謝罪行脚と喫茶店⑧
ぴょこんと慌てて立ち上がり、頭を下げる。知らなかったとはいえ、楽しみを奪ったのだから謝らないといけない。誤解はすぐに解かないと男女間の色々に巻き込まれると大変だってお母さんも良く言ってた。
私は顔を上げると、慌てて手を振った。
「違うんです!カルネオさんは私のことに付き合ってくれてて、ようやく一息ついただけで、そこで、カルネオさんが良い喫茶店知ってるってすごく人気で婚約者さんが行きたがってるから行こうって言ってくれたんです」
女性は私を見て、ふと表情をこわばらせる。上から下まで見て、眉間にシワを寄せる。いつの間にか扇子を広げて口元を隠す。
「貴方どちらのご令嬢? お見かけしたことはないようですが。
私はフィアット子爵家のメイジーですわ」
「あ、私は。グランド伯爵家の2番目の娘のアンです。よろしくお願いします」
「ああもううっとおしい絡むなよ!」
もう一度頭を下げようとしたら、うるさそに頭をかきむしりながらカルネオさんが言い放つ。もうイライラしているんだなとわかりやすかった。この人本当に子供っぽくて単純だなーとか思いつつも、令嬢に顔を戻す。
「あの、よろしければご一緒にお茶をされますか?」
「結構よ」
「嫌だ。お前の泣き顔見ながらお茶なんてまずくて飲めない」
「もう、なに言ってるんですか!女性には優しくですよ!」
むっつりど黙ってしまったカルネオさんに苦笑いしてから向き直ろうとすると、女性は背を向けて去っていくところだった。彼女を追いかけるように2人の令嬢も席を立つ。
その光景を眺めて何だったのよ一体って思いながら席に腰掛けて、カルネオさんを見る。
「次、ちゃんと誘ってあげてくださいよ」
「なんでだよ!」
「お母さんが言ってたんです。恋人のいる男性とかと一緒に二人でいるところを見られると、奪ったとか邪魔したとか色々と女性に酷いこと影で言われて孤立するらしいです。
だから早めにその男性に誤解を解いてもらって、その女性の希望する場所とか、流行りの貴金属と花を送ってもらって機嫌取ってもらわないと、私がひどい目に合わされるかもしれないんです」
「え?女って、怖いな」
「怖いんです。だから私のためによろしくお願いします」
そう言って私はため息を付いて頭を下げた。
この人天然すぎるから、婚約者さん大変。
後日、カルネさんから婚約者さんがめっちゃ泣いて喜んでた。ありがとうなんて感謝してもらって、私も嬉しくてたまらなかった。
ただ、一緒にいたセドリック様だけが。
「僕のいないところでなにそれ?」
ってちょっとすねてたのに、私たちは大笑いだった。




