新しい仲間①
王宮からの帰り道、馬車に揺られながらぼんやりと窓の外を眺めていた。セドリック様がわざわざ伯爵家まで送ってくださって、玄関先で別れの挨拶をしようとしたところで、屋敷の扉が勢いよく開いた。
「お、お嬢様! お帰りなさいませ……!」
いつも冷静な執事が、珍しく額に汗を浮かべてこちらに駆け寄ってくる。何かあったのかと身構えていると、声を潜めて耳打ちしてきた。
「実は、先ほどからお客様がお見えになっておりまして。ルビトール様が、ご令嬢とご令息を連れて」
「え? 今日はそんなご予定、聞いてないですけど」
王宮に呼ばれたことといい、今日はいったい何なのだろう。目を丸くしていると、セドリック様が興味深そうに顔を覗き込んできた。
「ルビトールが? 僕も聞いてないな。せっかくだから僕も同席していいかな」
「は、はい。もちろんです」
疲れた体を叱咤して、なんとか身なりを整えてから客間に向かう。扉を開けると、そこには見覚えのある美しい銀髪のルビトール様と、初めて見る三人の姿があった。
「アンさん、突然の訪問失礼します。セドリック殿下もご一緒でしたか、ちょうど良かった」
悪びれる様子もなく、ルビトール様が涼やかに微笑む。もう慣れてしまった、この人はいつも人の話を聞かない。でも動きは早くて優秀だから責められない。というか驚かされてばかりだ。
「こちら、モーリッツ伯爵家のガリーナ嬢。社交界に大変顔が広い方でしてね。彼女が居れば、実験農地のこととか、かなり協力な力になってくれるはずだ」
「初めまして、ガリーナ=バーズ=モーリッツですわ。よろしくお願いいたしますわね」
扇を優雅に揺らしながら、値踏みするような視線をこちらに向けてくる令嬢が一礼した。綺麗な人だけど、なんだかその目の奥が笑っていない気がして、私は少しだけ緊張する。
「こちらは、パタリナ嬢。ガリーナ嬢のもとで色々と取り仕切ってくれています。すごく気が利いてて文字もきれいで計算も早い、まさしく万能の働き手だよ」
「パタリナ=パト=パタトです。よろしくお願いいたします」
ガリーナ様の後ろに控えていた、地味だけど利発そうな令嬢がぺこりと頭を下げた。手にはすでに紙とペンを持っていて、なんだかとても仕事ができそうな雰囲気だ。
「最後に、ソルディオ君。子爵家の五男だが、成人前から店を立ち上げる事ができていた天才だ。商人として実家から独立した新進気鋭の若いリーダーだよ。とても頑張っているから、麦の流通や、肥料、炉の作成に必要な素材から人員まで彼に任せると、すぐに揃えてくれる。しかも安くて高品質で仕事が早いと有名でもある
僕とも色々取引してるけど、すごい人だよ」
「ソルディオです、よろしく! いやあ噂は色々耳にしてましたよ、伯爵家の令嬢がすごいことを企んでるって。参加できて光栄です」
人懐っこい笑顔で軽く手を挙げる青年に、思わず私も少し肩の力が抜けた。
「あ、あの、それで……今日は、どういったご用件で?」
恐る恐る尋ねると、ガリーナ様が扇の陰でくすりと笑った。




