天才魔導士③
「ユリウス?知りませんが誰ですか?」
「いや、セドリックどうする?」
セドリック様をルビトール様が見ている。二人とも無言だったが、決心したようにセドリック様が頷くと、ルビトール様も頷いた。
「ああ、ローゼリンデ様の唯一の弟子だよ。彼女の全てを引き継いだ天才と言われている。ただ、数年前に色々と起こった問題にあまりに深く関わっている疑惑があって、それが原因で社交界を追放された男だ。
ローゼリンデ様への敬意が凄く高いから、余り滅多なことを言うと凄く恐ろしいことになる可能性があるから気をつけるように」
「はぁ」
納得したのかしてないのか分からない雰囲気で首を傾げているマレクさんだが、私もあまり良くわかってないのでなにも言えないでいると、カルネオさんが驚いたように声を上げた。
「え!!あの噂の男がこの集まりにいるのか!!」
「知ってるんですか?」
マレクさんと私が聞くと、カルネオさんが腕を組んで唸り声を上げる。ちらっとセドリック様を見た後盛大に溜息をついた。
「結構有名人だし、何なら3年前ぐらいの新聞見たら良い。凄い連続で名前が出てくるから。色々騒ぎ起こしたけど、一番ヤバかったのはローゼリンデ様の愛人と攻撃してきた子爵が、聖女のことまで口汚く罵った時に決闘した話とか調べろよ。本当ビビるぜ」
「あれが決定打になって社交界追放されたんだよな?」
「ああ、あの事件だ。子爵は重症だが、致命傷にはならなかった。本来ならもっと大事件となるはずだけど、格上の伯爵夫人と聖女の名誉のための決闘と言われると、誰もなにも言えないな」
そう言って3人がうつむいた。
沈黙が落ちる。
そこへ、静かな声が響いた。
「ここは集会場ではないから、大騒ぎされるのは困る。
そして、未婚の男女の密会場所にされるのはもっと困るのだが、君たちは理解しているのかな?」
「そうだ!!何度言えば分かるのだ!!
ユリウス様にご迷惑だろう!!」
びっくりして顔を上げると、ユリウスさんとお父様が並んで立っている。お父様は顔が真っ赤になったり真っ青になったりと大忙しの表情だ。汗を多量に吹き出して必死に拭いてる姿は少し可哀想だけど、なにをそこまで緊張しているのか分からなくてびっくりする。
そして二人の背後に、司書さんが難しい表情で立っていた。
「密会ってそんなつもり無いです!!
言いがかりをやめて下さい!」
「本を傷めないでいただきたいと先日申し上げましたが、効果がないようです。ユリウス様、あちらの蔵書まで痛めてしまわれていますがいかが処理すれば宜しいでしょうか?」
「ほ、本を痛めるな!それはローゼリンデ夫人の愛読書だぞ!ふざけているのか!!」
ユリウスさんがじっと私の手元の参考書類を見ている。慌てて忘れていた手袋をつけるけどそうではないようだ。その視線には手記があった。思わずギュッと抱きしめる。




