天才魔導士⑤
「やめないか!ユリウス様になんと無礼なことを!!」
「僕は嫉妬する必要がないんだよ。そして答えを与えない」
「そこが苛つくんだよ!さっさと教えろよ!この手帳になに書いてるんだよ!」
「分からないことは、自らの手で調べることに意味と価値がある。
僕は道具、必要な資料は望めば渡す。
根拠のない答えを僕の前に持ってくるな。」
「その意味が分からんって話だろ!」
「落ち着けカルネオ!」
「済まないが、なにが言いたいのか分からないんだユリウス。少しでいい、方向だけでも示してくれないか」
しばらく黙ってセドリック様を見ていたユリウスさんが、小さく息を吐いた。
「一つだけ言っておく。ローゼリンデ様は、無駄なことを絶対にしない方だった。
……外国語の辞書が、なぜこの手記に必要とされているのか考えることだな」
そう言って、それ以上は何も語らなかった。そして隣の司書に何か伝えると、すぐに司書さんが数冊の書物を抱えて戻ってきた。
「ユリウス様、お持ちした資料です」
「渡してあげるといい。これらを持っていけ。僕らに必要がないものだ。勿論有料だが、それを持って今後こちらに集まるな」
「ではどこに集まれば?」
「サロンを借りるなり、喫茶を借りるなりしたらどうだい?」
ユリウスさんはそう言って踵を返すと、背中を見せて去っていこうとしていた。だから。
「ありがとうございました!!私、頑張ります」
そう大きな声で呼びかけた。
でもユリウスさんは二度と振り向くことはなかったけど、きっと伝わっているって私は確信していた。




