アン王宮へ②
アンが家庭教師と勉強していると、慌てた様子で侍女が飛び込んできた。礼儀も何もないその姿に驚きで目を剥いていると、一礼してからまっすぐにこちらを見る。
「大変でございます! 王宮からアン様をお呼び出しでございます。大至急とのことで、お支度をお願いいたします。」
「へ?なんで……、私?」
驚いている間に、グイグイ手を引かれ、家庭教師の先生もハッとした様子を見せると急ぎ片付けを始めているから、今日はここまでということなんだろう。
促されるまますぐに部屋に戻るとお出かけ用に服に素早く着替えて今までにない速さで、化粧をして飾り付けられるとすぐさま玄関に向かう。
玄関には、伯爵家では使ったことがないような立派で豪華な馬車があって、良く分からないけど立派そうな出で立ちのおじさんに促されるまま馬車に乗り込む。
びっくりしたまま、呆然としていたけど、こんなときこそ冷静にならなくちゃと自分に言い聞かせて、服の隠しポケットに入れているローゼリンデ様の手記に服の上から触れる。
大丈夫、良く分からないけど、王宮に行けばセドリック様もいらっしゃるし、ローゼリンデ様に恥ずかしくないようにしなくちゃ。胸のドキドキで苦しくて息が止まりそうだけどぐっと耐えていると揺れていた馬車が止まりようやく目的の場所についたらしい。
扉が開かれ名を呼ばれたのでおっかなびっくりで外に出ると、伯爵家なんて比較にならないぐらいの本物のお城がそこにあった。
「アン? 大丈夫か?」
はっと気がつくと、目の前にセドリック様がいて私の顔を覗き込んでいた。
「あわわわわ!!
せ、セドリック様どうしてここに!!」
「王宮に王子がいるのは普通だよね?
急ぎの用事で事情の説明なく呼び出したから、僕が迎えに来たんだよ。じゃあ、急ごうか、国王陛下と王妃殿下がお待ちだよ。」
腕を差し出されたので淑女らしく……はかなり足りないだろうけど、頑張って家庭教師の行ってたことを思い出しながら歩く。
息が止まるような緊張感の中を歩き続けると、部屋にたどり着いて、招かれて入ったそこには、ものすごい威厳のある方々がいた。足は震えるし、汗が止まらない中なんとか歩み寄り淑女の礼をとる。
「お招き、ありがとぅございますッ。
グランド伯爵家、フレシュ=タローク=グランド伯爵。2番目の娘…アンでございます。」
「ああ、君がか」
国王陛下の視線が、ほんの一瞬だけ王妃殿下へ流れた。王妃殿下の扇を持つ指先も、止まった気がする。
……あれ? 私、何か間違えた?
不安になって隣を見たけれど、セドリック様はいつもの穏やかな顔のままだ。きっと緊張のせいで気のせいだったんだろう。
「こちらに来なさい。まずはこちらに座ってもらえるかしら、セドリック」
「はい、母上」
カチコチのまま、ひかれた椅子に座る。
なにがなんだか分からないまま、黙っていると、目配せしたあと、王妃様がほほ笑みを浮かべた。優しい顔が凄く怖い。
「セドリックに聞いたのだけど……、ローゼリンデの手記を貴方が継いだという話は本当なのかしら?」




