家に帰った日②
「解雇です!どうして屋敷の人たちを解雇したんですか!
おかしいじゃないですか?皆一生懸命働いてくれました。
庭師のボブさんも、ゴンさんも仕事をちゃんとしてて、空いた時間で私の畑作りとか一緒に頑張ってくれたり、侍女の人も優しくて働き者でした。
厨房の人も、その、好き嫌いが多くて食が細いイリスティアお姉様のために凄く頑張ってて、なにがご不満なんですか!
なんでユリウスさんがそんなことできるんですか?
そんな権利あるんですか?!」
一息で言ったから、息が切れて肩で息をする。
怒りで涙が出て目が霞むけど、泣いている場合じゃなくて、一生懸命涙をこらえた。
「あるよ権利。解雇したのにはそれなりの理由がある。
庭師だが、強い毒性による禁止農薬が利用されていた。近くの虫の死骸からの推測だ。虫も食わないほどの農薬を使った野菜?
それを聖女様の食事に提供したとは、毒殺未遂だな。
厨房も同様。聖女の体重は著しく減っていた。診察では極度の栄養不足だった。流通不明の毒にまみれた野菜や雑草を提供し、聖女様の健康被害を出すとは恐るべき職務怠慢。
パンに雑草を混ぜて与えるとは言語道断。
医師は常に診断を行っているにも関わらず、聖女が歩けなくなるほど弱るまでなにも処置を行わなかった。職務怠慢。
侍女は家中で掃除不足、聖女の世話の不十分、聖女への暴言、中傷。仕事をしないものは必要ない。」
聖女聖女聖女聖女聖女!!
全部聖女が原因だという。お姉様?お姉様がそんなに大事なの?!
この屋敷のほぼ半分の人より?
「それはお姉様が、悪いのよ!!
我儘で食事を取らないことがあるというから皆で体に良いものを作ったり、考えたりとか…」
「過程と動機は関係ない。結果だ。結果が全てだ。
聖女への暗殺未遂として死罪でも良いのだが、解雇で許したんだよ。」
頭にカッと血が上り顔が真っ赤に染まったような気がした。
頭の真から燃え上がる、怒りでワケがわからなくなる。
この伯爵家の半分が、お姉様のために、お姉様のためだけに解雇されたというのか?
食事を取らないのは毎回で、お姉様の健康を考えたから庭にハーブを植えて、強く育てたくて自生させた。
お姉様に新鮮な野菜を食べてほしくて一緒にボブさんが野菜を作ってくれた。
農薬?それは普通に平民なら安くて良いものをたくさん使ってる!
侍女の皆もたまに休むけど、ちゃんと毎日一生懸命働いたのに、お姉様の悪口を言ったらくびなの?
「それはおかしいです!皆お姉様のことを考えて頑張ってくれたのに!!どうしてお姉様のために半分の人が減るんですか?
お姉様はここの人たの半分より偉いんですか?!」
「価値は、はかりきれない。
聖女の価値は言うまでもなく国家によってその健康と生命と平穏が約束されている。その祈りは国を安寧に導く豊穣の力を持つ。その聖女が無価値はあり得ない。
僕を止めたいか?
だがそれは不可能だ。」
「なんで私にできないんですか!!私だってお姉様の妹です!」
「権力も金もコネもない。だから、君にはできない」
「でも!」
「質問がないならでていってくれ。僕は忙しい」
「私を裏切るんですか!!協力してくれるって言ったじゃないですか!この、このローゼリンデ様のノートに誓って!」
いつも持っているノートを見せた。
これで心を変えてほしかった。でも彼は笑顔を崩さない。
「解雇と土壌改良に関連があるのか?」
そう言われて頭が冷えた。
なに、それ?
ユリウスさんは静かに笑っている。
お父様は相変わらず汗を拭いている。
「それは、関係あります。その、その……」
悔しくて唇を噛んだ。
関係性を話そうとしたけど、頭が真っ白になってなにも浮かばない。なにか言って納得してもらったら、解雇がなくなる。
解雇を、取り消してほしい。皆の笑顔が浮かんできて、なんとかしたい気持ちで一杯になるけど。
言葉が出てこなかった。
いつの間にか背後に回ってた執事さんに肩を叩かれた。
私は、彼が居ることも気づかないぐらい必死だったみたいだ。
振り向いてすがるように見たけど、彼は首を振った。
もう止められないって言われてるようで、それでも諦められなくてお父様を見たけど、ずっとうつむいて汗を拭いてた。
もう誰も頼れないって分かって、ノートを腕に抱きしめて、私はそっと部屋をあとにした。
お姉様が恐ろしいと思った。
わがままばかり言って食事を食べたくないと反抗した。
侍女に冷たくして、ひどいこと言ってたから嫌われて悪口言われてた。
野菜も、せっかく作ったし、平民は皆使ってる農薬で凄く良く育ったのに、皆美味しいって笑ってくれたから、少ない量しか野菜がなかったからお姉様だけに食べてもらうことにしたのに。
うまくいかないばかりか、私、私がみなの解雇の原因になった。
恐ろしくて、廊下にうずくまって、ないてしまった。
子供みたいに、私はずっと泣いてた。
私に優しくしてくれた人たちを全員、路頭に迷わせるお姉様が、私はこのときすごく悪いと思った。




