家庭教師の助言①
「ねぇお姉様はそんなに優秀なの?」
勉強を初めてもう2年目の付き合いとなり気心の知れた家庭教師が来て勉強中に、ふと気になったことを先生に聞いてみた。
先生は急に質問した私にびっくりした様子だったけど、首を傾げてからこちらを見た。
もしや、すっご優秀というのは侍女の噂だけなのかと、少しだけ期待する。お姉様も苦労してたら良いのにって、あまりの覚えることの多さに、辛い私の心に小さな悪い気持ちが芽生える。
「ええ。とても優秀でしたよ。
あの、ローゼリンデ様唯一の嫡女様です。
ローゼリンデ様には大きく劣ると言われておりますが、その才能はちゃんと受け継いでおられますよ。」
ガクリと肩を落とす。そうか、お姉様は優秀なのね。だから、あんな分厚い難しそうな本をいつも図書館で読んでいたのね。一度お姉様が読んだことのある本を読めば少しは距離が縮まるかと思って、司書のおじいさんに聞いたら、びっしりと文字が書かれて、私が読める文字がほぼない本を手渡された。
あまりにびっくりしておじいさんを見たけどおじいさんも「わしも全く理解ができんのだよ。聖女様は本当にできが良いようで」と言っていた。
ますます気持ちが落ち込んで、どうやらしばらく復活できそうもない。
「そうかー。じゃぁ私ではお役に立てないわね。」
「落ち込まないでください。こちらの伯爵家では、ローゼリンデ様はその優秀さから、あまり女性の社交場への出入りをされておりませんでした。
聖女様は聖女なので、教会行事は参加されますが、社交はほぼされません。
そのために、今は奥様が奮闘していらっしゃいますが、なかなかのようです。
誰かが女性の社交を担うことができれば、伯爵家は凄く助かると思います。
だから、アン様は女性の社交場でその力を発揮していただければ、伯爵家ももっと良くなりますよ」
「そうなの?」
「はい、そうですよ。
それに伯爵家には、僭越ながら聖女様以外にお子に恵まれませんでした。あの頃は王家にはセドリック殿下しかおられなかったので、自然と聖女様とセドリック様の婚約が決まりましたが、そのために伯爵家の後継者問題は、空白のままでした。
ローゼリンデ様は優秀でありながら、そこはあまり憂慮しておられなかった様子ですね。
ですので、アン様が沢山勉学に勤しまれましたら、アン様のご主人が伯爵家を相続する可能性があります。
ですので、アン様が一生懸命勉学に励むことは、とても大事なのことなのです」
ガバっと顔を上げて、先生を見た。バカにしているとか、嘘ついている様子はない。穏やかに私を見ている。
そうか、私は、この家の娘だ。
いつかお姉様はセドリック様と結婚して、この家から離れて王妃になる。その時に後継者がいない時には、私が婿を取ってこの家をまもる必要があるんだ。
なんだか落ち込んでいる暇がないことに気づいて、もう目からウロコがポロポロこぼれるような気持ちになった。
「元気になりましたか?
では続きを頑張りましょうね」
「はい!頑張ります!」
メラメラとやる気が湧き上がってきた。私は落ち込んでる場合じゃない。お母様やお父様のためだけじゃない。お姉様のためだけでもない。この伯爵家の皆や、領民は・・・ほとんどあったことがないからわからないけど、領民のために頑張って勉強して、そして、皆をお腹いっぱいで悲しむことがないようにしてあげたい。
自分たちみたいな悲しい事が起こっても、毎日ご飯が食べれなくて、泣いて過ごすことがないように私が頑張ってみせるんだ。
そのためにはまず難しいお姉様が読んでいたような本を読まないといけない。私はもっとたくさんのことを知りたくて、先生の言葉に素直に従って、更にお父様とお母様にもお願いして、勉強の時間を3倍に増やしてもらった。




