天才魔導士②
「それは大きな誤解です! 魔法陣というのは、色々なことができるんです。人間の可能性を広げるという感じですね。
風の流れを調整したり、風の強さを加減したり、魔力の還元率を制御したりする、つまり――」
「いやそりゃ知ってるよ。魔法陣を使って魔力使えば色々できるのは分かる。でもなー、俺にはそんな凄いことできる仕掛けが分からんって話。お前これ見てなにが分かる?」
一度息を整えて、マレクさんは得意げに続けた言葉をカルネオさんがぶった切る。そして、私が必死に解析しようと頑張っているローゼリンデ様の手記を持ち上げて見せる。
そんなに雑に扱ってほしくない気持ちと、私の書き込みも見られた恥ずかしさで顔が赤くなる。
そんな私にカルネオさんはちっとも気づいていない様子だ。
カルネオさんだし仕方ないよなー。と思ってちらりと見ると、先ほどまで饒舌に語っていたマレクさんが絶句していた。
震えるように指先を伸ばすから、慌ててカルネオさんの手からひったくるように手記を奪い返す。
「駄目です!触らないで下さい。大事なローゼリンデ様の手記なんです!」
ハッとしたようにマレクさんが、私を見た。
「すみません。あまりに完成度の高い魔法陣なので驚いてしまって。ローゼリンデ様はこの国の100年に一度の天才という噂も聞いてましたし、彼女の魔術論文や土地開発における我が国の他国からの遅れについての論文を見ましたが、凄い進歩的な方だと思っていました。土地開発については賛否両論でしたが、まさかこんな魔法陣まで完成させてるだなんて、予想外です」
「そんなに凄いんですか?ユリウスさんも同じように真っ青になってましたけど、もう少しでこの手記を取られるのかと思うぐらい凄くびっくりしてました」
「え?!」
私達の会話に入ってきたのはルビトール様だった。驚いた表情で私を凝視している。なにがそんな驚く話なのか分からない。ローゼリンデ様のことなのだろうか?
「どうしたルビトール、なにをそんな顔して」
「驚いてた?あのユリウスが? その手記で?」
「ええそうですよ。真っ青になってこの手記を取ろうとしてました」
そう伝えると考え込むような表情に変わった。なにを考え込んでるのか分からないし、なにも言ってくれないので、マレクさんをもう一度見ると、マレクさんも意味不明そうな雰囲気に飲まれそうになりながら、手記を抱く私を見た。
「えっと、先ほどの魔法陣ですが、よくある魔法陣の一つです。ただし、凄い改良があるのがひと目で分かりました。
まず、火力制御です。何の目的か分からないですが、火力を制御することを目的にしていると思います。高温でなにかを焼き尽くすことを目的にしているようです。
第2に、風の流れを制御する可能性があります。こちらは自信があまり無いですけど。
なぜそう思ったのかと言うと、前に炭焼き工場の炭焼き窯を見た時に、高温を維持するための炉の設計の時に使う魔法陣に良く似ているような気がしたからです。詳しく見ないとわかりませんが、それを超高度に設計し直してなにかのために使おうとしていたと思います。
一般人にはただの模様に見えて、実際は緻密な計算式の集合体なんです。線の一本、角度の一度が違うだけで、効果が全く変わってしまう」
「へえ、そりゃすごいな」
感心したように頷くカルネオさんに、マレクさんはますます胸を張った。
「基礎さえ分かれば、誰でも書けるようになりますよ。僕なんて、まだ勉強中の身ですから」
「ならいいけど、あのユリウスの興味を引く設計というのが気になる。キミはユリウスを知ってるかい?」




