謝罪行脚と喫茶店⑦
「えー、よく見るとちょっと違いますよ?」
「そっか? 俺にはおなじに見える」
「それはカルネオさんが良く見てないんですよ。セドリック様にもちゃんと見てないって怒られてたじゃないですか。」
「そりゃそうだな。」
そう行って豪快にカルネオさんが笑った。
悪気ないその笑顔でつい私もつられて笑った瞬間だった。
「――カルネオ様」
静かで消え入りそうな声が、後ろから聞こえた。その声の主がカルネオさんからよく見えるのか、黙ってじっとそちらを見ている。その視線が気になって振り返ると、銀の髪を揺らした女性が立っていた。小柄できれいなドレスを着て震えている。
「どうしてこちらの女性の方と一緒におられるのですか?
こういう場所は好みでないので、行きたくないとおっしゃっておられたでしょう?」
女性が青ざめた。チラちと振り向いた私を見る。私と目が合うと一層つらそうに表情が歪んだ。
「また泣くのか?」
「それは、それは……悲しんではいけませんか?
私はあなたの婚約者なのに、行きたい店にもいけない。
しかし、他の女性は貴方が連れてきている。
この事実を悲しんではいけませんか?」
女性の声が低くなる。私を見る目に力が入る。それにはどろりとした妬みとか、怒りが混じっている。目に涙をためてきれいな表情をしているのに、目にはドロドロとした感情が渦巻いているのが見えたが、私にはどうもできなかった。
「いい加減にしてくれ!
この子は今日セドリック様のために動いていた。ずっと忙しくしててようやく一息ついたんだ!
俺はこのこの護衛を頼まれていただけで、護衛対象に一息つかせてやろうと思ったら、何だよお前!」
フーとため息を付いたあとのカルネオさんの表情が変わる。こめかみに青筋が浮いていた。イライラしているとその表情と気配でわかる。喫茶店はしんと静まり返っていた。
「私は、しらなくて」
「知らないって言ったら俺の邪魔していいのかよ!ふざけてんのお前?」
ブルブルと怯えて震える令嬢を見て気の毒でたまらなかった。急に怒られたり睨まれたりと私達も散々だったけど、勘違いしたこの子も傷ついているなら可哀想だ。それにカルネオさん怒るとちょっと怖い。
急いで机の手を両手で握りしめる。
「やめて下さいカルネオさん。行きたいって言ってた喫茶店に先に二人でいたからびっくりされたんですよ。そんなに怒っちゃ可哀想です。相手は女性ですよ。そんな怖い顔してどうするんですか」
「怖い顔してねぇよ!」
「十分怖いですよ!ほらほら、落ち着いて。
あの婚約者の方、すみませんでした」




