新しい仲間②
「あら、決まっていますでしょう。ルビトール様から伺ったんですの。グランド伯爵家のご令嬢が、聖女様に頼らない国造りに乗り出していると」
「え、それは……」
「正直に申し上げますとね、最初は眉唾だと思っておりましたのよ。伯爵家の平民出の継子が、王子様と手を取り合って夢物語を、なんて。よくある噂話の類だと」
はっきりと言われて、少し胸がちくりとする。でも、それも仕方のないことだと思う。誰だって、聞いただけでは信じられない話だ。私だって夢の中にいる気持ちがする。腕の中のローゼリンデ様のノートだけが私にこれが現実だと教えてくれている。
「そうだね。君の言うとおりだよガリーナ嬢、ただし……。」
セドリック様がすっと一歩前に出た。そして1枚の書状見せる。そこには国王陛下の公印が押されていた。
「先ほど、国王陛下から正式に、僕とアンでこの計画を進めるようにとの勅命をいただいた。ローゼリンデ様の手記も、僕らが引き継ぐことを認められている」
その一言に、部屋の空気がぴりっと変わったのが分かった。ガリーナ様の扇を持つ手が、一瞬止まる。
「――勅命、ですって?」
「まあ! それは本当ですか殿下!」
パタリナ様が思わずといった様子で声を上げ、ガリーナ様に肘で小突かれて慌てて口を押さえた。ソルディオさんも、へえ、と目を丸くしてこちらを見ている。
「本当だとも。ユリウスの協力も取り付けている」
「ユリウス様が……? あの、社交界を追放されたと噂の……」
ガリーナ様の声が、わずかに上ずった。先ほどまでの余裕のある笑みが、少しだけ張り付いたものに変わっている。
「まあ、王家のお墨付きがあるということでしたら……お話は、また変わってまいりますわね」
パチンと扇を閉じ、ガリーナ様が探るような目でこちらを見た。
「わたくし、これでもモーリッツ家の人脈には自信がございますの。
社交界での小さな噂ごとから、貴族の間での勢力図、必要な人材のご紹介など――人の縁をつなぐというのでしたら、いくらでもお力になれましてよ」
「わ、私の力になってくださるんですか?」
思わず声が弾んでしまう。国王陛下からのお言葉をいただいた興奮も冷めやらぬうちに、こんなに頼もしい方々が集まってくれるなんて。
「ふふ、そういうことになりますわね。それに――」
ガリーナ様が、ちらりとパタリナ様に視線を送る。パタリナ様も、目配せをするようにガリーナ様を見て頷いた。
「うちには、小さいながら新聞を刷っている知り合いがおりますの。使い道は、追々考えるといたしましょう。新聞は本当に、いい仕事をしましてよ」




