも、髪には霊力が宿るかららしい。どうやら、私の暮らしは、私が思っている以上に「優れた妖祓師」になるための暮らしでもあるのだろう。


 正直、体調が悪いわけでもないのに、窮屈な思いをするのは嫌なのだけど、こればかりは心葉流の跡継ぎに転生したのだからと諦めるしかない。


 夏目花凛の人生では持病のせいで毎日薬を飲み、心葉瑠璃の人生では妖祓師として力を磨くため毎日薬を飲む。


 転生して何もかもが変わってしまったけど、薬漬けの生活だけは今も変わらないみたいだ。

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