アン王宮へ③
「ひゃい!!」
裏返った声に恥ずかしくなり真っ赤になっていると、セドリック様が笑い出した。なんて失礼なことを思って、じっとセドリック様を見ていると、セドリック様が私を見た。
「凄い緊張してるよね。それもわかるけど、まずはローゼリンデ様の手記を見せてもらえないかな?
勿論僕が保証する、ちゃんとローゼリンデ様の手記は返すから、少し見せてもらえるかな?」
「で、でもあれは本当に大切なもので!」
「アンといったか。事情が事情だ。はっきりと言わせてもらう。
ローゼリンデのことだ。
彼女は昔から、聖女のあり方に疑問を抱き聖女に頼らない農地開発を提案していた。そんな事は不可能と誰もが呆れる中、彼女はある加護なしの土地で、麦の収穫を実現させてみせた。
しかし、彼女の奇跡は……その後、実現できなかった。
彼女の全てはユリウスが引き継いだと言うが、その技術を伝え実現することはできていない。急げば土地そのものを殺すと言われた。
それでもやれと命じたその土地は、死の土地となった。
あのユリウスの顔が……今でも忘れられん」
ぐっと堪えるように、国王様が目を閉じた。
なにしたんだろうユリウスさん。
国王陛下の苦悩の表情から、あの人のあの軽薄そうな笑顔でのやらかしにドギマギしつつ、ここで私はハッとした。
慌てて、服に隠したローゼリンデ様の手記を取り出してじっと見つめた。
もしかしてこれなのか?
これが足りなかったから、だから、ユリウスさんはできなかったのか!!
「ローゼリンデ様の……手記」
国王陛下と王妃殿下が私の手元を見た。落ち着かなくてずっと手元においた手記に注目が集まる。
「まさかそれなのか?セドリックの言っていた、ローゼリンデの」
皆の注目が集まる中、国王陛下が手を伸ばしてきたので躊躇いがちにセドリック様を見ると、決心したような表情で私を見るから、渋々国王陛下に手記を手渡す。
1枚めくって、そこにある文字に釘付けになり、その後ゆっくりとページを何枚かめくったあと、目を閉じて目頭を押さえ、そして静かにページを閉じた。
そして私に手記を渡してきたので両手で受け取り「おかえり」と言う気持ちで抱きしめた。
「陛下……どうでしたか?」
「この癖字はローゼリンデの文字だ。あまり見ない見慣れない文字や、魔術陣、言葉が多く一貫性はないようだが、慣れない文字だが注釈があったので読めたが……。
まさか今になって彼女の文字を読む日が来るとは」
「父上では…………」
「いや、今回はお前の意見を聞くことはできない。その手記、渡してもらいたい。お前たちの意思で。
それは国の根幹に関わる話だ。お前たちだけの努力ではどうにもできないだろう。
国内の専門家を集め、急ぎ、対応をしてゆかねばならない」
「話が違うではないですか父上!!
これは、アンのものです。彼女が!ローゼリンデ様の意思を継いだのです!
それを取り上げるなど」




