家庭教師の助言②
私は9歳の子供の頃に習ったことしか知らない。
それも少しの読み書きと計算だけ。
ソレだけじゃ足りない。もっと沢山本を読むと、いろんな事ができるようになるって、先日セドリック様が言ってくれた。
私はまだ14歳で学ぶほど多くのことができるようになる年頃だと皆が教えてくれる。
セドリック様も、お父様も、お母様も、家庭教師の先生も、屋敷の皆も私を応援してくれている。
私は頑張るんだって、自習も増やして図書課で過ごす時間もずっと増えた。
そして、お姉様とお会いすることも増えた。
あんなに必死だったのに、部屋をノックするより、難しい本のたくさんあるここに来る方が会えるんだって思うと、ちょっと拍子抜けしてしまった。
よかったら、今後のために読んだほうがいい本を教えてもらえるよう頼んでみようと思って、お姉様がいた場所を見たけど、そこには一冊の分厚い手書きの本?のようなものがあった。
なんだろうと、じっとそれを見る。
「土壌改良⋯肥料。聖女の、力の活用⋯⋯ない⋯?
なにこれ?」
こんなところにあるにしては全く不釣り合いな本を手に取りめくってみた。色々と走り書きのようで、落ち着いて書いている場所もある。専門的な言葉が多くてわかりにくいけど、同じぐらい面白かった。
「波紋状⋯に、広がる魔力⋯⋯波紋?波紋ってあれ?石投げたときにふわーってなるやつ?」
「何をしているの!返しなさい!!」
読んでいるのに大声で叫ぶような女性の声が聞こえたと思うと、本が奪われて眼の前にお姉様がいた。お姉様の足元には本が散らばっている。
肩で荒い息をしながら、私を見ている。
「少し目を話すと私物まで勝手に触るのね。うんざりだわ。触らないでコレは大事なものなのよ」
「ま、待ってください。もう少し、もう少しだけ読ませてくださ⋯」
パシリと伸ばした手をはたき落とされる。
「いやらしいわね。やめてちょうだい。コレは私のものよ」
「お姉様。でも私はもっと色々と知りたくて、伯爵家の一員としてふさわしくなりたくて」
「何度も言わせないで。貴方は私の妹ではないし、妹にはなれないのよ。
そこまで言うならそちらの貴族の血統や相続に関する本でも読めばいいわ。読めば、私の言いたいことも分かるはずよ」
「お姉様!!」
「失礼するわ」
そう言って、こちらを見ることなく、ノートは奪われて、お姉様は背を向けて去っていった。
わからないことが多いけど、土壌改良とか、肥料、聖女の力は波紋状に広がる。といった謎の多い言葉は、私の心を鷲掴みにしていた。
夜になり、ゴロゴロとベッドで転がっても、どうしてもあの本が気になった。お姉様はあの本を自分のだと主張したけど、伯爵家の図書館にあるなら、伯爵家のものよね。
ということは、少しぐらいかしてもらっても、読ましてもらってもいいよね?
「ああーあの剣幕だと、たぶん無理だろうなー。でも読みたいなー。少しでいいからかしてもらえないかな?
よし! お父様とお母様にも相談してみよ」
いつまでもグズグズと悩むのは好きじゃない。
そうだ、それに明日は教会行事があるからお姉様は出かける日だし、その日にはセドリック様が来られる。
セドリック様にも、今日のことを聞いてみよう。
そう思うと、俄然やる気がでてきた。
先生も、沢山学ばないといけないと言っていた。
いつかこの家から出ていって王妃になるお姉様。
王妃は直轄領がないって先生が言ってたし、なら、お姉様が成人する18歳までにあと2年しかない。その間にしっかり読ませてもらわないと自分のだと言って持っていってしまうともう二度とあの本が読めなくなるかもしれない。
私は伯爵家のためにも、あの本をどうしてももっとしっかり読み込ませてほしかった。




