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第23話 責任感!

 いつの間にか、隣に護衛が戻ってきていた。


「お嬢さま、あれでよかったんですかい?」

「まあ、どうなっても山桜さんが選択した結果ってことでしょ」

「うーん」


 護衛は納得いかなさげに眉をひそめた。


「理屈はわかりやすが、あの化け狐がホントに人を襲って犠牲が出たら、あの女の子じゃあ責任はとれやせんぜ」

「責任って……そもそも、そんな状況になって誰が責任とれるのよ」

「それは……うーん、なかなかパッと出てきやせんね」


 別に答えを求めた問いじゃないから、いいんだけどね。


 だいたい、私は責任って言葉が好きじゃない。

 責任を取れないなら、それはしてはいけないの?

 責任が取れるなら、それはしていいの?

 そもそも、自分以外のことの責任なんてどうやってるの?


 ……はぁ、もう、しかたないなあ。


 私は足を止めた。


「お嬢さま?」

「私はしばらくここで待ってるから、行って来たら? 安心しなさい、私はほんとうに口が固いから、誰にも言わないわよ」

「いや、行ってきたらって、どこにですかい?」


 護衛が首をかしげた。


「あんたが妖狐を殺してくるのを待ってあげるって言ってんの。……みなまで言わせないでよ」

「んなっ!」


 護衛があんぐりと口をあけた。

 それを見て私の顔色も曇る。

 どうにも話の雲行きが怪しい。


 そう思っていると、護衛の顔から表情がスッと消えた。


「お嬢さま、それは……ご命令と受け取ってよろしいですか」

「いや、違うけど」


 間髪入れずの否定。


「てっきり、あんたがそうしたいのかと思って」

「あっしが!? いやいやいやいや、どうしてあっしがそんなことしたがるんですか!」

「いや、山桜さんと妖狐をそのままにするのに納得いってないみたいだったから。大事になる前に、こっそり処分したいのかなあと」

「処分って、そんな血も涙もない! お嬢さまは鬼か何かすか!」


 なんだと!

 こいつ、肝心な時はこっそり隠れていやがったくせに!


「あんた、好き放題いってるけどね! なによ! そんくらいのこと自分でする覚悟もなくて、よっくもまあ偉そうに『責任がー』なんて文句言えたわね!」

「うっ、それは」


 護衛が言葉に詰まった。

 その顔を見て留飲が下がったので、私もそれ以上の追及はやめた。


 空に浮かぶ赤い太陽もだいぶ低く、沈み始めるまでもう少しだ。


「……あの、お嬢さま。やっぱり、あの妖狐、あっしが処分してきましょうか?」

「はい?」


 言っていることがさっきと違くない?


「えっと、嫌なんじゃなかったの」

「嫌ですけど、お嬢さまの言うことにも一理あると思いまして」


 な、流されやすいな、こいつ。


「嫌なんでしょ? じゃあ、やめときなさいよ。別に私だってそうしてほしいわけじゃないし」


 私は右手をぶんぶん横に振った。

 正しさとか、責任とか、そういうのはそういうのが好きな奴にでも任せておけばいいのだ。


「そんなことより、今するべきなのは家に帰ることよ」





 無事、帰宅した私が自室の戸を開くと、そこには黒い犬がいた。

 女の子の和室と黒い犬。似合わない。


「小娘、随分と帰りが遅かったではないか。待ちくたびれたぞ」


 私は光よりも速く、後ろ手で戸をシュタンと閉めた。


「なんであんたが私の部屋にいるのよ」

「いずれまた来ると言ったであろう」


 たしかに言っていたけどさ。

 場所も時間も予想外すぎるのよ!


「考える時間は充分与えた(はず)だ。そろそろ、約定を果たして貰うぞ」


 黒雷の赤い目が、呆然とする私をジッと見つめていた。

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