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聖女はもう祈らない──追い込んだ者、去った者  作者: 瀬戸 際
私たちが創る未来!〜手記に託された奇跡〜.
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天才魔導士④

「……書籍の資料代などは、セドリック殿下が負担頂ける約束だ。傷んだ書籍はセドリック殿下に譲渡すれば良い。


失礼」


そう言って机の外国語辞典を取り上げる。そしてペラペラとめくってから、司書に手渡す。同じように広げている書籍を確認しては司書に渡したり、お父様に渡したりを繰り返す。


「代金の請求を行ってくれ、買い足す必要性はない。

ただし、念のためにイリスティア様に必要性の確認を行っておけ。他に気になる書籍があれば、君が確認した後にセドリック様に請求書を送れば良い。

それで、ここは集会場ではない。

やめてほしいとグランド伯爵家として伝えたはずだ」


「密会ではありません。ただ、こちらほど資料がある場所がないので、できればこちらで話し合いをさせてほしかったのです。

ユリウス、昔の縁もある。どうかわかってくれないか?」


「分からないね。未婚の男女が集まること、その一人が王子であること、更に貴重な伯爵家の資材に傷をつけており、再三の司書の忠告を無視して騒ぎ立てること、これらは問題がある。

グランド伯爵家として判断した」


ニッコリとユリウスさんがこちらを見て笑いかける。ルビトール様の説得に応じる気はないようだったけど、それは困る。ここしか私は資料があるところを知らない。出ていってどこに行けと言うんだろう?


「あの、言いたいこともわかりますが、資料はこちらから持ち出せないのでしょう?ならば少しぐらい時間をいただけませんか?

そのローゼリンデ様の書籍の解読をしたいので、その……」


マレクさんがボソボソと囁くように沈黙を破った。

すごい勇気だなって思うけど、大事な事だった。私はこの家の娘として、ローゼリンデ様の手記を持つものとして私も声を上げた。


「この人が言うことも最もなんです!

この手記のここに、魔法陣があります。この解析をして、なぜこれが必要で、どうしてこれをここに書かれているかを私たちは知らないと、前に進めないんです」


「それは炉で使う魔法陣だ。超高熱で炉内に熱を循環させて一定の温度を維持する、熱を炉内で反射させる。反射炉という。それがどうかした?」


「え、へ……な、なんで一目でわかるんですか?」


びっくりして全員でユリウスさんを見る。ユリウスさんが私の開けている場所を見て、トントンと指で叩く。


「これがなにかわかっただろう、お引き取り頂けるかな?

一般に広く流通している魔法陣程度で驚いているようでは、まだ何も見えていないということも分かる。


……その手記だいぶん汚れてるけど、君、手記に落書きするクセやめたほうが良いよ」


そう言われてかっとなる。頬が熱くなるのが分かった。


「落書きじゃないです!!必要なことを書き写してるんです!

それに、そこまで分かるなら教えてください!中に何を書いているのか教えてもらったら、ローゼリンデ様の言いたいことがもっと早く分かると思うんです!」


「教える気はない」


即答だった。マレクさんが屈辱を感じているのが伝わってくる。


「っていうか、意地悪だよな。さっきから何なのユリウスさん。

集まりを密会とかいうし、来るなって言うし、資料見ると怒るって心狭いだろ?

何よりアンタ嫉妬してるのか?

大事なローゼリンデ様の手記の発見をアンに取られたから嫌がらせしてるとしか思えないんだけど?」


カルネオさんがじっと腕を組んだまま睨むようにユリウスさんを見ているが、ユリウスさんの表情は変わらない。穏やかに微笑んだままだ。


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