新しい出会い②
そういって半立ちのカルネさんを引きとめてセドリック様がある気だし司書さんに声を掛けた。二人でどこかに歩いてゆき、むっつりと眉を顰め腕を組んだカルネさんと二人で、黙って帰りを待つと、セドリック様が一人で本を一冊もって戻ってきた。腰かけて、分厚い一冊の本を差し出した。
ペラペラと本をめくっていく。
「これが聖女法。該当部分が…ああここだ。ここに、
聖女法(第一条)
「聖女の生命、心身、精神および社会的安寧は、国の存立と国民の福祉に不可欠な基盤である。
よって国民はその安寧を妨げる一切の行為を慎み、王家および諸機関は聖女の生活、意思、感情、名誉を最大限に尊重し、これを保護する責務を負う。」
間違いなく書いてるんだよ」
該当場所を指さすと、難しい言葉で難しく書いてるけど、確かにそういうことらしい。
「なにそれ? 聖女はわがまま言っても許されるしそれを法律が守ってるってことかよ」
「うーん、ちょっと違うところはあるけどだいたいそうかな? 聖女は国の宝だからね。聖女がいるからこの国の豊作が約束されてて、だから豊かに暮らせる。そう思うと、豊かさを守ってくれる聖女の事は誰よりも守るべきだよね」
眉をハの字にして困ったようにセドリック様が、憤ってる様子のカルネオさんに伝える。
納得できない文字に、ぐっと涙をこらえて考えた。おかしい。聖女が特別扱いされるから、余計に我儘がひどくなると思う。でも聖女がいるからこの国でお腹いっぱいみんなが食べれるんだということも理解している。でも、それでも聖女が嫌だ不快だと言えば、それで私達平民の生活がひっくり返されるなんて絶対におかしい。
「良く分からんけど、聖女の力は本物ってことなのか?祈るだけで何で麦できるんだ?」
「そこからなのか……。聖女の力は本物だ。今の聖女が生まれて見つかるまでの間。3年ほどあった。元々祈りは7歳からとされているから、時期によってはそれぐらいの期間が不在になることは多い。
聖女が7歳から祈りの儀式を始めるまで、聖女不在で儀式のできない間は不作が続くので、魔術師団が必死で豊作の祈願を行い土地に力を与えているんだ。
それでも聖女がいるかどうかで作物の出来は全く違う。だから、聖女の力は本物だ。間違いない」
二人の話を聞いてて思った。聖女がいなくても、魔術師団が頑張ったらできる?
それはどういうことなんだろう?
不思議で、セドリック様をじっと見ていると、こちらを見て、何かを察したようにうなずいた。
「少しの期間なら。魔術師が100人くらい居れば聖女の代わりはできる。ただし精霊の加護がないから、収穫量は落ちる。
そして、精霊の加護は聖女だけじゃないんだ、実は。
最も精霊の加護の強い女性が聖女になる。精霊の加護がある魔術師は少しはいるんだよ。
国全土を豊作に導くことはできないんだけどね」
ビックリした。聖女がいなくても大丈夫な方法があるっていうことに。
つまり、数年間頑張ってもらったら、その間に土壌開発ができたとするのなら、私達は…。
「でも、その前にやっぱり私…解雇された人が気になって。」
「だよな!本当むかつくわ。ガツンと言えないんだったらにらんでやるよ!」
「辞めろ…僕が何とかする。紹介状があればいいんだろう?
僕なら何とかできると思うから、任せて」
そういってセドリック様が笑うから、私は手を伸ばして聖女法の本の上に乗ったままの手をぎゅっと握った。
祈るみたいに。
「お願いします!もう、だれも頼れなくて。お願いですセドリック様みんなを助けてあげて……。私、私の分一生懸命勉強しますから!!」
「うん、任せてくれ」
「健気だな。そういう風に泣くなら大歓迎だけど、俺の婚約者すぐ何でもないときに泣くんだよなー」
そういって茶化して笑ってるカルネオさんも困った表情で、冗談で気を紛らわせてくれてると思うと、泣いてばかりではいけないって思って私は涙を必死に止めた。




